音楽のチカラ シリーズ、まだつづきます。
これまでわかっていること
今回は終末期の音楽療法についてです。
論文の紹介の前に、これまでわかっていることのまとめです。(論文から引用)
- QOLを改善し、よい死を支援できるかどうかは、身体的痛みと精神的痛みの両者を適切に対処できるかにかかっている。
- 音楽療法は身体的・感情的・スピリチュアルなニーズを対処するために、緩和ケア・終末ケアの場面で10年以上前からよく活用されるようになってきた。
- 緩和ケア領域での音楽療法のエビデンスは弱い。
こういった現状をふまえて、論文の網羅的検討であるシステマティックレビューが行われています。
システマティックレビュー(McConnell, 2016年) *1
研究の概要
緩和ケア患者に対して
1) 音楽療法+標準的ケアを行うと、標準ケア単独または標準ケア+他の治療の組み合わせに比べて効果的か、
2) いろいろな種類の音楽療法(即興、音楽鑑賞、詩作)のうちでどれが効果的か、
を検討したランダム化比較試験または準ランダム化比較試験のシステマティックレビュー+メタ分析。
主な結果
3研究(243人)の結果を統合。
緩和ケア患者に対して音楽療法を行うと、ボランティア訪問や標準的ケアのみに比べて、痛みが少なくなる(標準化平均差 -0.42, 95%信頼区間 -0.68, -0.17)。
終末期の痛みは少ない
採択された研究の質は高くないものの、この結果からは音楽療法によって緩和ケア患者の痛みを軽減する可能性が示唆されています。
しかし、終末期患者のQOLまで改善するかどうかについては、研究がありませんでした。今後の検討が必要である、と結んでいます。こういった領域についてまでも、研究が不足していることがわかります。
今後の研究に期待したいと思います。
痛みをどうとるか考えるとき、医療者はどうしても薬物療法に目が行きがちです。ここで音楽療法という選択肢をもつことは、決して不利益はなさそうです。
これからも注目していきたいと思います。
つづく
*1:McConnell T, Scott D, Porter S. Music therapy for end-of-life care: An updated systematic review. Palliat Med. 2016 Oct;30(9):877-83. doi: 10.1177/0269216316635387. PubMed PMID: 26944533.