地域医療日誌

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医薬品等の広告規制に違反する?

 NHK謝罪文からわかること - 地域医療日誌 睡眠薬で血糖値が下がる? - 地域医療日誌 のつづき記事です。

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  1. 睡眠薬(またはオレキシン受容体拮抗薬)を服用すると血糖値が下がる、という科学的根拠はあるのか?
  2. このような情報提供は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)における医薬品等の広告規制に違反するのではないか?

 

医薬品医療機器等法

 さて、今回は2.の広告規制について確認しておきたいと思います。

 医薬品医療機器等法は医薬品に関する情報提供の基本となる法律ですから、関わる人はここでしっかり押さえておきたいところです。

 厚生労働省のウェブサイトはこちらがわかりやすいでしょう。

医薬品等の広告規制について |厚生労働省

 

誇大広告等

 このなかで誇大広告等の部分を引用しておきます。 

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号) 抜粋

(誇大広告等)

第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

 

 明示的であると暗示的であるとを問わず、ということですから、暗示的なものもダメということです。

 医師が効果を保証したと誤解されるものもダメということです。

 

 どこからが誇大なのか、どこからが保証したと誤解されうるのか、この法律だけでは境界線がわかりにくくなっています。

 

解説PDFから

 ここを補うように、ひっそりと解説がついています *1

【趣旨】

 本条は、医薬品等に関する虚偽又は誇大な広告を禁止した規定です。

【解説】

1 本条は、「何人」に対しても適用されます。必ずしも医薬品等の製造販売業者、販売業者等には限定されません。(広告を行った新聞社、雑誌社等に対しても適用されます。

2 虚偽又は誇大であるかどうかの具体的判断は、個々の事例について行われますが、この判断、指導の基準として、「医薬品等適正広告基準」(昭和55年10月9日薬発第1339号厚生省薬務局長通知)があります。 これは、医薬品等による保健衛生上の危害を防止するため医薬品等の広告については、その内容が虚偽、誇大にならないようにするとともに、不適正な広告を排除し、一般消費者等が医薬品等に対し、誤った認識をもつことのないよう広告の適正化を図るためにつくられています。

3 「医師その他の者」とは、医師、歯科医師、薬剤師その他医薬品等の効能、効果又は性能に関し世人の認識に 相当の影響を与える者をいいます。化粧品については、これらの者のほか、美容師、理容師等も含まれます。

 

 この広告規制は「何人」に対しても適用されます。つまり、医薬品の販売業者ではなく、広告を行った新聞社、雑誌社等に対しても適用されます。

 もちろん、テレビ局に対しても、です。

 

医薬品等適正広告基準

 虚偽・誇大の判断基準は別に示されているようです。この「医薬品等適正広告基準」が判断・指導の基準ということですから、よく確認しておく必要があるでしょう。

医薬品等適正広告基準 東京都福祉保健局

 

 長文になりますが、重要な部分(第3)を引用しておきます。

医薬品等適正広告基準

第 3(基準)

1 名称関係

(1) 承認を要する医薬品の名称についての表現の範囲

 薬事法 (以下「法」という。)第14条の規定に基づく承認 (法 第 23 条において準用する場合を含む。以下「承認」という。)を要する医薬品について、承認を受けた販売名、日本薬局方に定められた名称又は一般的名称以外の名称を使用しないものとする。

(2) 承認を要しない医薬品の名称についての表現の範囲

 承認を要しない医薬品については、日本薬局方に定められた名称、一般的名称又は販売名以外の名称を使用しないものとする。 なお、販売名はその医薬品の製造方法、効能 効果及び安全性について事実に反する認識を得させるおそれのあるものであつてはならない。

(3) 医薬部外品、化粧品及び医療用具の名称についての表現の範囲

 医薬部外品、化粧品及び医療用具について、承認又は法第 12 条、法第 1 8 条 (法 第 23 条において準用する場合を含む。)若しくは法第 22 条の規定に基づき許可を受けた販売名又は一般的名称以外の名称を使用しないものとする。

2 製造方法関係

 医薬品等の製造方法について実際の製造方法と異なる表現又はその優秀性について事実に反する認識を得させるおそれのある表現をしないものとする。

3 効能効果、性能及び安全性関係

(1) 承認を要する医薬品等についての効能効果等の表現の範囲

 承認を要する医薬品等の効能効果又は性能 (以下「 効 能 効 果 等 」という 。)についての表現は、承認を受けた効能効果等の範囲をこえないものとする。

 また、承認を受けた効能効果等の一部のみを特に強調し、特定疾病に専門に用いられる医薬品又は医療用具以外の医薬品又は医療用具について、特定疾病に専門に用いられるものであるかの如き誤認を与える表現はしないものとする。

(2) 承認を要しない医薬品及び医療用具についての効能効果等の表現の範囲

 承認を要しない医薬品及び医療用具の効能効果等の表現は、医学薬学上認められている範囲をこえないものとする。

(3) 承認を要しない化粧品についての効能効果の表現の範囲

 承認を要しない化粧品の効能効果についての表現は、昭和 36 年 2 月 8 日薬発第44号都道府県知事あて薬務局長通知「薬事法の施行について」記「第 1」の「3」の「(3)」 に定める範囲をこえないものとする。

(4) 医薬品等 の成分及びその分量又は本質並びに医療用具の原材料、形状、構造及び 寸法についての表現の範囲

 医薬品等の成分及びその分量又は本質並びに医療用具の原材料、形状、構造及び寸法について虚偽の表現、不正確な表現等を用い効能効果等又は安全性について事実に反する認識を得させるおそれのある広告をしないものとする。

(5) 用法用量についての表現の範囲

 医薬品等の用法用量について、承認を要する医薬品等にあつては承認を受けた範囲を、承認を要しない医薬品、化粧品及び医療用具にあつては医学薬学上認められている範囲をこえた表現、不正確な表現等を用いて効能効果等又は安全性について事実に反する認識を得させるおそれのある広告はしないものとする。

(6) 効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止

 医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現はしないものとする。

(7) 効能効果等又は安全性についての最大級の表現又はこれに類する表現の禁止

 医薬品等の効能効果等又は安全性について、最大級の表現又はこれに類する表現はしないものとする。

(8) 効能効果の発現程度についての表現の範囲

 医薬品等の速効性、持続性等についての表現は、医学薬学上認められている範囲をこえないものとする。

(9) 本来の効能効果等と認められない表現の禁止

 医薬品等の効能効果等について本来の効能効果等とは認められない効能効果等を表現することにより、その効能効果等を誤認させるおそれのある広告は行わないものとする。

4 医薬品等の過量消費又は乱用助長を促すおそれのある広告の制限

 医薬品等について過量消費又は乱用助長を促すおそれのある広告は行わないものとする。

5 医療用医薬品等の広告の制限

(1) 医師若しくは歯科医師が自ら使用し、又はこれらの者の処方せん若しくは指示によつて使用することを目的として供給される医薬品については、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告は行わないものとする。

(2) 医師、歯科医師、はり師等医療関係者が自ら使用することを目的として供給される医療用具で、一般人が使用するおそれのないものを除き、一般人が使用した場合に保健衛生上の危害が発生するおそれのあるものについても (1)と同様にするものとする 。

6 一般向広告における効能効果についての表現の制限

 医師又は歯科医師の診断若しくは治療によらなければ一般的に治癒が期待できない疾患について、医師又は歯科医師の診断若しくは治療によることなく治癒ができるかの表現は、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告に使用しないものとする。

7 習慣性医薬品の広告に付記し、又は付言すべき事項

 法第 50 条 第 8 号の規定に基づき厚生大臣の指定する医薬品について広告する場合には、習慣性がある旨を付記し、又は付言するものとする。

8 使用及び取扱い上の注意について医薬品等の広告に付記し、又は付言すべき事項

 使用及び取扱い上の注意を特に換起する必要のある医薬品等について広告する場合は、それらの事項を、又は使用及び取扱い上の注意に留意すべき旨を、付記し又は付言するものとする。 ただし、ネオンサイン、看板等の工作物による広告で製造方法、効能効果等について全くふれない場合はこの限りではない。

9 他社の製品のひぼう広告の制限

 医薬品等の品質、効能効果等、安全性その他について、他社の製品をひぼうするような広告は行わないものとする。

10 医薬関係者等の推せん

 医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告は行わないものとする。ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。

11 懸賞、賞品等による広告の制限

(1) ゆきすぎた懸賞、賞品等射こう心をそそる方法による医薬品等又は企業の広告は行わないものとする。

(2) 懸賞、賞品として医薬品を授与する旨の広告は原則として行わないものとする。

(3) 医薬品等 の容器、被包等と引換えに医薬品を授与する旨の広告は行わないものと する。

12 不快、不安等の感じを与える表現の制限

 不快又は不安恐怖の感じを与えるおそれのある表現を用いた医薬品等の広告は行わないものとする。

12 の 2 不快、 迷 惑 等の感じを与える 広 告 方 法 の制限

 医薬品等について広告を受けた者に、不快や迷惑等の感じを与えるような広告は行わないものとする。 特に、電子メールによる広告を行う際は、次の方法によるものとする。

(1) 医薬品販売業者等の電子メールアドレス等の連絡先を表示すること。

(2) 消費者の請求又は承諾を得ずに一方的に電子メールにより医薬品等の広告を送る 場合、メールの件名欄に広告である旨を表示すること。

(3) 消費者が、今後電子メールによる医薬品等の広告の受け取りを希望しない場合、 その旨の意思を表示するための方法を表示するとともに、意思表示を示した者に対しては、電子メールによる広告の提供を行ってはならないこと。

13 テレビ、ラジオの提供番組等における広告の取扱い

(1) テレビ、ラジオの提供番組又は映画演劇等において出演者が特定の医薬品等の品質、効能効果等、安全性その他について言及し、又は暗示する行為をしないものとする。

(2) テレビ、ラジオの子供向け提供番組における広告については、医薬品等について誤つた認識を与えないよう特に注意するものとする。

14 医薬品の化粧品的若しくは食品的用法又は医療用具の美容器具的若しくは健康器具的用法についての表現の制限

 医薬品について化粧品的若しくは食品的用法を又は医療用具について美容器具的若しくは健康器具的用法を強調することによつて消費者の安易な使用を助長するような広告は行わないものとする。

15 医薬品等の品位の保持等

 前各号に定めるもののほか、医薬品等の本質にかんがみ、著しく品位を損ない、若 しくは信用を傷つけるおそれのある広告は行わないものとする。

 

 まあ、いろいろと細かく定められていますね。

 気になる部分、ひっかかる部分もありますが、医薬品の情報提供する上ではしっかりとおさえておく必要があるでしょう。

 

 ここまで確認してくると、今回の番組は明らかに虚偽・誇大な広告であり、医薬品医療機器等法違反が疑われるように思います。

 今後の動向を見守りたいと思います。

 

つづく 

どこからが広告で、どこからが誇大広告なのか? - 地域医療日誌

 

*1:PDFファイル。一部原文に誤字を発見しましたので、修正しています。

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