地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

人工知能で診断が変わる?

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 最近、人工知能を医療に活用した事例が報道されるようになってきました。

 最新技術に大きな期待と関心を寄せながらも、人工知能に仕事を奪われるのではないか と、心穏やかではない、という一面もあることでしょう。

 診断することは医者の仕事のひとつであり、それが脅かされようとしているわけですが、膨大な情報を集積して分析する診断の仕事は、むしろ人工知能のほうが得意でしょう。

 新しい技術を医療現場でうまく活用していきたいものです。

 

 人工知能は現状でどの程度まで進歩しているのか、何ができるのか、ニュースなどの報道から拾ってみました。

 

ホワイト・ジャック

 2016年3月に朝日新聞で報道されました。わが母校、自治医科大学の石川鎮清教授(総合診療)の研究チームが開発中の診断システムです。

医師の診療をフォーローする人工知能による医療診断システム「ホワイト・ジャック」!|健康・医療情報でQOLを高める~ヘルスプレス/HEALTH PRESS

 

 名前はブラック・ジャックにかけたのですね、なるほど。

 創薬支援に取り組むLSIメディエンスや医療機器メーカーの東芝メディカルシステムズなど5社と連携して開発されています。

 システムは3つの要素技術で構築されているようです。

  • 入力用ロボット(ペッパー)
  • 患者の電子カルテのデータ・診療履歴・治療法・検査法・処方薬など8000万件を蓄積した医療データバンク
  • 想定される疾患を検索・分析・提示する人工知能

 

 ぜひとも、一度お目にかかりたいというか、実際に使ってみたいですね。

 

ワトソン

 人工知能が白血病患者の命を救った、とNHKで報道されたことが記憶に新しいところです。こちらは東京大学医科学研究所の附属病院やアメリカの大手IT企業IBMなどのグループが開発しています。

国内初 人工知能が救ったがん患者の命|NHK NEWS WEB

 

 2000万件もの医学論文を学習した人工知能ワトソンが、 専門医でも診断が難しい特殊な白血病をわずか10分で見抜き、治療法を変えるよう提案。治療を変更して回復した、というエピソードが紹介されています。

 東京大学医科学研究所の宮野悟教授のコメントから。

「がん研究論文は、毎年20万という数が投されていて、1人の医師がそれを読んで調べていくということは不可能な世界になっているのが現状だ」

 

 日々発表されている数ある論文から的確な情報を探し出して医療に活用する、というEBMの実践も、人の手や頭脳で行うには限界があるでしょう。

 ぜひとも人工知能の力を借りたいところです。

「医師と患者のやり取りを横で聞いて、人工知能がその場で助言するような、医師と人工知能が協調する時代は10年単位でなく、数年という近い将来にやってくる可能性がある」

 

 診断支援システムとして、これらの技術が日々の診療に活用できるようになる未来までは、そう遠くないはずです。

 これからも注目していきたいと思います。

 

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