地域医療日誌

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人工呼吸器はALSの生存期間をのばしますか?

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ALSの治療について

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療について、これまでいくつか記事を書いてきました。

ALSにラジカットはどうですか? - 地域医療日誌

ALSにメジコン? - 地域医療日誌

リルテックはALSの生存期間をのばす - 地域医療日誌

 

 ALSでは呼吸筋麻痺による呼吸不全が進行し、自然経過では2~5年で死に至るとされています。ただし、臨床経過の個人差が大きく、急速に呼吸不全が進行する例や、呼吸補助なく10年以上経過する例もあります。 

 

 呼吸筋麻痺に対して人工呼吸器が用いられますが、その効果はどの程度あるのでしょうか。コクランのメタ分析がありますので、確認しておきましょう。

メタ分析(Radunovic, 2013年) *1

研究の概要

 ALSまたは運動ニューロン疾患の患者に気管切開下人工呼吸療法または非侵襲的換気療法を行うと、人工呼吸療法なしに比べて生存期間は長くなるか、を検討したランダム化比較試験または準ランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 ALSを対象に非侵襲的換気療法を検討した2研究(54人)が該当。

 そのうち1研究ではデータが不十分で、著者に問い合わせたが十分なデータが得られなかったため、1研究(41人)の結果(Bourke, 2006年)*2のみで検討せざるを得なかった。

 この研究は、ALSの患者に非侵襲的換気療法(22人)を行うと、標準治療(19人)に比べて生存期間が長くなるかを検討したランダム化比較試験である。

 生存期間(中央値)は非侵襲的換気療法群で219日、標準ケア群で171日と、非侵襲的換気療法群で48日長かった(推定95%信頼区間 12, 91日)。

 

非侵襲的換気療法で48日長い

 やはりランダム化比較試験で検討された研究は数少なく、症例数も少ないようです。その意味では貴重な研究となっています。

 非侵襲的換気療法で生存期間が48日長くなる、それも球麻痺なしか軽度のALSで効果が大きくなっていた、という結果でした。

 

 ランダム化比較試験が難しいこのテーマで、新しい研究が次々行われることはなさそうです。

 この結果を参考にしていきたいと思います。

 

*1:Radunovic A, Annane D, Rafiq MK, Mustfa N. Mechanical ventilation for amyotrophic lateral sclerosis/motor neuron disease. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Mar 28;(3):CD004427. doi: 10.1002/14651858. CD004427. pub3. Review. PubMed PMID: 23543531.

*2:Bourke SC, Tomlinson M, Williams TL, Bullock RE, Shaw PJ, Gibson GJ. Effects of non-invasive ventilation on survival and quality of life in patients with amyotrophic lateral sclerosis: a randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2006 Feb;5(2):140-7. PubMed PMID: 16426990.

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