地域医療日誌

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変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

伝染性単核球症+アモキシシリン=発疹?

4. 医療の負の側面に関すること
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質問

 伝染性単核球症に対してアモキシシリンを投与すると、必ず発疹が出ますか?

 

アンピシリン疹

 今回は、Epstein-Barrウイルス(EBウイルス)などの感染によっておこる伝染性単核球症についてです。基礎的情報については、こちらをどうぞ。

IDWR:感染症の話

 

 発熱、扁桃の腫大があり、溶連菌感染症と判断して、アモキシシリンを投与することはしばしばあります。

 しかし、もしその判断が誤りで、EBウイルスだったとしたら・・・。後日、全身に発疹が出て再診となる、という経過を心配するでしょう。

 

 伝染性単核球症に抗菌薬を投与したために発疹が誘発されるという事例は、1960年代にいくつか報告 *1 があります。

 アンピシリンで95-100%発疹が出たという報告もあり、"ampicillin rash"と呼ばれ、小児科の教科書にも記載されている有名な現象です。

 治療開始後の発疹は、あまり気分のよいものではありません。

 溶連菌とすれば治療失敗、EBウイルスだとすれば判断の誤り、薬疹とすれば治療による有害事象、ということとなり、どの原因だとしても後味が悪いものです。

 なるべくなら治療後の発疹は避けたい経過、ということになるでしょう。

 

 それでは、その頻度はどれほどでしょうか?2013年にイスラエルからの報告がありますので、読んでおくことにします。

後ろ向き観察研究(Chovel-Sella, 2013年) *2

研究の概要

  EBウイルス感染症(VCA-IgM陽性)による伝染性単核球症を発症し、イスラエルの2つの医療センターに入院した0-18歳の小児のうち、抗菌薬を投与されると、発疹の頻度はどれほどか、を検討した後ろ向き観察研究。

 

主な結果

 伝染性単核球症の小児273人(平均6.1歳)が対象。抗菌薬治療を受けたのが173人。そのうち57人(32.9%)に発疹が出現。抗菌薬治療なしでは15人(23.6%)に発疹が出現し、統計学的有意差はなかった。

 抗菌薬投与による発疹は41人(23.6%)のみで、抗菌薬の中ではアモキシシリンによるものが最も多かった。

 薬剤別の抗菌薬関連発疹の頻度(95%信頼区間)を示す。

  • Penicillin 8.57%(1.80, 23.06)
  • Amoxicillin 29.51%(18.52, 42.57)
  • Amoxicillin+clavulanate 15.56%(6.49, 29.46)
  • Cephalosporins 15.38%(7.63, 26.48)
  • Macrolides 9.09%(1.92, 24.33)

 

アモキシシリンで3割

 アモキシシリンでは約3割に抗菌薬関連発疹がみられていました。

 しかし、他の薬でもみられており、アモキシシリン以外では大丈夫ということではないようです。

 

これからどうするか?

 疑われる場合の抗菌薬の使用や選択に注意することと、この情報を参考に、発疹が出る可能性があることを説明しておくことでしょうか。

 注意したいと思います。

 

*1:Pulen H, Wright N, Murdoch JM. Hypersensitivity reactions to antibacterial drugs in infectious mononucleosis. Lancet. 1967 Dec 2;2(7527):1176-8. PubMed PMID: 4168380.など

*2:Chovel-Sella A, Ben Tov A, Lahav E, Mor O, Rudich H, Paret G, Reif S. Incidence of rash after amoxicillin treatment in children with infectious mononucleosis. Pediatrics. 2013 May;131(5):e1424-7. doi: 10.1542/peds.2012-1575. Epub 2013 Apr 15. PubMed PMID: 23589810.

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