地域医療日誌

地域医療日誌

変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

アトピーのステロイドは週2回でもいいですか?

スポンサーリンク

 

プロアクティブ療法の記事

 アトピー性皮膚炎で治療している方が、新聞記事の切り抜きをもって来られました。

「アトピーのステロイド外用は週2回にしてもよいですか?」

 

 ステロイド外用は週2回でよいという「プロアクティブ療法」についての記事です。記事ではいくつか臨床研究があることにも触れられていました。

 

 そこで、情報収集して確かめてみることにしました。

 

ガイドラインでは?

 日本のガイドラインは2009年に出版されていました。ここから情報を辿れるでしょうか?

日本のガイドライン(2009年)

Saeki H, Furue M, Furukawa F, Hide M, Ohtsuki M, Katayama I, Sasaki R, Suto H, Takehara K; COMMITTEE for GUIDELINES for the MANAGEMENT of ATOPIC DERMATITIS of JAPANESE DERMATOLOGICAL ASSOCIATION. Guidelines for management of atopic dermatitis. J Dermatol. 2009 Oct;36(10):563-77. doi: 10.1111/j.1346-8138.2009.00706.x. PubMed PMID: 19785716.

 

 これは日本皮膚科学会誌でした。日本語版はPDFで公開されていました~!!。

[PDF] アトピー性皮膚炎診療ガイドライン - 九州大学医学部 皮膚科学教室 

 この中には「プロアクティブ療法」という記述はありませんでした。

 ステロイド外用薬の使いかたについては、以下のような記載となっています。

・ステロイド外用薬の外用回数:急性増悪の場合には1 日2 回(朝,夕:入浴後)を原則とする.ただし, ステロイド外用薬のランクを下げる,あるいはステロ イドを含まない外用薬に切り替える際には,1 日1 回 あるいは隔日投与などの間欠投与を行いながら,再燃のないことを確認する必要がある.ストロングクラス以上のステロイド外用薬では,1 日2 回外用と1 回外用の間に,3 週間後以降の治療効果については有意差がない(エビデンスのレベルは2[1 つ以上のランダム化比較試験による])31)32).外用回数が少なければ副作用は少ないことを考慮すると,急性増悪した皮疹には 1 日2 回外用させて早く軽快させ,軽快したら1 日1 回外用させるようにするのがよい(推奨度はA[行うよう強く勧められる]).ただし,ミディアムクラスの場合には,1 日2 回外用の方が1 日1 回外用よりも有 効である(エビデンスのレベルは2)33).

 

 ここまでは1日2回から1日1回または隔日投与などへ順次減量することについて触れられていましたが、その根拠となる引用文献はここには示されていませんでした。

 さらに、外用中止の記載は以下のようになっています。

・外用中止:炎症症状の鎮静後にステロイド外用薬を中止する際には,急激に中止することなく,症状をみながら漸減あるいは間欠投与を行い徐々に中止する.ただし,ステロイド外用薬による副作用が明らかな場合はこの限りではない.

 

 ここにも徐々に中止する、とはっきり記載されていますが、引用文献は示されていません。これ以降の部分では、ステロイド外用薬の回数に関する記載はありません。

 

 残念ながら、このガイドラインには、ステロイド外用薬を週2回投与する方法ついては記載はありませんでした。また、徐々に中止したほうがよいという記載はありましたが、その基になる引用文献などの科学的根拠は示されていませんでした。

 

 もう少し調べてみることにしましょう。

 

ランダム化比較試験では?

 二次資料から探してみました。UpToDate のトピック Treatment of atopic dermatitis (eczema) に記載があり、いくつか文献が紹介されています。

小児から成人のランダム化比較試験(2002年)

 米国オレゴン健康科学大学からの報告。残念ながら原著未確認、抄録のみの情報からです。

Hanifin J, Gupta AK, Rajagopalan R. Intermittent dosing of fluticasone propionate cream for reducing the risk of relapse in atopic dermatitis patients. Br J Dermatol. 2002 Sep;147(3):528-37. PubMed PMID: 12207596.

  • P▶ 中等度から高度のアトピー性皮膚炎(AD)がある乳児から成人(3か月から65歳まで)に対して1日2回のフルチカゾン+保湿剤外用を4週間まで行い、治療成功した人に対して
  • E▶ 保湿剤に加えてフルチカゾン外用を1週間のうち4日(4週間)、1週間のうち2日連続(16週間)の間欠投与をすると
  • C▶ 保湿剤に加えて基剤のみの外用に比べて
  • O▶ 治療終了24週間後までのAD再燃は少ないか
  • T▶ 予防、ランダム化比較試験

《結果》※※※

  • 372人のうち 348人(小児231人、成人 117人、94%)が治療成功し、維持期に入った。
  • AD再燃はステロイド間欠投与群で 7.7倍(95%信頼区間 4.6~12.8)少ない
  • 小児では 8.1倍(95%信頼区間 4.3~12.8)、成人では 7.0倍(95%信頼区間 3.0~16.7)AD再燃が少ない。

 

 何倍少ない、という日本語ではあまりなじまない表現ですが・・・抄録をそのまま日本語訳しています。

 抄録からでは、AD再燃の評価をどのようにやったのかがわかりません。原著を確認してみたいところではあります。最初の4週間の1日2回のステロイド外用では、94%が治療成功と判定されており、かなり高い印象を受けます。

 

 結果としては、ステロイド間欠投与したほうが再燃は少なかった、とのことです。

 また、副作用についても1例のざ瘡のみで、気になる皮膚の肥厚や萎縮はみられなかったそうです。

 

成人の再発予防効果

成人のランダム化比較試験(2003年)

 2002年のランダム化比較試験の関連論文で検索されました。こちらも同時期の英国からの報告、BMJ誌です。

Berth-Jones J, Damstra RJ, Golsch S, Livden JK, Van Hooteghem O, Allegra F, Parker CA; Multinational Study Group. Twice weekly fluticasone propionate added to emollient maintenance treatment to reduce risk of relapse in atopic dermatitis: randomised, double blind, parallel group study. BMJ. 2003 Jun 21;326(7403):1367. PubMed PMID: 12816824; PubMed Central PMCID: PMC162129.

  • P▶ 中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)がある成人(12~65歳)に対して1日1~2回のフルチカゾン外用を4週間まで行い、寛解した人に対して
  • E▶ すでに発疹が治癒し再発のおそれがある部分に、保湿剤に加えてフルチカゾン外用(クリームまたは軟膏)を1週間のうち連続する2日間のみ間欠投与(16週間)
  • C▶ 保湿剤に加えてプラセボ基剤外用を間欠投与
  • O▶ 16週間後までのAD再燃(TISスコア、3項目3点満点で重症度を評価し4点以上)は少ないか
  • T▶ 予防、ランダム化比較試験

《結果》※※※

 376人のうち295人(78%)が寛解して維持期に入り、ランダム化に参加

f:id:cometlog:20130703185207p:plain 維持期には副作用として皮膚の変化や萎縮はみられなかった。

 

 評価は二重盲検化されており、ITT解析もなされています。

 前回紹介した2002年の米国のランダム化比較試験と、なぜか研究デザインがそっくりでした。結果の表現までもが似ています。

 

 クリーム使用では、治療必要数(NNT)2.2とのことで、2.2人治療すると1人のAD再燃が予防できるという、高い効果が期待できるという結果でした。

 

 さらに、この研究でも維持期での有害事象はみられていません。最初の安定化治療ではステロイド外用群に3人の皮膚萎縮がみられています。

 

 これまでの2つのランダム化比較試験では症例数も治療期間も限られていますが、16週間程度の週2回外用では、皮膚萎縮の副作用はみられなかったようです。

 

 やはり効果はありそうですが、安全性については、もう少し情報がほしいところです。

 

プラセボでは過半数が再燃

 ここで注目しておきたいのは、再燃率です。中等度から高度のアトピー性皮膚炎を対象としているとはいえ、16週間のプラセボ外用で56~64%が再燃しています。

 なかなかコントロールがつかず頻繁に再燃を繰り返す場合には、検討してもよい治療といえるでしょう。

 

メタ分析では?

 UpToDate のトピック Treatment of atopic dermatitis (eczema) には2011年のメタ分析についても紹介されています。こちらも抄録のみの確認、結果の一部を示します。

メタ分析(2011年)

Schmitt J, von Kobyletzki L, Svensson A, Apfelbacher C. Efficacy and tolerability of proactive treatment with topical corticosteroids and calcineurin inhibitors for atopic eczema: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Br J Dermatol. 2011 Feb;164(2):415-28. doi: 10.1111/j.1365-2133.2010.10030.x. Epub 2010 Nov 23. Review. PubMed PMID: 20819086.

  • P▶ アトピー性皮膚炎(AD)の人に
  • E▶ 予防的にステロイド外用すると
  • C▶ プラセボ・投与なしに比べて
  • O▶ AD再燃が少ないか
  • T▶ 予防、メタ分析

《結果》※※※

  • 4つのランダム化比較試験の統合。
  • ステロイド外用で、AD再燃の相対危険は0.46(95%信頼区間 0.38~0.55)。
  • 重篤な有害事象はない。

 

  ランダム化比較試験のメタ分析でもAD再燃は54%少ない、有害事象はない、という結果になっています。

 

あくまでも再燃予防として

 ここまで紹介してきた研究は、いずれも急性期治療によってアトピー性皮膚炎が寛解している人に対する再燃予防効果を検証していることに注意が必要です。

 いったんステロイド外用を中止できる時期に入った段階で、保湿剤のみにするのではなく、予防としてステロイドを週2日連続の間欠投与に切り替える、という方法です。

 

 また、16週以上の長期投与についての安全性やまれな副作用については、今後の検証が待たれるところです。

 情報収集を続けていきたいと思います。

 

アトピーのステロイド外用は週2回でいいですか?

  • まだ皮膚炎が落ち着いていない段階では毎日外用を。
  • 一旦寛解したら週2日外用は再燃予防効果が期待できる。
  • 再燃を頻繁に繰り返す場合には治療の選択肢となりうる。
  • 長期使用の安全性については今後の検討が待たれる。
 Copyright © 2003, 2007-2017 地域医療ジャーナル