地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

AYA世代特有の課題とその支援

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AYA世代とは?

 先日、自らが胃がん治療経験者でもあり、AYA世代と呼ばれる15~39歳のがん経験者を支援する活動をしている方にお話をうかがう機会がありました。

 

 ところで、AYA世代ってどこかで聞いたことがあるでしょうか? 厚生労働省の資料でもしばしば見かけるようになっています。

 Adolescent and Young Adultの略で、15歳から40歳未満の思春期・若年成人の世代のことを指すようです。

 

AYA世代特有の課題

 このAYA世代のがん対策には、高齢者とは異なる課題があります。

「総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究」班 *1「AYA世代のがん対策に関する政策提言」によると、現状の問題点がいろいろ指摘されています。主なものを抜粋引用したします。

  • AYA世代がん患者(以下、AYA)は全国に一定の割合で存在するが、頻度は少なく、医療機関も医療者も経験数が少ない
  • AYAの診療数の多い医療機関のほうが、少ない医療機関よりも専門医、施設認定が充実している。 しかし、診療数の多い医療施設においても、生殖医療専門医、緩和ケア専門医、 精神腫瘍医など、AYAが必要とする人的リソース、ケア環境が充足していない
  • AYAは年齢が高くなるほど頻度が増加し、25歳未満では希少がん、25歳以上では子宮頸がん、乳がんの患者の割合が多い。 
  • がん体験は、AYAの将来構想に影響を与える。また、AYAは、同世代の健康な若年者に比べ不安が強い。
  • AYAの中でもライフステージによってニーズの傾向が異なる。発症時には認識されていないニーズが、治療後の時間経過とともに新たなニーズとして認識される場合もある。
  • 医療従事者はAYAのニーズを十分に認識できていない可能性がある。
  • がん対策加速化プラン等では、希少がん、小児がん、緩和ケア、生殖機能温存、就学、就労についての対策など、AYAの診療・ケアに関する個別分野での取り組みが進められているが、患者視点での包括的・継続的な情報・相談体制の提供が十分ではない
  • AYAの多くは、意思決定や自己管理に必要な、がん治療の合併症・後遺症およびそれらの生活に対する影響や管理方法について、第三者に説明することが困難と感じている。
  • AYAのピアサポートのニーズ、家族支援等のニーズが充足していない。
  • AYAには、がんの遺伝に関する情報のニーズがある。同世代の健康な若年者においても遺伝子検査や予防についての関心が高い。

 

 医療者や医療機関側の問題点が数多く指摘されています。

 これはAYA世代のがん対策に限った問題ではなく、AYA世代の医療全般に共通する課題かもしれません。

 

AYA世代のがん対策 

 AYA世代のがん対策については、厚生労働省の資料 *2 にあります。 

AYA(Adolescent and Young Adult)世代のがん対策について

  • AYA世代のがん対策については、就職時期と治療時期が重なるため、働く世代のがん患者への就労支援とは異なった就労支援の観点が必要であることに加え、心理社会的な問題への対応を含めた相談支援体制、緩和ケアの提供体制等を含めた、総合的な対策のあり方を検討する必要がある。
  • 思春期世代と若年成人世代の課題の共通点と相違点を整理し、各年代に応じた対策を検討していく必要がある。
  • AYA世代のがんの治療に当たっては、倫理面に配慮しつつ、生殖機能温存に関する正確な情報提供を患者・家族に対して行うよう、医療従事者に周知を図る必要が ある。
  • AYA世代の患者であっても、病状に応じて適切な介護が受けられる体制を構築していくことも重要である。
  • 小児がん、AYA世代のがん等については、遺伝性腫瘍も存在することから、今後、遺伝性腫瘍に対する医療・支援のあり方についても検討していく必要がある。

 

 就学や就職時期と重なるため、ライフステージに応じた支援体制が必要となるはずです。また、治療後にも倫理面や遺伝に関する不安など、細やかな対応が必要でしょう。

 しかし、十分な支援が行われていない現状がありそうです。

 頻度が少ないため、十分な体制が構築できないということはしばしばみられることですが、配慮が必要でしょう。

 医療の主要なユーザーである高齢者対策ばかりが注目されて、ここにも目があまり行き届いていないように感じます。

 

 これを機会に、AYA世代の問題にも注目していきたいと思います。

 

公開日 2017-06-13, 最終更新日 2017-06-22

*1:厚生労働省科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業

*2:ライフステージに応じたがん対策について~議論の背景~(事務局説明資料)

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