科学は黄信号?
科学者の研究不正が問題となっています。国民の科学に対する信頼性は黄信号(赤信号?)が灯っています。
ノバルティスファーマ社「ディオバン」の一件や「STAP細胞」が話題となり、記憶にまだ新しいところかと思います。
実はこのような研究不正行為は、歴史的にみても枚挙に暇がないほどみられています。専門家のピアレビューを通過しているから安心、とは言えないような実態が明らかになりつつあります。
不正行為といえば政治家、というご時世ですが、研究者にも不正行為が多かったのです。
研究不正の本
このほど出版されたこちらの新書では、過去の研究不正事件について、詳しくまとめられており、おすすめです。
帯の「RETRACTED」(取り下げ)も印象的です。ノバルティスファーマ社の事件で問題になった論文に、赤字で書かれて晒されているところが背景画像となっています。
この本なかには、21の研究不正事例についての詳細が収められています。こんなにあるものなのか、と認識を新たにしました。
さらに、4,000人以上の研究者にこれまで研究不正の経験があるか、というアンケート調査し、学術論文として2005年のNature誌に掲載された学術論文 *1 が紹介されています。
自己申告ではありますが、まさしくそこに、研究者の実態が赤裸々に示されています。一部をご紹介します。
- 研究記録が不完全 27.5%
- 資金提供者からの圧力で研究デザインや方法、結果を変更した 15.5%
- 不正確であるが、観察したことやデータを分析から直感的に除いた 15.3%
- 他人のデータ不正やデータ解釈の誤りを大目にみた 12.5%
- 二重投稿した 4.7%
- 他人のアイディアを許可なく使用した 1.4%
- 学生、被験者、患者との不適切な関係 1.4%
- データの改竄 0.3%
赤信号だった!
これほど不正行為があるのか、と愕然とするデータです。
4,000人規模の調査ですから、これだけでデータの改竄が12件ですよ!
「研究不正はごく一部の者がやっているに過ぎず、科学そのものの信頼性を失墜させるものではない」という釈明がよくなされますが、もうとても信用できません。
ぼくらは「怪しげなコミュニティ」に属しているという自覚を持ちたいと思います。
同僚の査読を受けた学術論文であっても、おかしいところがありうる、あとで間違いが見つかるかもしれないという姿勢で読み、批判的吟味を怠らないようにしたいと思います。
過去の関連記事もどうぞ。
*1:Martinson BC, Anderson MS, de Vries R. Scientists behaving badly. Nature. 2005 Jun 9;435(7043):737-8. PubMed PMID: 15944677.