地域医療日誌

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地域医療日誌

変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

フェロベリンは下痢に有効ですか?

3. 診断や治療についての疑問
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公開日 2013-08-26, 最終更新日 2016-08-30

質問

 フェロベリンは強い薬でしょうか?

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 これまで長年、慢性下痢のため他院で止痢剤(下痢止め)を処方され、内服してきた女性。止痢剤のフェロベリンがないと不安になるため、処方を希望されました。

 普段あまり処方しない薬のため、その効果について調べてみることにしました。

 

有効率77%

 フェロベリンは、ベルベリン塩化物水和物とゲンノショウコエキスの配合錠です。

 ベルベリンはBerberis aristata(セイヨウメギ)などの根や樹皮からとれる天然由来の有機化合物です。

 

 まずここで、天然由来であれば安全という先入観は捨てましょう。

 

 MSDが製造販売している医薬品ですので、有効性についての情報を添付文書(2010年10月改訂、第7版)で確認してみましょう。

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 1970年代に16の臨床試験の報告(すべて国内)があり、有効率は77%(478例/624例)であったとのこと。なかなか良さそうにみえる結果です。

 

検証データなし?

 さらに、インタビューフォーム(2011年8月改訂、改訂第7版)を確認してみました。

 

 開発の経緯には、このように記載されています。

 フェロベリン®A は1966年に、ベルベリン塩化物水和物とキノホルムの配合剤として製造承認を得、下痢や胃腸カタル等の治療薬として発売された。その後、キノホルムが1970 年のスモン-キノホルム原因説により使用中止となったのを受けて、キノホルムに替えてゲンノショウコエキスを配合し、現行の組成とした。 1985年7月の再評価結果を受けて現行の効能・効果、用法・用量に変更された。

 

 以前はキノホルムが使用されていたんですね。使用中止となりゲンノショウコエキスが加えられています。

 なお、ベルベリンはキハダから抽出しているようです。

 フェロベリン®配合錠の成分、ベルベリン塩化物水和物はキハダの樹皮より抽出している。 フェロベリン®配合錠の名称はキハダの学名Phellodendron amurense Ruprecht(Rutaceae) のフェロ(Phello-)及びBerberineのベリン(-berin)を結んでPhelloberinとしている。

 

 さて、臨床成績には、添付文書のデータが記載されていました。

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 「検証的試験」の項目には、無作為化並行用量反応試験も比較試験も、さらには安全性試験も「該当資料なし」となっています。

 ということは、有効率77%という臨床試験のすべて前後比較試験の結果ということでしょうか。

 

 急性下痢であれば、止痢剤を使用しなくても改善するはずです。この16の臨床試験からは、フェロベリンに効果があるかどうかは検証できていないということになるのではないでしょうか。

 さらには安全性までも・・・。

 

 キノホルムの一件も気になりますし。だんだん雲行きが怪しくなってきました。

 

2つのランダム化比較試験が・・・

 本当にフェロベリンの効果を検証した研究は、ひとつもないのでしょうか?

 PubMed Clinical Queriesを使って、検索してみました。ものの1分もしないうちに、ベルベリンのランダム化比較試験が検索されてきました。

 

 ゲンノショウコについては、検索はヒットしませんでした。質の高い研究は存在しない、ということでしょうか。

 

 ベルベリンに関するランダム化比較試験は2つ検索されてきました。そのうち、急性下痢症に対する効果を検証したものをご紹介します。

急性下痢症に対するランダム化比較試験(1985年)

Khin-Maung-U, Myo-Khin, Nyunt-Nyunt-Wai, Aye-Kyaw, Tin-U. Clinical trial of berberine in acute watery diarrhoea. Br Med J (Clin Res Ed). 1985 Dec 7;291(6509):1601-5. PubMed PMID: 3935203; PubMed Central PMCID: PMC1418442.

  • P▶ 48時間以内に発症して入院した水様性下痢患者の成人に
  • E▶ ベルベリン 100mg錠を1日4回服用すると
  • C▶ プラセボまたはテトラサイクリン500mgカプセルを1日4回服用するのに比べて
  • O▶ 下痢が早く消失するか
  • T▶ ランダム化比較試験(要因デザイン)

《結果》※※※

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 結果の表では、2群あるプラセボが別々に表記されていますが、要因デザインの研究となっています。

 要因デザインとは、ベルベリンとテトラサイクリンの治療効果という2つの仮説を証明するために、ベルベリン+テトラサイクリン、ベルベリン+プラセボ、プラセボ+テトラサイクリン、プラセボ+プラセボの4群に分けて介入し、結果の解析は2群合わせて行うという研究デザインです。

 

 テトラサイクリン群でコレラによる下痢の持続時間が短いようですが、ベルベリンではいずれもプラセボと差がなかったという結果でした。

 

大腸菌やコレラに対するランダム化比較試験(1987年)

Rabbani GH, Butler T, Knight J, Sanyal SC, Alam K. Randomized controlled trial of berberine sulfate therapy for diarrhea due to enterotoxigenic Escherichia coli and Vibrio cholerae. J Infect Dis. 1987 May;155(5):979-84. PubMed PMID: 3549923. 

 

 こちらは原著参照できず、抄録のみの判断です。

 対象が毒素原性大腸菌やコレラによる下痢となっており、ベルベリンが400mg1回投与となっています。

 

 この研究では、アウトカムが24時間後の下痢消失となっています。

At 24 hr after treatment, significantly more patients who were treated with BS and had ETEC diarrhea stopped having diarrhea as compared with the controls (42% vs 20%, P less than .05).

 

 毒素原性大腸菌では、ベルベリン投与24時間後の下痢消失が42%と、対照群20%に比べて有意に多い、という結果になっています。コレラでは有意差がみられていません。

 

 急性下痢に対する治療効果の判定が発症24時間での下痢の消失でよいのか、という疑問はありますが、この研究では早く下痢を止めることができるかを検証した、という位置づけになるのでしょう。

 

 「下痢に有効か?」という質問に対しては、下痢を早く止める効果を期待しているのか、早く治るという効果を期待しているのかによって、その答えが変わってくる、ということになるでしょう。

 

まとめ

  • ベルベリンについては2つのランダム化比較試験がある。
  • ベルベリンで急性下痢が早く治るということはない。
  • 発症早期に下痢を止める効果はあるかもしれない。

 

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