地域医療日誌

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めまいにメリスロン?

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質問

 めまいにメリスロン(ベタヒスチン)がよく使われますが、効果があるのでしょうか?

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ベタヒスチンの効能

 ベタヒスチンはメニエール病などのめまいに対してよく使われる薬ですが、効果はどの程度あるのでしょうか?

 

 薬の添付文書には、このような記載があります。

臨床成績

臨床効果
 総計875例について実施された二重盲検試験を含む臨床試験で、本剤はメニエール病、メニエール症候群、眩暈症等に伴うめまい、めまい感に対して有用性が認められている。1) 2) 3) 4) 5)

主要文献
1) 渡辺 いさむら:耳鼻咽喉科, 39, 1237 (1967) MRS‐0028
2) 岡本 健ら:医療, 22, 650 (1968) MRS‐0029
3) 石川 馨ら:新薬と臨牀, 32, 631 (1983) MRS‐0078
4) 佐藤護人ら:薬物療法, 13, 257 (1980) MRS‐0066
5) 野末道彦ら:薬理と治療, 6, 139 (1978) MRS‐0059

 

 日本の文献が5つ記載されていますが、1960-1980年代のものです。二重盲検試験を含むと記載がありますが、どのような研究だったのでしょうか。

 

 インタビューフォームを確認してみたところ、このような記載でした。

3.臨床成績

(1)臨床データパッケージ

(2)臨床効果

 総計 875 例について実施された二重盲検試験を含む臨床試験で、本剤はメニエール病、メニエール症 候群、眩暈症等に伴うめまい、めまい感に対して有用性が認められている。 (①②③④⑤)

(3)臨床薬理試験 該当資料なし

(4)探索的試験 該当資料なし

(5)検証的試験

1)無作為化並行用量反応試験 該当資料なし

2)比較試験

 メリスロン錠 6mg(1 回 2 錠、1 日 3 回、2 週間連続経口投与)とプラセボとの二重盲検交叉法により、各種眩暈症に対する有用性を検討した。 自他覚所見の変動よりプラセボに比べてメリスロン錠の有効性が逐次検定により確認され、副作用 についてはプラセボと有意差は認められなかった。 (①)

3)安全性試験 該当資料なし

4)患者・病態別試験 該当資料なし

(6)治療的使用

1)使用成績調査・特定使用成績調査(特別調査)・製造販売後臨床試験(市販後臨床試験) 該当資料なし

2)承認条件として実施予定の内容又は実施した試験の概要 該当しない

 

 主要文献1)が二重盲検交叉法による検討だった、ということでしょう。ランダム化比較試験は実施されていないようでした。

 

 さらに文献検索してみようかと思っていたところ、ちょうどBMJ誌に論文が発表されました。これは渡りに船、よんでみたいと思います。

 

これまでは効果が検討されてこなかった

ランダム化比較試験(Adrion, 2016年) *1

 論文の導入部分に、ベタヒスチンの薬の背景情報がこのように書かれています。要点のみを引用します。

  • Betahistine is a strong H3 antagonist and a weak H1 agonist with three sites of action. Firstly, it increases dose-dependent cochlear blood flow, mainly via the H3 receptor as an inverse agonist.
  • How betahistine might have an effect in the prophylactic treatment of Meniere’s disease is so far unknown. It could lead to an improvement of labyrinthine microcirculation, thereby rebalancing the production and resorption of endolymph.
  • The drug was first registered in Europe in the 1970s and has been administered to more than 100 million patients so far. In Germany, betahistine is the first line treatment for Meniere’s disease in clinical practice, before consideration of endolymphatic sac surgery or ablative gentamicin treatment. The drug is inexpensive and well tolerated, and is one of the most frequently prescribed drugs for Meniere’s disease in Europe.
  • In the USA, betahistine is not approved by the Food and Drug Administration but can be easily obtained through US compounding pharmacies with a prescription.
  • Several clinical studies assessing the effect of betahistine on the vestibular system and, to a lesser degree, audiological symptoms suggested that the drug improved these symptoms. According to a Cochrane systematic review of betahistine for Meniere’s disease or syndrome, there is, however, insufficient evidence to indicate whether betahistine has any effect.
  • So far, randomised controlled trials that meet high quality standards are lacking, either due to inadequate diagnostic criteria or methods, or because the effect of betahistine treatment on vertigo was assessed inadequately.

 

 海外でも経験的には使われてきた薬のようですが、質の高い研究は少なかったようです。ベタヒスチンの効果については十分なエビデンスがなかった、と明記されています。

 そんな背景から、今さらながらもこのような研究が行われた、ということのようです。それでは概要をよんでいきましょう。

研究の概要

 メニエール病(片側性または両側性)と診断された21-80歳の成人にベタヒスチン(低用量2×24mg/日または高用量3×48mg/日)を3か月間投与すると、プラセボに比べて30日あたりの発作回数(症状日記による)は少なくなるか、を検討した治療に関するランダム化比較試験(二重盲検、第三相試験)。

 

主な結果

 221人が対象(平均56歳)。プラセボ群、低用量群、高用量群には74, 73, 74人がランダム割り付けされたが、低用量群のうち1人がランダム化後治療前に脱落。1次アウトカムはそれぞれ72, 70, 72人の214人にて解析された。

 プラセボと比較しためまい発作の相対危険(率比)は以下のとおり。

  • 低用量群:1.036(95%信頼区間 0.942, 1.140)
  • 高用量群:1.012(95%信頼区間 0.919, 1.114)

 

プラセボと差がない

 ベタヒスチンは低用量でも高用量でも、メニエール病のめまい発作はプラセボと差がなかった、という結果でした。

 

 ここで使用されているベタヒスチンは低用量で24mg1日2回、高用量で48mg1日3回となっています。

 国内での用量は12mg1日3回となっており、本研究よりさらに少ない量で処方されている、ということを付け加えておきます。

 

これからどうするか?

 効能としては書かれていますが、これからは、メニエール病のめまい発作に対する効果は限られていることを認識した上で、使うかどうか判断したいと思います。

 

*1: Adrion C, Fischer CS, Wagner J, Gürkov R, Mansmann U, Strupp M; BEMED study group. Efficacy and safety of betahistine treatment in patients with Meniere's disease: primary results of a long term, multicentre, double blind, randomised, placebo controlled, dose defining trial (BEMED trial). BMJ. 2016 Jan 21;352:h6816. doi: 10.1136/bmj.h6816. PubMed PMID: 26797774; PubMed Central PMCID: PMC4721211.

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