地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

痔にシャワートイレ?

 

 少し間が空きましたが、痔になったらどうすればいいですか? につづきます。

 

術後にもシャワートイレ?

 Sitz bath(臀部浴)の代わりに、シャワートイレでも効果があるのでしょうか?

 参考になりそうな研究がいくつかありましたので、ご紹介いたします。意外にも新しい研究です。

ランダム化比較試験(Hsu, 2009年) *1

研究デザイン

 痔核の術後患者に温水スプレー法(10分間)を使用すると、臀部浴(10分間)に比べて痛み、違和感(灼熱感や掻痒感)、衛生、利便性、全般性満足度は改善するか、をvisual analog scaleにて評価検討したランダム化比較試験。

 

主な結果

 保存的治療で改善がみられない痔核(grade IIIまたはIV)の術後患者120人(28-75歳、平均48歳)が対象。脱落なし。
 両群で痛み、違和感、衛生については有意差がなかった。しかし、温水シャワー群では利便性、全般性満足度が高かった。
 なお、4週間後の創部の治癒は温水スプレー群 90%、臀部浴群93%であり、術後合併症に有意差はなかった。

 

 手術後の患者を対象にしたランダム化比較試験です。

 温水シャワーは臀部浴と症状や術後経過には差がなかったようですが、やはり利便性や満足度は高くなっています。

 術後患者という条件ではありますが、この結果を見る限りでは、温水シャワーは臀部浴と遜色ない効果が期待できそうに思えます。

 

 それでは健常人ではどうでしょうか。こちらの研究をどうぞ。

前後比較研究(Ryoo, 2015年) *2

 ボランティアの健常人40人について、自動洗浄便座(electric bidet)を使用すると、従来の臀部浴に比べて、使用前、使用3分後の肛門管静止圧は同様に低下するかを検討した前後比較研究。

 肛門管静止圧(使用前→使用3分後)は以下のとおり。

  • 自動洗浄便座:90.2 ± 24.6mmHg (100%)→71.3 ± 23.4mmHg (78.2%)
  • 臀部浴:88.1 ± 16.8mmHg (100%)→ 69.6 ± 19.8mmHg (78.1%)

 

 臀部浴に比べて自動洗浄便座使用後でも肛門管静止圧は同等に下がっていた、ということがわかりました。

 こちらは症状を検討した研究ではなく、圧力を測定するという、いわゆる代用のアウトカム研究です。

 

これから何がわかるか?

 シャワートイレで痔の症状がどの程度改善するか、について直接検討した研究はまだないようでした。

 痔の術後患者では臀部浴と同じような効果がみられること、健常人で臀部浴と同等の肛門管静止圧低下が認められることから、痔にも効果が期待できるかもしれない、ということになるでしょう。

 害もなさそうですから、デリケートなお尻には、ぜひお試しあれ。

 

*1:Hsu KF, Chia JS, Jao SW, Wu CC, Yang HY, Mai CM, Fu CY, Hsiao CW. Comparison of clinical effects between warm water spray and sitz bath in post-hemorrhoidectomy period. J Gastrointest Surg. 2009 Jul;13(7):1274-8. doi: 10.1007/s11605-009-0876-9. Epub 2009 Apr 1. PubMed PMID: 19337777

*2:Ryoo SB, Oh HK, Han EC, Song YS, Seo MS, Choe EK, Moon SH, Park KJ. Comparison between a new electronic bidet and conventional sitz baths: a manometric evaluation of the anal resting pressure in normal healthy volunteers. Tech Coloproctol. 2015 Sep;19(9):535-40. doi: 10.1007/s10151-015-1350-1. Epub 2015 Jul 30. PubMed PMID: 26223798.

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