便培養検査でカンピロバクターが検出されました。その結果を見ながら、こんな話題になりました。
カンピロバクターのあとには、ギランバレー症候群に注意しないと。
代表的な合併症
カンピロバクター感染後のギランバレー症候群(Guillain Barré syndrome)はどの程度発症があるのでしょうか。検索でヒットしたメタ分析をひとつご紹介したいと思います。
メタ分析(Keithlin, 2014年) *1
カンピロバクターのあとに、どのような合併症がおこりうるのでしょうか。このメタ分析について紹介する前に、まずはこの点を確認しておきたいと思います。
- reactive arthritis (ReA)
- Reiter's syndrome (RS)
- haemolytic uraemic syndrome (HUS)
- irritable bowel syndrome (IBS)
- inflammatory bowel disease (IBD)
- Guillain Barré syndrome (GBS) or Miller Fisher syndrome (MFS)
そうでしたか。ぼくは普段、ほとんど自然治癒する急性胃腸炎では、ここまでの合併症を念頭に置くことはありませんでしたが、認識を改めたいと思います。
また、むしろ上記のような新規発症の際には、よく先行感染の病歴を聞いておく必要があるでしょう。
そこで、このメタ分析を見ていきましょう。
研究の概要
カンピロバクターに感染した人のうちで、慢性合併症を発症する頻度はどれほどか、について検討した観察研究のシステマティックレビュー+メタ分析。
主な結果
31研究が該当 *2。カンピロバクター感染後の発症は、
- 反応性関節炎 2.86% (95% CI 1.40% - 5.61%, I(2) = 97.7%)
- 過敏性腸症候群 4.01% (95% CI 1.41% - 10.88%, I(2) = 99.2%)
- ギランバレー症候群 0.07% (95% CI 0.03% - 0.15%, I(2) = 72.7%)
1万人に7人
個々の観察研究の結果にばらつきがあるようですが、ギランバレー症候群は0.07%と非常にまれでした。
ギランバレー症候群のうち、1/3にCampylobacter jejuni感染が認められる、と報告されています。先行感染は6週間以内とされ、ギランバレー発症までには時間がかかるようです。注意しておきたいと思います。
さらに、合併症では反応性関節炎や過敏性腸症候群の頻度の高さも気になります。
カンピロバクターは胃腸炎が治ったあとにも注意せよ、ということでしょう。
*1:Keithlin J, Sargeant J, Thomas MK, Fazil A. Systematic review and meta-analysis of the proportion of Campylobacter cases that develop chronic sequelae. BMC Public Health. 2014 Nov 22;14:1203. doi: 10.1186/1471-2458-14-1203. Review. PubMed PMID: 25416162; PubMed Central PMCID: PMC4391665.
*2:研究数の内訳は、反応性関節炎 20、ライター症候群 2、過敏性腸症候群 9、炎症性腸疾患 3,ギランバレー症候群 8、ミラーフィッシャー症候群 1、溶血性尿毒症症候群 3