地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

リハビリには効果があるのでしょうか?

 

 腰部脊柱管狭窄症と診断された女性。間欠性跛行(歩いていると痛みなどで歩けなくなり、休みとまた歩けるようになること)などの症状が強くなってきたため手術を希望されていましたが、整形外科の主治医から手術は勧められず、保存的治療の方針となっています。

「手術はできないって言われたので、一生懸命リハビリしているのですが、リハビリって効果があるんでしょうか?このまま続けていてもよくなるのか、心配です。」

 

 このようなご心配でした。医学的にはどうなのか、調べてみることにしました。まず問題を定式化しておきましょう。

P▶ 腰部脊柱管狭窄症の人が、E▶ リハビリを行うと、C▶ 手術や他の治療に比べて、O▶ 自覚症状が改善するか?

 

 情報源はDynaMed。すぐにこの問題にぴったりの論文が見つかりました。

システマティック・レビュー(Ammendolia, 2013年) *1

P▶ 間欠性跛行がみられる腰部脊柱管狭窄症の人に
E▶ 手術ではない治療を行うと
C▶ プラセボ、治療なし、他の手術ではない治療、手術、に比べて
O▶ 歩行能力、痛みの程度、機能、QOL、全般的改善度は改善するか
T▶ 治療、システマティック・レビュー

《結果》★★☆
21研究(対象者1851人)
理学療法については4つの小規模研究のみ。これら全ての研究で、理学療法による歩行能力の改善はみられなかった。
質の低い1研究では、運動すると治療なしに比べて下肢痛が少ないという結果となった。

 

 腰部脊柱管狭窄症に対する理学療法の研究は、あまりなされていなかった、ということがわかりました。研究されていても、いい結果ではなかったようです。

 痛みが少なくなるという結果の研究を見ておきましょう。アブストラクトから。

ランダム化比較試験(Goren, 2010年) *2

P▶ MRIで確認された跛行を伴う腰部脊柱管狭窄症の患者に
E▶ 腰部・下肢・腹部の筋力強化運動(ストレッチ、サイクリングを含む)のみ、または超音波療法の併用を3週間行うと
C▶ 治療なしに比べて
O▶ 痛み(VAS)、障害の程度、運動機能、痛み止めの使用量は改善するか
T▶ 治療、ランダム化比較試験

《結果》★★★ 
 45人(平均52歳、32人が女性)を3群に分けて検討。 下肢痛(VASスコア)はC群に比べて、

 E(運動+超音波)群 -1.47 +/- 3.02
 E(運動のみ)群 -2.47 +/- 3.75
 障害スコアもC群に比べてE群では有意に改善。 E(運動+超音波)群とE(運動のみ)群には有意差なし。 痛み止めの使用量はE(運動+超音波)群で有意に少ない。

 

 3週間という短期の効果を検討した小規模のランダム化比較試験です。歩行などの機能改善にはつながらないようですが、短期的な痛みの改善はみられる可能性がある、という結果になるでしょう。

 長期的に効果があるかどうかについては、わかっていない(おそらくあまり効果が期待できない)ということになるでしょう。

 

*1:Ammendolia C, Stuber KJ, Rok E, Rampersaud R, Kennedy CA, Pennick V, Steenstra IA, de Bruin LK, Furlan AD. Nonoperative treatment for lumbar spinal stenosis with neurogenic claudication. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Aug 30;8:CD010712. doi: 10.1002/14651858.CD010712. Review. PubMed PMID: 23996271.

*2:Goren A, Yildiz N, Topuz O, Findikoglu G, Ardic F. Efficacy of exercise and ultrasound in patients with lumbar spinal stenosis: a prospective randomized controlled trial. Clin Rehabil. 2010 Jul;24(7):623-31. doi: 10.1177/0269215510367539. Epub 2010 Jun 8. PubMed PMID: 20530650.

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