地域医療日誌

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コエンザイムQ10で心血管死亡が半減?

 
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質問

 コエンザイムQ10は体にいいでしょうか?

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これまでは効果なし

 サプリメントの成分としてよく使われる、コエンザイムQ10。これまでのコエンザイムQ10に関する臨床研究では、ろくな効果がみられていませんでした。

 まあ、コエンザイムQ10には大した効果がなかろう、というのが一般的な医学的見解だったろうと思います。

 

 ところが、2015年にコエンザイムQ10の評価を変えるかもしれない、衝撃的な論文が発表されています。ご紹介しておきましょう。

 

 

10年後に差が出る?

ランダム化比較試験(Alehagen, 2015年) *1

研究の概要

  健康な高齢者がコエンザイムQ10カプセル 1日200mgとセレン酵母錠剤 1日200μgを4年間服用すると、プラセボに比べて10年後の心血管死亡が少なくなるか、を検討したランダム化比較試験。

 

主な結果

 平均78歳の高齢者443人が対象で、全例追跡。投与開始後10年での心血管死亡は以下の通り。

  • コエンザイムQ10+セレン群 46/221人(20.8%)
  • プラセボ群 86/222人(38.7%)
  • ハザード比 0.52(95%信頼区間 0.36, 0.74)

 

10年で心血管死亡が半減

 本当でしょうか?

 高齢者対象の研究で、10年で心血管死亡が48%少なくなっています。ほぼ半減です。

 研究自体は適切に行われているようですし、スウェーデンのへき地で実施されたためか、全例が追跡されています。

 10年の追跡期間ですから、この結果を追試で検証することも簡単ではないでしょう。しばらく定説となっていくかもしれません。

 

ヨーロッパ特有の効果かもしれない

 この結果から、コエンザイムQ10を全面的に推奨すべきでしょうか?

 コエンザイムQ10とセレンの合剤となっていますので、心血管死亡予防効果がコエンザイムQ10によるものなのか、セレンなのか、この両者なのかわかりませんが、そのあたりはどう考察されているのでしょう。

  導入部分から一部引用します。

The mean intake of selenium in Europe is estimated to be about 40 μg/day, whereas the estimated mean intake in the US is 134 μg/day in males and 93 μg/day in females. These inter-continental differences in selenium intake provide an explanation for inconsistent results of selenium supplementation that are reported in one Cochrane review[11]. However, there are some reports from small study samples in Europe indicating a higher mortality in those with low selenium intake[12–14]. Our research group have recently reported higher cardiovascular mortality in a community population with low plasma selenium concentration[15].

 

 ヨーロッパではセレンの摂取が少ないこと、セレン摂取が少ない地域で総死亡や心血管死亡が多いことがわかっているようです。

 さらに、セレンとコエンザイムQ10の関係についても書かれています。

Xia et al. demonstrated an interrelationship between selenium and coenzyme Q10 (ubiquinone) in the metabolic pathway to the active form of coenzyme Q10 (ubiquinol). Moreover, an adequate presence of coenzyme Q10 is needed for optimal synthesis of selenocysteine-containing enzymes[16]. Similarly, a deficiency of selenium could influence the ability to get adequate concentrations of active coenzyme Q10 in cellular compartments. Coenzyme Q10 has been shown to have effects on the endothelial function[17]. It is also known that coenzyme Q10 is a powerful anti-oxidant, mainly against lipid peroxidation[18]. Reports have shown that ubquinone also reduces inflammatory response [19] in those with diabetes [20]. It is reported that the endogenous production of coenzyme Q10 decreases after the age of 20, and the myocardial production is reduced to half at the age of 80 [21]. Thus, elderly people living in geographical areas with low selenium content in the soil and in their food may be at increased risk of heart disease and premature death.

 

 セレンが十分にないとコエンザイムQ10の抗酸化作用が十分に発揮されない、ということでしょう。

 ヨーロッパではセレンの摂取が少ないため、効果が出やすいのかもしれません。

 

 日本人のセレン平均摂取量は1日100μgとされており、セレン欠乏となることはあまりないようです。

 日本で同様の効果が期待できるかどうかは、未知数といえるでしょう。

 

これからどうするか?

 コエンザイムQ10とセレンが含まれるサプリメントには、心血管死亡予防効果があるかもしれません。

 日本人にはどの程度の効果があるかわかりませんが、少なくとも効果がない、と断言はできなくなったことは明らかです。

 

 今後の臨床研究に期待しながらも、害がないものについては許容するスタンスでいきたいと思います。

 

*1:Alehagen U, Aaseth J, Johansson P. Reduced Cardiovascular Mortality 10 Years after Supplementation with Selenium and Coenzyme Q10 for Four Years: Follow-Up Results of a Prospective Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial in Elderly Citizens. PLoS One. 2015 Dec 1;10(12):e0141641. doi: 10.1371/journal.pone.0141641. eCollection 2015. PubMed PMID: 26624886; PubMed Central PMCID: PMC4666408.

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