地域医療日誌

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やはり抗精神病薬は安全ではなかった?

 
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 せん妄の治療には抗精神病薬がよいですか? - 地域医療日誌 につづきます。

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セロクエルも?

 抗精神病薬の話題のついでに、2016年にクエチアピン(セロクエル)のシステマティックレビューが発表されていますので、ご紹介しておきます。

システマティックレビュー(2016年, El-Saifi) *1 

研究の概要

 高齢者がクエチアピン(セロクエル)を服用すると、プラセボに比べて有害事象は多くなるのか、を検討した、害についてのシステマティックレビュー。

 

主な結果

 69研究が採用基準を満たした。観察研究 36研究(52%)、ランダム化比較試験 11研究(16%)。75%は適応外使用の研究。

 最も多い有害事象は傾眠傾向(25-39%)、めまい(15-27%)、頭痛(10-23%)、起立性低血圧(6-18%)、体重減少(11-30%)であった。

 死亡については10研究で報告がある。

 パーキンソニズムがある患者において、クエチアピン使用群では非使用群に比べて死亡が多い、という症例対照研究(Marras, 2012)がある。

  • 死亡のオッズ比 1.8(95%信頼区間 1.1, 3.0)

 認知症患者において、クエチアピン使用群では非使用群に比べて死亡は多い傾向にある、という後向きコホート研究(Rossom, 2010)がある。

  • 死亡のハザード比 1.2(95%信頼区間 0.7, 1.8)

 

セロクエルで死亡が多い

 観察研究からは、クエチアピンで死亡が多くなる傾向があることが示唆されています。これはちょっと気になる結果です。

 前の記事 でもご紹介しましたが、抗精神病薬では死亡が多くなるという報告があります。せん妄では抗精神病薬に頼らざるをえない場面もありますが、効果の面からも有害事象の面からも、使いにくい薬となっていることは確かです。

 

原因検索や非薬物療法を試みるのが基本

 せん妄の治療の基本は、まずは原因となりうる痛み、感染症、低酸素、代謝異常、低栄養などの医学的問題を解消すること。そして、誘因となる薬剤(抗コリン薬、ベンゾジアゼピン系、オピオイドなどが代表的)を中止・減量すること。

 さらに、非薬物療法を試みることです。

 今置かれている状況を把握し、安全に活動できるように環境整備を行うこと、睡眠覚醒リズムを戻すように支援すること、などです。

 こういった方法を駆使しながら、不用意に薬剤を投入しないよう配慮していきたいものです。

 

つづく 

薬でせん妄を予防できますか? - 地域医療日誌

*1:El-Saifi N, Moyle W, Jones C, Tuffaha H. Quetiapine safety in older adults: a systematic literature review. J Clin Pharm Ther. 2016 Feb;41(1):7-18. doi: 10.1111/jcpt.12357. Review. PubMed PMID: 26813985.

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