地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

薬でせん妄を予防できますか?

 やはり抗精神病薬は安全ではなかった? - 地域医療日誌 につづきます。

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入院中のせん妄予防

 入院時のせん妄の有病率は11-33%、入院中のせん妄の発症は高齢者の3-56%との報告もあり、入院中のせん妄は頻度の高い症候です。

 

 入院中のせん妄の予防に薬の効果があるでしょうか。ラメルテオン(ロゼレム)の効果を検討した日本人のランダム化比較試験を確認しておきましょう。

ランダム化比較試験(Hatta, 2014年) *1

研究の概要

 重篤な健康問題で集中治療室や急性期病棟に入院した65-89歳の患者がラメルテオン 8mg/日を7日間服用すると、プラセボに比べてせん妄の発症(DSM-4)は少ないか、を検討したランダム化比較試験(PROBE)。

 

主な結果

 67人をラメルテオン群33人、プラセボ群34人にランダム割り付け。脱落なし。

 せん妄の発症はラメルテオン群 1人/33人(3%)、プラセボ群11人/34人(32%)、相対危険 0.09(95%信頼区間 0.01, 0.69)とラメルテオン群で少ない。ラメルテオンによる有害事象の増加はみられなかった。

 

ロゼレムでせん妄が91%少ない

 入院患者のせん妄予防についての研究ですが、ラメルテオン群で3%とかなり発症が少なくなっています。プラセボ群に比べて91%少なく有害事象もない、となると、ぜひとも使いたくなります。

 

 対象患者には脳卒中、感染症、骨折、心不全などが挙げられています。こうした急性期疾患で入院した場合にはよいでしょう。

 

 診療所で働くぼくの関心としては、がん、特に終末期の緩和ケアや在宅医療の場において、ラメルテオンが有効なのかどうか、知りたいところです。

 もしこうした場面でも有用ということであれば、使ってみたいのですが。

 

*1:Hatta K, Kishi Y, Wada K, Takeuchi T, Odawara T, Usui C, Nakamura H; DELIRIA-J Group.. Preventive effects of ramelteon on delirium: a randomized placebo-controlled trial. JAMA Psychiatry. 2014 Apr;71(4):397-403. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2013.3320. PubMed PMID: 24554232.

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