地域医療日誌

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スマホは睡眠に影響しますか?

 
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スマホ依存ポスターが議論に

 日本小児科医会と日本医師会が発表した「スマートフォンを使うと学力が低下する」というポスターが話題になりました。

www.med.or.jp

 今回は、議論になっている学力低下についてではなく、スマートフォン・携帯電話・タブレットなどのポータブルデバイス(portable mobile and media devices)が小児の睡眠に与える影響についての論文をご紹介したいと思います。

メタ分析(Carter, 2016年) *1

研究の概要

 6-19歳の学童期の小児が、就寝時にポータブルデバイスを週3回以上使用すると、使用しないまたは週3回未満の使用に比べて、睡眠が不十分に(睡眠時間が短く、睡眠の質が低く、昼間の眠気が多く)なるか、を検討したシステマティックレビュー+メタ分析。

 

主な結果

 2011年1月から2015年6月15日までに発表されたランダム化比較試験、コホート研究、横断研究が検索対象で、20の横断研究が採択。

 睡眠時間(7研究の結果が統合)については、小児は1日10時間未満、思春期は1日9時間未満の短い睡眠時間の人は、使用群 45.4%、未使用群 31.5%、オッズ比 2.17(95%信頼区間 1.42, 3.32)と就寝時ポータブルデバイス使用群で睡眠時間が短い人が多い。 

 睡眠の質(5研究の結果が統合)については、入眠困難・中途覚醒・すっきりしない睡眠などの睡眠の質が低い人は、使用群 52.1%、未使用群 34.4%、オッズ比 1.46(95%信頼区間 1.14, 1.88)と就寝時ポータブルデバイス使用群で睡眠の質が低い人が多い。

 昼間の眠気(2研究の結果が統合)については、使用群 21.3%、未使用群 6.7%、オッズ比 2.72(95%信頼区間 1.32, 5.61)と就寝時ポータブルデバイス使用群で昼間の眠気が多い。

 

スマホで睡眠の量も質も低下

 複数の横断研究のメタ分析から、ポータブルデバイスを就寝時に使用すると、睡眠の量や質が低下する可能性が示唆されました。

結果の解釈には注意が必要

 この研究は横断研究のメタ分析ということもあり、解釈には注意が必要です。

 ポータブルデバイスの使用状況(曝露)と睡眠(アウトカム)はいずれも質問票などの自己評価によるものである、交絡因子が考慮されていない、時間軸が考慮されていない横断研究のため因果関係を特定することができない、ランダム割付ではないため両群のばらつきの可能性を否定できない、などの限界があります。

 いずれにしても、本研究の結果から、小児が就寝時にポータブルデバイスを使うと睡眠が不十分になる可能性は示唆されるものの、断定することはできません。

 この仮説を検証するためには、ランダム化比較試験などの介入研究にが必要となりますが、実際にはちょっと難しいでしょう。小児にポータブルデバイスを毎晩就寝前に使ってもらう、という介入が現実的ではないからです。

研究が追いついてない

 この論文の導入にはこのように書かれています。

However, the association between media device use and poor sleep outcomes has been underexplored because the speed at which these devices have been developed has outpaced research capabilities. A previous literature review reported a suspected association between screen time and poor sleep outcomes and stimulated debate to assess the quality of evidence and quantify the magnitude of the potential relationship. To our knowledge,we present the first systematic review to quantify the influence of media device use on sleep outcomes in a meta-analysis.

 

 デバイスの使用が睡眠に与える影響についてはまだ十分研究がなされていません。なぜなら、研究能力よりもデバイスの進化が早く、研究が追いつかない状況になっている、と書かれています。

 

 睡眠という短期のアウトカムですらこのような状況ですから、きっと学力というアウトカムの研究はさらに知見が少ないのではないかと推察します。

 

  科学的にはっきりさせることができない、なかなか悩ましい問題なのではないでしょうか。

 

*1:Carter B, Rees P, Hale L, Bhattacharjee D, Paradkar MS. Association Between Portable Screen-Based Media Device Access or Use and Sleep Outcomes: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2016 Dec 1;170(12):1202-1208. doi: 10.1001/jamapediatrics.2016.2341. PubMed PMID: 27802500.

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