地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

残薬はどのくらいあるのか?

 

 処方されても使われなかった薬、いわゆる残薬は、国内でどれくらいあるのでしょうか。

 

 日数通り処方していても、薬がかなり余っているとのことで、調整することはしばしばあります。本人から申告してもらえればわかるのですが、きちんと内服していると思い込んで、ずっと内服していない薬の処方がつづき、自宅の残薬を多量に廃棄、ということもあるようです。

 

 医療費(薬剤費)は限られた資源ですから、無駄なく有効活用したいところです。ネットで情報収集してみました。

「入退院を繰り返したり、2か所以上の病院・診療所から薬をもらうと分からなくなるケースが多い」
(残薬はなぜ発生するのか|薬剤師さんのためのここがポイント医療政策)

 

 2種類以上の処方では、半数以上に飲み残し経験があるそうです。予想以上に多いのかもしれません。

≪処方薬の飲み残しに関する意識・実態調査≫生活習慣病患者の半数が処方された薬を飲み忘れ合併症の発症リスクを認識しているのは4人に1人

  • 薬を飲みきれずに余らせたことがある患者は30.3%に達する
  • 今年の4月以降に「残薬の確認」を受けたと答えた患者が24.0%に止まっている現状
  • 一方、薬剤師は91.0%が「残薬の確認」を行っていると回答

 

 残薬が発生するのは、約3割というところでしょうか。残薬確認については、患者と薬剤師の回答に隔たりがあるところも注目です。


4月から医療費が変わる!おくすり手帳は持つべきか、持たざるべきか?|男の健康|ダイヤモンド・オンライン

処方されても飲まずに捨てられている薬は、年間400億円にも上ると推計されている。

 

 残薬は年間400億円という具体的な推計があるようです。

 

節薬バッグ

 

 残薬を減らす取り組みとして、福岡市薬剤師会の取り組みが効果をあげているようです。


節薬バッグ運動 | 福岡市薬剤師会

【福岡市薬剤師会】「節薬バッグ運動」で成果‐総額の8割以上を有効活用 : 薬事日報ウェブサイト

 薬の飲み忘れなどにより自宅に溜まった残薬をチェックする「節薬バッグ運動」をトライアルで展開。残薬総額の約8割以上を有効活用するなど、薬剤師の介入による残薬掘り起こしと薬剤費削減に向けた成果を上げている。

 

 残薬の8割を有効活用とは、なかなか効果的な取り組みだと思います。

 詳細はこちらの論文 *1 をごらんください。

CiNii 論文 -  節薬バッグ運動 外来患者の残薬の現状とその有効活用による医療費削減の取組み

処方箋1枚当たりの削減単価:2,700円/枚

平成23年度処方箋枚数:772,890,000枚

残薬回収率:15.8%

全国試算を行うと、年間約3,300億円の薬剤費削減の可能性が示唆。これは、平成23年度の総医療費の約0.9%、調剤医療費の約5.1%に相当する。

 

 かなり大きな削減額の試算が出ています。これは採用したほうがよいかもしれません。導入を検討したいと思います。

 

残薬はどのくらいあるのか?

  • 飲み残し経験は約3~5割程度に発生している。
  • 処方されても飲まずに捨てられる残薬は年間約400億円。
  • 福岡市の節薬バッグの取り組みは効果を上げており、年間約3,300億円の薬剤費削減の可能性がある。

 

*1:小柳香織、窪田敏夫、小林大介ほか. 節薬バッグ運動 外来患者の残薬の現状とその有効活用による医療費削減の取組み. YAKUGAKU ZASSHI 2013;133(11):1215 -1221

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