地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

「困ってるひと」をわかってあげられますか?

 

 本の紹介です。

 闘病記に分類される本はたくさん出版されていますが、今回は著者の講演を拝聴する機会があり、手にとってみました。

([お]9-1)困ってるひと (ポプラ文庫)

([お]9-1)困ってるひと (ポプラ文庫)

 

 難病「筋膜炎脂肪織炎症候群」を患ってしまった大学院生が、診断から入院治療、そして退院に至る体験をエッセイとしてつづっています。

 

 ちなみに、この筋膜炎脂肪織炎症候群(Fasciitis pannicultis syndrome)、なかなか確定診断がつかなかったのは無理もありません。PubMed検索では論文が31件のみ。非常にまれな症候群です。

 

患者の立場になって考えなさい

 

 医療者は、この言葉を呪文のように繰り返し繰り返し学びます。原理原則はもっともなことではあります。

 

 しかし、なかなか当事者にならないとわからない苦悩は、たくさんあるに違いありません。難病にかかってしまうとはどういうことか・・・いくら考えてみたところで、経験してみないと想像が及ばないこともあるでしょう。

 支援者がどんなに時間をかけて真摯に話を聞いてあげたとしても、この溝を埋めることは困難なことなのかもしれません。

 

 以前、ALS患者家族の闘病記を読んだ時にも、同じようなことを感じてブログ記事にしています。

www.bycomet.com

逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)

逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)

 

当事者のことはわかりえない

 

 他人のことは、なかなかわからないものです。

 これは、わからないから諦めモードという意味ではなく、わかりえないということを出発点に、医療者として謙虚に向き合いたい、と思います。

 

「困ってるひと」から印象的な部分を抜粋引用します。

 いつも先生たちは、「よくなっています」と繰り返し言う。一辺倒に言い続ける。これはお医者さんという生き物の癖なのかもしれない。

 わたしは正直、百万回以上の「よくなっています」に辟易していた。

 

 医療者には誰しも心当たりがあるに違いありません。耳の痛い話もありますが、当事者の声は示唆に富んでいます。

 ぜひご一読を。

  

「困ってるひと」をわかってあげられますか?

当事者には困っていることがたくさんある。

当事者の苦悩を医療者がわかることはとても難しい。

わかりえないという出発点から謙虚に向き合いたい。

 

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