地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

自宅で最期を迎えるには

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在宅医療はどうなのか?

 久しぶりに在宅医療のエビデンスを確認してみました。以前紹介したのは2008年のこちらの記事でした。

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 在宅緩和ケアは生存期間が短くなるが、患者満足度は高く、医療費も安いという結果でした。

 

 当時、まだぼくは病院医療真っ只中。在宅医療を受けていても最期は病院に搬送されてくる状況に、ちょっと疲弊していた頃でした。

 10年も経たずに本格的に在宅緩和医療に関わるようになっているとは、夢にも思わなかったことでしょう。

 

 さて、在宅医療についてはいいデータもあったかと記憶しておりますが、コクランのメタ分析が発表されていましたので、まずご紹介しておきます。

メタ分析(Shepperd, 2016年) *1

研究の概要

 終末期医療が必要な18歳以上の患者が自宅で終末期ケアを受けると、病院やホスピスでのケアに比べて、自宅で最期を迎えられるか、または予定外の入退院が少なくなるか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 採用基準に該当した研究は4研究(3つのランダム化比較試験と1つのクラスターランダム化比較試験)。

 自宅で最期を迎えられた人(3研究、652人が対象)はリスク比 1.33(95%信頼区間 1.14, 1.55)と自宅ケア群で多かった。

 予定外の入院(4研究、823人が対象)についてはリスク比 0.93(95%信頼区間 0.82, 1.05)と自宅ケア群でやや少ない傾向がみられた。

 

自宅ケアを受けると自宅で最後を迎えやすい

 末期がん患者であっても、自宅で終末期ケアを受けたほうが自宅で最後を迎えられやすい、という結論となっています。

 

 以前紹介した記事で取り上げたBrumleyらの2007年のランダム化比較試験も含まれていました。

 このメタ分析自体が、2011年のメタ分析の改訂版となっておりましたが、追加された研究はありませんでした。

 なかなかこうした研究をランダム化比較試験で行うことは難しいように思えます。今後もエビデンスがどんどん出てくる可能性は低いでしょう。

 

 さて、自宅ケア群ではどのようなケアを受けていたのでしょうか。本文から一部引用しておきます。 

The intervention in three trials was multidisciplinary care, which included specialist palliative-care nurses, family physicians, palliative-care consultants, physiotherapists, occupational therapists, nutritionists, and social care workers (Brumley 2007; Hughes 1992;Jordhøy2000).In one trial the focus of the intervention was on nursing care, which was only available for the last two weeks of life (Grande 2000). In three trials, nursing care was available for 24 hours if required; in the trial conducted in Norway the smallest urban district did not have access to 24-hour care. The intervention evaluated by Jordhøy 2000 was hospital-based at the Palliative Medicine Unit, which provided community outreach.

 

 自宅での終末期ケアといっても、研究によってまちまちです。結果も異質性の高いものになることは避けられないでしょう。

 

 患者満足度や予後は一次評価項目ではありませんでしたが、検討されています。要約すると、以下の通りです。

  • 自宅ケア群で患者満足度はわずかに高まる可能性がある。(2研究)
  • 1か月時点では病院ケア群よりも自宅ケア群で満足度が高かったが、6か月時点ではその差が消失した研究もある。(Hughes 1992)
  • Brumley 2007でも自宅ケア群で30日での満足度が高かったが、60日では差がはっきりしなかった。
  • 6か月後での死亡率に差があるかどうかははっきりしない。
  • 生存期間にはほとんど差がない。

 

 1か月程度では自宅で終末期ケアを受けるほうが満足度が高いようですが、長くなるとつらくなる、ということかもしれません。

 なかなかむずかしいところです。

 

*1:Shepperd S, Gonçalves-Bradley DC, Straus SE, Wee B. Hospital at home: home-based end-of-life care. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Feb 18;2:CD009231. doi: 10.1002/14651858.CD009231.pub2. Review. PubMed PMID: 26887902.

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