地域医療日誌

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地域医療日誌

変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

子宮頸がん検診には効果がありますか?(1)

2. 予防についての疑問
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 子宮頸がん、特に検診について少し確認してみましたので、ここに備忘録としてまとめておきます。

 

検査すればいいというわけではない

 がん検診と言えども、治療と同じくどの程度の効果があるのか、どのような害があるのかについて、よく吟味する必要があります。「早期発見、早期治療」が必ずしも有益ではない場合や、デメリットがある場合があるからです。

 多くの人が誤解しているように思えますが、何でも検査で調べておけばいいというわけではない、という大前提をここでまず確認してから、先に進みたいと思います。

 

子宮頸がんの国内発生状況

 厚生労働省 *1、がん情報サービス *2の情報によると、子宮頸がんの推計患者数は以下のようになっています。

  • ヒトパピローマウイルスは、性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。しかしながら、子宮頸がんを始め、肛門がん、膣がんなどのがんや尖圭コンジローマ等多くの病気の発生に関わっていることが分かってきました。
  • 特に、近年若い女性の子宮頸がん罹患が増えていることもあり、問題視されているウイルスです。
  • 2008年は約9,800人の子宮頸がん患者の発生が推計されました。その他、尖圭コンジローマは、全国の1,000弱の医療機関で発生数を調査しており、2011年は合計で約5,200人の尖圭コンジローマ患者の発生がありました。
  • 子宮がんにかかる人は、全体として年間約21,500人で、このうち子宮頸がんが約9,800人、子宮体がんが約10,800人、どの部位か情報がない子宮がんが約900人となっています。
  • 子宮がんで亡くなる方は、全体として年間約6,100人、このうち子宮頸がんが約2,700人、子宮体がんが約2,000人、どの部位か情報がない子宮がんが約1,300人となっています。

 

 つまり、年間9,800人が子宮頸がんと診断され、年間2,700人が子宮頸がんによって亡くなっている、ということになります。

 年齢調整罹患率は人口10万人あたり10.9人となるようです。

 ここで発症者数や死亡者数だけ見て、多いとか少ないとか、そういったところにだけにとらわれないようにして、先に進みましょう。

 

RCT1件のみ!

 さて、子宮頸がん検診の効果について、調べてみることにしました。すぐに検索されたものは、2013年のシステマティックレビューです。ここに驚くべき記載がありました。

システマティックレビュー(Peirson, 2013年)*3

To our knowledge, no published systematic review has addressed the question of screening effectiveness with these outcomes, and until recently there were no randomized controlled trials (RCTs) to inform decision-making.

 

 この報告まで、子宮頸がん検診の有効性に関するシステマティックレビューはなかった、つまり、最初の報告であることが記載されています。さらに、最近までランダム化比較試験もなかったと書かれています。

 検診の有効性について検証されずに、世界中で続けられていた、ということがわかります。

 

 この論文には、当ブログと同じ様式で疑問の定式化がなされています。すばらしいです。原文のまま引用しておきます。

The PICOS (population, intervention, comparator, outcome, study design) framework for these questions was asfollows:

(P) asymptomatic women aged 15 to 70 years with a history of sexual activity,

(I) conventional cervical cytology, liquid-based cervical cytology or human papillomavirus (HPV) DNA screening tests,

(C) no screening,

(O) cervical cancer mortality and incidence of invasive cervical cancer, and

(S) RCTs and observational studies with comparison groups.

 

 PECOT(patients/participants, exposure, comparison, outcome, type of question/study design)ではなく、PICOSとなっていますが、意味合いは同じです。

 結果を見ていきましょう。ここからは従来の形式で。

《結果》※※※
27報告(24研究)。そのうちランダム化比較試験はひとつのみ

  • 対象者数97,672人。追跡期間8年。
  • 検診なし群:子宮頸がん死亡 100万人あたり2,033人
  • 検診群:子宮頸がん死亡 100万人あたり1,330人(95%信頼区間 964, 1,834)
  • 相対危険 0.65(95%信頼区間 0.47, 0.90)

 

 子宮頸がん検診によって子宮頸がん死亡が35%少ない、という結果となっています。子宮頸がん検診は有効である、というひとつの根拠になるでしょう。 

  

 この論文の詳細情報がこちらに公開されています。カナダの The Canadian Task Force on Preventive Health Care (CTFPHC) です。

canadiantaskforce.ca

 カナダもいい仕事していますね。

 さきほどの部分を原文で確認しておきましょう。

One recent cluster randomized trial of moderate GRADE quality addressed KQ 1. Fifty-two villages in India, with a total of 131,746 healthy women ages 30 to 59 years, were randomly assigned to one of four groups. These groups received screening by a single lifetime HPV test (n = 34,126), cervical cytology (n = 32,058) or visual inspection by acetic acid (n = 34,074), or standard care which involved giving women information on how to seek screening at local hospitals (n = 31,488). In this review we focus on study results that address the two most relevant screening modalities for the Canadian context which are conventional cytology and HPV testing. Compared to no screening, a single lifetime screen by either HPV or cytology significantly reduced the eight year follow-up mortality rate by 35% (RR 0.65, 95% CI 0.47–0.90, p = 0.01). Considering the tests separately, a single lifetime screen by HPV test significantly reduced eight year follow-up mortality (age adjusted HR 0.52, 95% CI 0.33–0.82, p = 0.005); whereas a single lifetime cytology test had a positive but not significant impact on eight year mortality (age adjusted HR 0.89, 95% CI 0.62–1.28, p = 0.53).

 

 この研究はインドの42の村で行われた、クラスターランダム化比較試験でした。

 生涯1回のヒトパピローマウイルス(HPV)検査では子宮頸がん死亡が年齢調整ハザード比で0.52と有意に少なかったようです。

 ところが、生涯1回の細胞診検査では年齢調整ハザード比で0.89と有意ではなかった、とあります。

 

 え?細胞診検査では有意ではない?

 

 なんだかまた雲行きが怪しくなってきました。こんなことばかりで不思議です。

 効果があると言われている子宮頸がん検診の、それも細胞診検査でちゃんと効果が立証されてないとなると、すっきりしませんし、ちょっと困ったことになりそうです。

 

 やはりここは、原著論文を確認したほうがよいです。読んでみることにしました。

 

つづく

*1:ヒトパピローマウイルス感染症とは|厚生労働省

*2:子宮頸がん 基礎知識:[がん情報サービス]

*3:Peirson L, Fitzpatrick-Lewis D, Ciliska D, Warren R. Screening for cervical cancer: a systematic review and meta-analysis. Syst Rev. 2013 May 24;2:35. doi: 10.1186/2046-4053-2-35. Review. PubMed PMID: 23706117; PubMed Central PMCID: PMC3681632.

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