地域医療日誌

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日本人の研究からわかるコレステロールのリスクの実態

 
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コレステロールはリスクになりますか?

 コレステロール値を下げることは、冠動脈疾患などの心臓病の発症および死亡を予防する目的で行うものです。

 日本(とくに女性)は先進国の中で冠動脈疾患が最も少ない国のひとつですが、コレステロール値はどの程度のリスクとなるのでしょうか。

 日本人の代表的な研究を確認してみましょう。

NIPPON DATA 80 コホート研究(Okamura, 2007年) *1

研究の概要

 厚生労働省の循環器疾患基礎調査(1980年)に参加した30歳以上の日本人のうちで、総コレステロール値が高い人は、基準値に比べて、心血管死亡・総死亡は多いかを検討した、予後に関するコホート研究。

 

主な結果

 日本人9,216人(男性4,035人、女性5,181人、平均50.0歳)を対象に、17.3年間追跡。

 総コレステロール値 160-179mg/dLに比べて260mg/dL以上では、男女あわせた総死亡、心血管死亡はいずれも多い。

  • 総死亡のハザード比は1.36(69人、95%CI: 1.05, 1.77)
  • 心血管死亡ハザード比は1.90(34人、95%CI: 1.29, 2.79)

 男女別、総死亡の実数と調整ハザード比をまとめて示す。

f:id:cometlog:20171129214510p:plain

 

ほとんど有意差がなかったのがコホート研究の実態

 論文で男女あわせた全体でのリスクの高さ(調整ハザード比)を確かめると、総死亡や心血管死亡についてはほとんど統計学的有意差がみられなかったことが、結果から読みとれます。

 総コレステロール値が260mg/dL以上で「かろうじて」有意になっていますが、男女別にするとそれもはっきりしなくなります。

 少なくとも、日本人では総コレステロール値260mg/dLまでは総死亡・心血管死亡に差があるとは言えないでしょう。

 

コレステロールが低い人のほうが死者数が多い

 さらにデータをよく確認してみましょう。

 総死亡の実数に着目します。亡くなった人数で最も多かったのは、総コレステロール値が160mg/dL未満の最も低いグループでした。

 リスクの高さ(調整ハザード比)でみると、総コレステロール値が高い人のほうが相対的なリスクが高くなっているのは確かです。しかし、総コレステロール値が低い人の総死亡者数が多く、集団全体のインパクトは大きいことがわかります。

 

 総コレステロール値が低い人の総死亡が多くなったことについて、論文の考察ではC型肝炎による肝疾患死亡が多いことを理由に挙げています。肝疾患死亡を除外してみると有意差が消失する、ということのようです。

 実数では、肝疾患死亡は男女あわせて41人、総死亡全体では311人となっています。

 これですべて説明ができるのかは、ちょっと疑問です。

 

 つづきます。

むしろコレステロールが低いほうが危険 - 地域医療日誌

*1:Okamura T, Tanaka H, Miyamatsu N, Hayakawa T, Kadowaki T, Kita Y, Nakamura Y, Okayama A, Ueshima H; NIPPON DATA80 Research Group. The relationship between serum total cholesterol and all-cause or cause-specific mortality in a 17.3-year study of a Japanese cohort. Atherosclerosis. 2007 Jan;190(1):216-23. Epub 2006 Mar 10. PubMed PMID: 16529754.

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