地域医療日誌

変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

「ラスト・ソング」が終末期の患者を癒すのではない

 
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 癒しとは何か、医療と癒しの違和感について考えているときに偶然見かけた記事について 医療文脈からの卒業 - 地域医療日誌 に書きました。今回はこのつづきです。

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音楽療法士と医療の癒し

 音楽療法士 佐藤由美子さんの最新刊が届くまでの間に、彼女の前作である ラスト・ソング (一般書) をKindleで読んでみました。

 ちょうど感性のアンテナが立っていたせいか、感傷的になりなかなか読み進められませんでした...。

 

 電子書籍で購入したことを後悔しています。本で読みたかった。

 音楽療法士さんにはこれまでお会いしたことがなかったのですが、医療現場でどのような活動をされているのか、理解できました。

 そしてその役割の重要性について、今はよく理解できます。

 

緊迫した最期にラスト・ソングという癒し

 緊迫した終末期の雰囲気、これは病院であっても自宅であっても同じです。重苦しい空気をどうすることもできず、お亡くなりになってから安堵の表情を浮かべるご家族。このような場面にはよく遭遇します。

 人生最期のお別れの場面が重苦しい雰囲気では、やりきれない気持ちになります。でも、それをどうすることもできないもどかしさを、いつも感じています。

 

 佐藤さんは、そのような場面で切り込んでいきます。もちろん、音楽の力、癒しの力があるからに他ならないでしょう。

 しかし、音楽療法とは、単に音楽を奏でて元気づけるものではないのです。

 セッションを通じてその人について深く知り、心を通じ合わせ、音楽の力を借りながら癒していく。

 まさしく、医療現場に欠けている「癒しの役割」を果たしているといえるでしょう。

 

 印象深いシーンをいくつか引用させていただきます。「死という鏡ー"千の風になって"」 *1 の一節から。

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患ったスティーブさんのコトバです。

「病気になって初めて、人生においてなにが本当に大切かに気づけたんだ。今まではビジネスで成功することがいちばん重要だと思っていた。でも、車が三台倉庫にあったって、大きい家があったって、貯金があったって、今となってはなんの意味もないんだよ。逆に、家族の争いのもとになっていたくらいだ」  

「本当に大切なことはそんなことじゃなかったんだ。大切なのは人との関係だ。もっと息子と一緒に過ごせばよかった……」  

 そう言うと、彼は言葉につまった。  

 スティーブの言うことは、本当にその通りだ。人は死ぬとき、自分がこの世で手にいれたものを持ってはいけない。死んだあとに残るのは、自分が他人に与えたものだけだ。

「成功することに、まどわされてはいけないよ。幸せになって。平和な心を持って。ささいなことでも見過ごさないように。そうすれば、必ず君のための道が開かれるはずだよ」

 

 セッションを通じて、人と人との心の交流がなされていく様子が、10の事例を通して紹介されています。

 ぜひとも本を手にとってみていただければと思います。

 

ヒーラーとしての医療者

 本の巻末に佐藤さんのこのようなコトバがあります。 

「死」は、人生における最後の「旅」です。そして患者さんとセラピストは、その「旅」をともに歩む仲間のようなものです。

 

 ぼくの中では、先日取り上げた短編小説「最後の一葉」*2 を彷彿させるものです。

 もちろん、音楽療法士がもっと身近になることも必要でしょう。

 しかし、それ以前に医療者ひとりひとりが癒しの側面にもっと目を向けなければならなかったはずです。

 

 医療者自身が「旅」をともに歩む仲間のようなものになりたいものです。

ラスト・ソング (一般書)

ラスト・ソング (一般書)

 

 

 どうすれば近づけるのか。ここに何かがあることは直感的にわかります。

 道が先に見えてきました。さらにもう少し前に進めてみたいと思います。

 

あとがき

 著者の佐藤さん、ポプラ社のあまのじゅんぺいさん、ツイッターでフォローやコメントまでいただき、ありがとうございます!!

 今の時代、本(といっても電子書籍)であっても、双方向の時代に突入していることを、はっきりと実感しました。

 感じたことをコトバにすることは難しい作業ですし、文章もうまくありませんが、なんとか書き残してみました。

 

 実際の現場も一度拝見してみたい、という衝動に駆られています。

 

つづく

医療と癒し カテゴリーの記事一覧 - 地域医療日誌

*1:死は遠くにあるものか? - Elephant in the Room で同名の著書を紹介したことがありますが、ぼくの中では印象深い一冊。さらに、ALSについてもブログ記事でいくつか取り上げていますので、最も印象的な章でした。

*2:一枚の絵であっても人を癒すことができる - 地域医療日誌 参照

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