ある薬剤師からの助言
ある薬剤師から、夜間下肢こむら返りがつづく高齢者にビタミンBやマグネシウムが有効ではないか、との助言がありました。
専門的見地からのありがたい情報だと思ったのですが、情報源を確かめたところ、このようなことだったようです。
有痛性筋痙攣について、「今日の臨床サポート」にはビタミンB、シュウ酸マグネシウム、Ca拮抗薬が有効と記載されています。
今日の臨床サポート | 1,248名の専門医による経験と根拠に基づく豊富な診療情報を収載(エルゼビア・ジャパン株式会社)でしたか...。ちょっと拍子抜けです。
今日の臨床サポート
実際に確認してみると、たしかに「有痛性筋痙攣にはビタミンB、シュウ酸マグネシウム、Ca拮抗薬が有効とのRCTがある」と記載されていますが、残念ながら出典が明記されていませんでした。うーん。
元論文をさがせ
気になるので、元論文を検索してみることにしました。
PubMedで検索すると、該当すると思われる古い小規模ランダム化比較試験がひとつ見つかりました。ビタミンBに関する論文です。確認してみたいと思います。
ランダム化比較試験(Chan, 1998年) *1
研究の概要
睡眠を妨げる程度の重症な夜間下肢こむら返りがある65歳以上の高血圧患者が複合ビタミンBカプセル (ビタノイリン、fursulthiamine 50 mg, hydroxocobalamin 250 micrograms, pyridoxal phosphate 30 mg, and riboflavin 5 mg含有)を1日3回、3ヶ月間服用すると、プラセボに比べて自己申告による下肢こむら返りの重症度(10cmのVASで評価)は改善するか、を検討した二重盲検ランダム化比較試験。
主な結果
ビタミンB群 14人、プラセボ群 14人の28人が対象。
開始時のVASはビタミンB群 7.9±1.2、プラセボ群 7.9±1.0。
3か月のVASはビタミンB群 2.6±2.5、プラセボ群 8.2±0.7とビタミンB群で有意に少なかった。ビタミンB群でのVAS 1以下の寛解率は28%、VAS 2-3の著明改善率は57%。
86%が改善!
小規模二重盲検ランダム化比較試験ですが、プラセボ群に大きく差をつけています。
対象者がビタミンB欠乏状態にあったのかどうかは不明です。また、アウトカムがこむら返りの回数ではなくVASで評価されているところが、他の研究と異なる点です。
さらに追跡率については記載がありませんでした。もし脱落なしなら、信憑性が高く効果が期待できそうだ、という結果になるでしょう。
ほかの類似研究は見当たりません。追試などの確認がほしいところです。
いずれにせよ保険適用はありません。薬剤師が個別にビタミンB含有サプリメントをすすめた、という展開になったようです。
*1:Chan P, Huang TY, Chen YJ, Huang WP, Liu YC. Randomized, double-blind, placebo-controlled study of the safety and efficacy of vitamin B complex in the treatment of nocturnal leg cramps in elderly patients with hypertension. J Clin Pharmacol. 1998 Dec;38(12):1151-4. PubMed PMID: 11301568.