質問
糖質は少なくしたほうが体にいいんでしょうか?
ダイエットや食事療法としての糖質制限(低炭水化物食)が流行しています。手軽に実践でき、すぐに減量効果が実感されやすく、取り組みやすいのでしょう。
しかし、低炭水化物食は体にいいのでしょうか?
科学的にはどのような評価になっているのか、調べてみることにしました。
ダイエットしたのに?
コホート研究(Lagiou, 2007年) *1
研究の概要
30-49歳の女性で低炭水化物食にすると、そうではない食事に比べて、総死亡が少ないかを検討した、スウェーデンのコホート研究。調査票による詳細な食事調査を行い、国内統計を用いて42,237人を12年間追跡した。
主な結果
低炭水化物食(十分位あたり)のハザード比 *2は、総死亡 1.06 (95%信頼区間 1.00–1.12)、がん死亡 1.04 (95%信頼区間 0.97–1.11)、心血管死亡 1.10 (95%信頼区間 0.96–1.26)といずれも低炭水化物食のほうが多くなっていた。
高蛋白食(十分位あたり)のハザード比についても、それぞれ1.02 (0.99–1.05) 、1.01 (0.96–1.05)、1.10 (1.01–1.20)と特に心血管死亡が多くなっていた。
両者を合わせた検討では(十分位数を割った2ユニットあたり)、ハザード比はそれぞれ、1.04 (1.00–1.08)、1.02 (0.96–1.08)、1.15 (1.01–1.28)といずれも死亡が多い傾向がみられた。
総死亡が6%多くなる
体のためにと思って糖質制限すると寿命を縮めてしまうかもしれない、という結論になっています。
低炭水化物食にすればそれだけでも総死亡のリスクが高まる懸念がありますが、糖質を蛋白に代えて高蛋白食にすると、さらにリスクが高まる可能性があります。特に心血管疾患による死亡が多くなるようです。
どうでしょうか。これは想定内の結果でしょうか。
観察研究では交絡の可能性もあります。脚注のような交絡因子で調整されていますが、これ以外の考慮されていない要因や未知の交絡因子の影響は避けられません。
このような規模での長期予後の観察研究は、なかなか簡単に実施できるものではありません。おそらく他にたくさんの研究は見つからないでしょう。
たまたまこのスウェーデンの研究結果が悪かっただけなのでしょうか?
さらに調べて、ご紹介していきたいと思います。
つづく 低炭水化物食、ギリシャでも総死亡8%多い - 地域医療日誌
*1:1: Lagiou P, Sandin S, Weiderpass E, Lagiou A, Mucci L, Trichopoulos D, Adami HO. Low carbohydrate-high protein diet and mortality in a cohort of Swedish women. J Intern Med. 2007 Apr;261(4):366-74. PubMed PMID: 17391111.
*2:Hazard ratios per indicated increase in the corresponding score. Cox models, using attained age as time scale, stratifying for 1-year birth cohorts and adjusting for height (cm,continuously), body mass index (<25,25–29.99 and ‡ 30kgm2, categorically), smoking status (never smokers, former smokers of <10cigarettes, former smokers of 10–14 cigarettes, former smokers of 15–19 cigarettes, former smokers of 20 or more cigarettes, current smokers of <10cigarettes, current smokers of 10–14 cigarettes, current smokers of 15–19 cigarettes, current smokers of 20 or more cigarettes, categorically), physicalactivity [from1(low)to5(high), categorically], education (0–10,11–13and14ormore years in school, categorically), energy intake (per 1000kJ day)1,continuously), saturated lipid intake (per10g, continuously) and alcohol intake (<5, 5–25 or >25gday)1, categorically).