地域医療日誌

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施設ではMRSAの除菌はしたほうがよいですか?

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 施設内での特別なMRSA対策には意味がないですか?につづきます。

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MRSA除菌の効果は?

 高齢者の介護施設では、効果のあるMRSA対策は本当にないのでしょうか?

 前回記事のメタ分析は2013年のものでしたが、新しい論文もありそうです。さらに読み進めてみましょう。

 

 まずは、MRSA除菌の効果について。

クラスターランダム化比較試験(Bellini, 2015年) *1

研究の概要

 介護施設に長期入居する65歳以上の高齢者に対して、検査でMRSA保菌があれば除菌し職員には標準予防策を徹底すると、通常のケアに比べて12か月後のMRSA保菌率は少なくなるかを検討した、クラスターランダム化比較試験である。

 

主な結果

 105施設を介入群54施設、対照群51施設にランダム割り付けした。介入群の1施設が脱落。平均44-47床。入居者の平均年齢は83-84歳。入居者の87%が検査を受け、MRSA保菌率は平均8.9%(0~43%)。

 12か月後のMRSA保菌率は介入群5.8%、対照群6.6%といずれも低下していたが、両群に有意差はなかった。

 

クラスターランダム化比較試験(Schora, 2015年) *2

研究の概要

 介護施設、リハビリ施設、認知症施設の入居者にMRSA迅速検査を行い、陽性者に対して除菌すると、除菌なしに比べて、MRSA保菌率が低くなるかを検討したクラスターランダム化比較試験である。

 

主な結果

 12施設にて実施。開始時のMRSA保菌率は介入群16.83%、対照群16.48%。1年後には介入群11.61%、対照群17.85%と介入群で有意に保菌率が低かった。その後は全て介入群としたところ、2年後にはそれぞれ12.84%、8.62%と低下していた。

 

相反する結果に

 MRSA保菌者に対する除菌の効果は、この2つのクラスターランダム化比較試験では相反する結論となっています。

 対象者や方法に多少の違いがあります。方法での2研究の大きな相違点としては、

  • Belliniらは標準予防策の職員指導を徹底した。(Schoraらは手洗い指導のみ)
  • SchoraらはMRSA保菌検査は鼻腔のみ行い迅速検査を採用した。(Belliniらは鼠径部、潰瘍部から培養を採取)
  • Schoraらは鼻腔外用薬とクロルヘキシジン浴のみを行った。(Belliniらは部位ごとにプロトコールを決めた)

 このあたりでしょうか。

 どちらかと言えば、Belliniらの研究のほうがきめ細やかな予防策をとられている印象ですが、そのほうが効果がなかったという結果です。

 

 鼻腔検査のみでは偽陰性が多くなるはずですから、Schoraらの研究では単に鼻腔MRSA保菌に対する外用薬の治療効果を見ているだけなのかもしれません。

 つまり、施設内でのMRSA蔓延が本当に予防できているのか、はなはだ疑問と言わざるを得ません。

 

さらにもう少しつづきます。 

施設の耐性菌対策はターゲットを絞るとよいですか? - 地域医療日誌

*1:Bellini C, Petignat C, Masserey E, Büla C, Burnand B, Rousson V, Blanc DS, Zanetti G. Universal screening and decolonization for control of MRSA in nursing homes: a cluster randomized controlled study. Infect Control Hosp Epidemiol. 2015 Apr;36(4):401-8. doi: 10.1017/ice.2014.74. PubMed PMID: 25782894.

*2:Schora DM, Boehm S, Das S, Patel PA, O'Brien J, Hines C, Burdsall D, Beaumont J, Peterson K, Fausone M, Peterson LR. Impact of Detection, Education, Research and Decolonization without Isolation in Long-term care (DERAIL) on methicillin-resistant Staphylococcus aureus colonization and transmission at 3 long-term care facilities. Am J Infect Control. 2014 Oct;42(10 Suppl):S269-73. doi: 10.1016/j.ajic.2014.05.011. PubMed PMID: 25239721.

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