地域医療日誌

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音楽に害はないですか?

 
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質問

 音楽の治療には害はないのでしょうか?

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 鋭いご質問をいただきました。

 音楽を聞くだけなら害なんてないでしょう、と考えてしまいがちですが、研究となれば検討せざるをえません。治療的介入には、有害事象を伴うものです。

 論文をざっと確認してみたところ、記載がない研究が多かったように思います。

 

メタ分析から

 以前の記事 音楽で認知症のうつや不安は軽減する - 地域医療日誌 では、認知症に対する音楽の効果を検討したメタ分析を紹介しました。

 音楽の治療的介入については定義がされておりますが、いろいろな研究が含まれています。このメタ分析では、おそらく有害事象について触れているでしょう。

 まずは概要(再掲)から。

メタ分析(van der Steen, 2017年) *1

研究の概要

 あらゆる種類の認知症の人に音楽による治療的介入 *2 を行うと、他の治療または音楽による治療なしに比べて、感情的安定(QOLやポジティブな感情、表情も含める)・気分障害やネガティブな感情(うつや不安)は改善するか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 17研究が基準に該当し、そのうち16研究(620人)の結果をメタ分析として統合。すべてが施設居住者。

 治療終了時の感情的安定とQOL(6研究, 181人)については、標準化平均差 0.32(95%信頼区間 -0.08, 0.71)と両群でほぼ同等であった。うつ症状(9研究, 376人)については、標準化平均差 -0.28(95%信頼区間 -0.48, -0.07)と音楽的介入でやや少ない傾向がみられた。

 他の指標については、以下のとおり。

  • 不安(11研究, 365人):標準化平均差 -0.50(95%信頼区間 -0.84, -0.16)
  • 問題行動(焦燥、攻撃性)(12研究, 515人):標準化平均差 -0.08(95%信頼区間 -0.29, 0.14)
  • 問題行動全般(6研究, 209人):標準化平均差 -0.20(95%信頼区間 -0.56, 0.17)
  • 認知機能(6研究, 257人):標準化平均差 0.21(95%信頼区間 -0.04, 0.45)
 長期の評価については、研究の質が低く研究数も少ない。 

 

アウトカムが設定されていなかった

 このメタ分析のアウトカムはこのように設定されていました。

Primary outcomes

The protocol did not prioritise outcomes. We prioritised the outcomes related to emotions (emotional well-being including quality of life, and mood disturbance or negative affect) as being of critical importance because these outcomes (e.g. depression) are closely related to quality of life of people with dementia (Banerjee 2009; Beerens 2014). Depression and anxiety are also prevalent and rather persistent during the course of the dementia (van der Linde 2016; Zhao 2016).We further prioritised behavioural problems because these affect relationships and caregiver burden (e.g. van der Linde 2012); and some may also be indicators of distress.

Secondary outcomes

Social behaviour and cognitionwere important but secondary outcomes, as the benefit for the participants themselves was not as obvious as for outcomes more closely related to their quality of life.

 

 あれ? 有害事象は検証するアウトカムには設定されていませんでした。

 本文を確認していくと、一文のみ有害事象の記載がありました。

Any other adverse effects

These were not reported.

 

 報告がなかった、ということになるでしょう。

 これは盲点だったかもしれません。音楽を利用する上で、どのような配慮が必要なのか、害があるとすればどのようなことなのか、あまり検討されていないようです。

 これからは、ここにも着目してみたいと思います。

 

 エコロジーオンライン「オトトカラダ」プロジェクトに参画しています。

www.eco-online.org

*1:van der Steen JT, van Soest-Poortvliet MC, van der Wouden JC, Bruinsma MS, Scholten RJ, Vink AC. Music-based therapeutic interventions for people with dementia. Cochrane Database Syst Rev. 2017 May 2;5:CD003477. doi: 10.1002/14651858.CD003477.pub3. Review. PubMed PMID: 28462986.

*2:any music-based interventions, either active or receptive, delivered to individuals or groups. We required a minimum of five sessions in order to ensure that a therapeutic intervention could have taken place

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