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変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

最期まで自分らしくあるために

医療と癒し 音楽のチカラ 本の紹介 地域医療文庫
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「医療と癒し」の話題がつづきます。

 

 本の紹介です。

 先日ご紹介した音楽療法士 佐藤由美子さんの新刊 (116)死に逝く人は何を想うのか 遺される家族にできること (ポプラ新書) です。

 

まるで日本版キュブラー・ロスのような指南書

 こちらは ラスト・ソング (一般書) とはまたひと味違い、死にゆく人に最期のお別れをするにあたり、家族への指南書のような体裁となっています。

 前半部分はまるでキュブラー・ロスの 死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫) のよう *1 に、死に直面した人の心の変化について整理されており、具体的な事例を踏まえながらわかりやすく説明されています。

 

 読み進めながら、これまでぼくがお見送りしてきたいろいろな場面を思い出してしまいます。

 そして、もっとましな声のかけ方や気のきいたコトバがあったのではないか、もっとこんなふうに接していればよかったのに、と思うことしきり。

 正直なところ、ちょっとつらくなります。

 

死にゆく人も自分らしく 

 これからゆっくりと消化していきたいと思いますが、ぼくが受け取ったメッセージのいくつかをここに紹介しておきます。

  • 死にゆく人も、最期まで自分らしくありたいものだ。
  • 患者さんが何よりも求めているもの―それは、ありのままの自分を受け入れてもらうことだろう。
  • 死にゆく現実を、家族が受けとめられないことがある。
  • もし、大切な人にいつか言おうとしていることがあるなら、そのときは今だ。
  • 死んだあとに残るのは、自分が他人に与えたものだけだ。

 

 あえてここでは詳しく触れることはしませんが、ぜひ読んでみてください。

 

音楽の力 

 音楽療法といっても、ただ好きな音楽を聞いてもらえばいい、というわけではなかったようです。

 音楽はあくまでも、心を開いてもらうための道具のひとつに過ぎません。

 むしろ、お話をしながら、死にゆく人をよく理解するところが最も重要ということのようです。そして、音楽の力を活用しながら、家族とともにその人らしさを取り戻していく、ということになるでしょうか。

 その過程にこそ意味がある、というわけです。

「おわりに」から一部引用します。

患者さんと過ごした最後の時間は、あなたの中に一生残る。大切な人とのお別れは言うまでもなく悲しいが、それは一回きりだからこそ、あなたにとっても、患者さんにとってもかけがえのない時間となる。だからどうか、目の前の患者さんと向き合い、その存在を受けとめてあげてほしい。その貴重な経験は、あなたの人生を変えるほど価値あるものになるかもしれない。

 

 家族だけではなく、終末期医療に関わるすべての医療者の姿勢にも関わるメッセージだと思います。

 心して臨みたいと思います。

 

誰も人を癒せない

 序文に「癒し」の意味について書かれていました。気になる部分ですので、引用しておきたいと思います。

 そもそも「癒し」とはどういう意味だろうか? 英語ではヒーリング(healing)だが、どちらも日本では受け身のニュアンスで捉えられている。誰かに何かしてもらってよくなる、というようなイメージだ。しかし、本来の意味での「癒し」が実現するためには、その人自身が問題を向き合い、取り組む必要がある。なぜなら、心が回復したり成長したりするために必要な力は、その人の中にしかないからだ。死に直面した人の場合も同じで、彼らを「癒す」ことができるのは、本人だけだ。

 

 誰も人を癒すことはできない。癒すことができるのは、本人だけだ。

 本人の癒しをどのように援助することができるか、そういった関わり方を模索すべきでしょう。

 

 医療は何ができるのか。癒すために手を差し伸べることができるのか。これからも考えていきたいと思います。

 

 ぜひ読んでみてください。

(116)死に逝く人は何を想うのか 遺される家族にできること (ポプラ新書)

(116)死に逝く人は何を想うのか 遺される家族にできること (ポプラ新書)

 

 

 こちらもおすすめです。

ラスト・ソング (一般書)

ラスト・ソング (一般書)

 

 

*1:著者もひとつの例としてこの本を引用されています。

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