地域医療日誌

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鎮痛剤で心筋梗塞が19%多くなる

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鎮痛剤で心筋梗塞になりやすくなりますか?

 日常よく処方される鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬、NSAIDs)ですが、以前から心筋梗塞になりやすいという指摘があります。

 そのあたり、どうなっているのでしょうか。

 よく使われる薬だからこそ、知っておきたい情報です。

 

 まずは2006年の研究のおさらいから。

メタ分析(Singh, 2006年) *1

研究の概要

 NSAIDs(非選択性)を処方されている人は、処方されていない人に比べて急性心筋梗塞が多いかを検討した、害に関するメタ分析(ケースコントロール・コホート研究)。 

 

主な結果 

 14研究(症例対照研究、コホート研究)の結果を統合。非選択性NSAIDsで心筋梗塞発症の相対危険は1.19(95%信頼区間1.08, 1.31)と多い。
 薬剤別ではジクロフェナク 1.38(95%信頼区間1.22, 1.57)、イブプロフェン 1.11(95%信頼区間1.06, 1.17)では多く、ナプロキセンは 0.99(95%信頼区間 0.88, 1.11)と同等であった。

 

鎮痛剤で心筋梗塞が19%多い

 観察研究のメタ分析ですが、ジプロフェナク(ボルタレンなど)、イブプロフェン(ブルフェンなど)で心筋梗塞が多くなっています。

 観察研究では交絡などの影響が出てきますので、この結果だけで断定することはできません。ただ、14研究からの知見ですから、それなりに影響は示唆されるところです。

 ランダム化比較試験やそのメタ分析の情報がほしいところです。

 

COX-2阻害剤では心筋梗塞が多くなると警告

 この論文の導入部分にはこのように書かれています。

One of the most revelatory issues concerning pharmaceuticals in recent years has been the relationship found between selective cyclo-oxygenase (COX)-2 inhibitors and cardiovascular thrombotic adverse events such as acute myocardial infarction (AMI) [1-5]. Received wisdom has never implicated the older class of similarly acting drugs, the nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs), in this association. However, new evidence suggests that there be an association between these nonselective NSAIDs and cardiovascular adverse effects, and that the risk may be similar with this class of drugs to that with COX-2 selective NSAIDs [6].

 

 はい。そもそもこの研究は、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害剤では心血管疾患が多くなることが知られていますが、非選択性のNSIADsではどうかよくわかっていなかった、ということが動機になっています。

 COX-2選択的阻害剤とは、メロキシカム(モービック)、セレコキシブ(セレコックス)、エトドラク(ハイペン)など。こちらもよく使われている薬剤だと思います。

 これらの薬剤には、このような警告が国内でも出ています。

警告
外国において、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害剤等の投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象のリスクを増大させる可能性があり、これらのリスクは使用期間とともに増大する可能性があると報告されている。

 

 このあたりも、順次情報を確認していきたいと思います。

 

過去記事

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は心筋梗塞を増やす - 地域医療日誌 by COMET

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*1:Singh G, Wu O, Langhorne P, Madhok R. Risk of acute myocardial infarction with nonselective non-steroidal anti-inflammatory drugs: a meta-analysis. Arthritis Res Ther. 2006;8(5):R153. PubMed PMID: 16995929; PubMed Central PMCID: PMC1779447.

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