地域医療日誌

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

地域医療日誌

変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

タミフルでインフルエンザの重症化は防げますか?

3. 診断や治療についての疑問
スポンサーリンク

製薬会社の未出版データ

 

 インフルエンザの治療薬タミフル(oseltamivir)の効果については、企業が研究段階での未出版データを公開していなかったことで、疑いの目が向けられていました。

コクラングループが、タミフルによる入院率減少効果は認めず、合併症減少効果の情報も得られずと指摘 | 薬害オンブズパースン会議 Medwatcher Japan

 

Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children - The Cochrane Library - Jefferson - Wiley Online Library

 

 この未出版データを含むメタ分析が発表されていますので、読んでみましょう。

未出版データを含むメタ分析(2013年)

Ebell MH, Call M, Shinholser J. Effectiveness of oseltamivir in adults: a meta-analysis of published and unpublished clinical trials. Fam Pract. 2013 Apr;30(2):125-33. doi: 10.1093/fampra/cms059. Epub 2012 Sep 20. Review. PubMed PMID: 22997224. 

P▶ インフルエンザを発症した人に

E▶ oseltamivirを投与すると

C▶ プラセボに比べて

O▶ 有症状期間、合併症(急性中耳炎、急性気管支炎、肺炎、副鼻腔炎で抗菌薬を必要とするもの)、入院は少ないか

T▶ 治療、メタ分析

 

 著者らはこのアウトカムについても、急性気管支炎では抗菌薬は使用されないため、急性気管支炎を入れたものと入れないものと両者を検討するという慎重さです。

 

 いったいどのようなデータが出版されていなかったのでしょうか。やはり、意図的だったのでしょうか。Methodsから一部を引用します。

We requested and obtained permission from Roche to download clinical study reports for 10 published and unpublished RCTs from the site https:// tamiflu.clinit.net/. These reports ranged in length from 199 to 1004 pages and provided detailed data the study design and results. Other than a single email providing permission to access the data for research purposes, we have had no further contact with the sponsor. We also identified one additional RCT in a search of the Roche trials database (http:// www.rochetrials.com/trialResults.action). This study (WV16277) randomized 451 adults to oseltamivir or placebo, and stratified them by vaccination status and the presence or absence of chronic obstructive lung disease. They found no difference between groups for the primary outcome of cough and fever alleviated 36 hours after the onset of treatment. Because they did not report the overall duration of symptoms, complications or hospitalizations we were unable to use it in our analysis. 

 

 成人451人に対するランダム化比較試験で、タミフルはプラセボと差がなかったという未出版データもあったようです。(今回のメタ分析には含まれていません。)

 

 だんだん信じられなくなりますが・・・薬の臨床研究というものは、こういうものだと思うしかないです。臨床研究の結果は、薬の効果を過大評価する方向に振れているものだ、という認識が必要でしょう。

 

合併症予防効果も眉唾もの

 

  気をとりなおして、読んでみます。

 《結果》※※※

11研究(うち未出版8研究)4769人が対象

  • 有症状期間(ITT解析のみ)oseltamivir群で20.7時間短い(95%信頼区間 13.3~28.0時間)
  • 入院(ITT解析のみ)リスク差 oseltamivir群で0.1%多い(95%信頼区間 −0.5% ~0.6%
  • 合併症(インフルエンザ確定例)リスク差  oseltamivir群で2.8%少ない(95%信頼区間−4.9%~−0.6%、NNT = 36)
  • 合併症(インフルエンザ確定例、急性気管支炎を除外)リスク差  oseltamivir群で0.1%少ない(95%信頼区間−1.7%~1.5%)

 

 抗菌薬を使用しない急性気管支炎での症例数が上乗せされているようです。

 この結果をみる限り、現時点ではタミフルで重症化予防は期待しないほうがいい、という結論でよいでしょう。

 

 この論文でも、以下のように結論づけられています。

Physicians widely believe that oseltamivir prevents hospitalizations and complications, particularly in more vulnerable patients such as the elderly and patients with chronic cardiac or respiratory co-morbidities. However, we found no evidence that oseltamivir reduces the likelihood of either of these important clinical outcomes. In fact, study WV15812, which included 401 patients with at least one chronic cardiac or respiratory condition, found no reduction in the mean duration of symptoms; neither did study WV15819, which included 733 elderly patients.

 

 合併症予防どころか症状改善効果でさえも眉唾ものではないか、といった論調になっています。確かに、騙されたような気分です。

 

 

タミフルでインフルエンザの重症化は防げますか?

  • これまで製薬会社の大規模データは開示されていなかった。
  • 製薬会社の未出版データを統合すると、合併症予防効果はほとんど認められない。
  • タミフルに過大な期待をしないよう注意が必要。

 

 Copyright © 2003, 2007-2017 地域医療ジャーナル