地域医療日誌

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患者中心の医療の臨床効果ははっきりしない

 

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 以前取り上げたこちらの記事。

「患者中心の医療」の効果は微妙? - 地域医療日誌

 ひとつのメタ分析を紹介した記事です。時間はたっていますが、これ以降にあまり目新しい論文はないようです。

 そこで、このメタ分析をもう少し掘り下げてみようと思います。

メタ分析(Dwamena, 2012年)*1

研究の概要

 健康問題のある成人・小児に対して、訓練された一次医療機関の医師・看護師が患者中心のケア(PCC)を行うと、PCCなしに比べて診療プロセス、満足度、健康に関する行動、健康状態(health status)はよくなるかを検討した、ランダム化比較試験のメタ分析・システマティックレビュー。

 

主な結果

 43研究のうち、ここでは健康状態(真のアウトカム)をアウトカムとした26研究について取り上げる。

 量的評価されメタ分析に組み入れられたのは10研究。このうち二分変数で評価された2研究では、うつ病とMedically unexplained symptomsの患者を対象に、質問票で評価されたもの。結果を統合すると、リスク比 1.36(95%信頼区間 1.01, 1.83)とPCC群で改善度が大きいかった。 

 連続変数で評価された8研究では、急性上気道炎、認知症、糖尿病、潰瘍性大腸炎・クローン病、CABG手術、がん患者などが対象。結果を統合すると、標準化平均差 -0.25(95%信頼区間 -0.36, -0.15)とわずかにPCC群で良好という結果である。

 記述的な評価がなされた26研究のうち、12研究(46%)ではPCC群で良好な結果となっていたものの、このうち10研究は前述の量的評価された研究であった。

 

患者中心のケア(PCC)の定義

 このメタ分析では、下記のうちひとつ以上を含むものをPCCと定義されています。

  1. 医療提供者が患者にも診察の主導権や治療方針の決定権を与えている。
  2. 診察のなかで、医療提供者が単に病気だけではなく、人として患者に向き合っている。

 前出の記事で紹介した「患者中心の医療の方法」に限定した研究ではないことに注意が必要です。

 

ほとんどが2次 アウトカム、代用のアウトカムだった

 量的評価ではある程度いい結果が出ているようにみえますが、よく確認したいのはアウトカムです。

 二分変数の2研究については、いずれも健康状態は1次アウトカムではありませんでした。連続変数の8研究についても、健康状態が1次アウトカムとなっているのは2研究のみ。そのうち、メタ分析の結果に大きく貢献している1研究のアウトカムはHbA1c。なんと、「代用のアウトカム」研究でした。

 

 症状や再発、焦燥感など「真のアウトカム」の研究では、残念ながらほとんど有意差がみられていません。

 これは原著論文を熟読しないと、なかなか気づかない点です。

 

新しい方法論を

 このあとにも、いわゆる真のアウトカムを改善するという論文は発表されていないようです。もちろん代用のアウトカムや1次アウトカム以外の指標での論文は多数ありますが。

 診察の技法にそこまで求める必要はない、という意見もあるかもしれません。

 しかし、少なくとも効果についてはまだはっきりしていない、ということには違いありません。

 

 そろそろ、伝統的な患者中心の医療の方法に固執せずに、新しい方法論を提示すべきかもしれません。

*1:Dwamena F, Holmes-Rovner M, Gaulden CM, Jorgenson S, Sadigh G, Sikorskii A, Lewin S, Smith RC, Coffey J, Olomu A. Interventions for providers to promote a patient-centred approach in clinical consultations. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Dec 12;12:CD003267. doi: 10.1002/14651858.CD003267.pub2. Review. PubMed PMID: 23235595.

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