地域医療日誌

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パーキンソン病の貼り薬はどうですか?

 

 「ネットで見たのですが・・・ 」

 最近はこのような前置きで質問されることが多くなってきました。専門知はどんどん情報公開され、目まぐるしく更新されています。

 「パーキンソン病の貼り薬ってどうですか?」

 経皮吸収型製剤がよく発売されていますが、パーキンソン病薬にもその流れがやってきたようです。調べてみました。

 

ロチゴチンの効果

 現在国内で使われているのは、非麦角系ドーパミンアゴニストの「ニュープロ®パッチ」、ロチゴチンです。パーキンソン病のほかに、中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群にも適応があります。

 パーキンソン病の効果については、プラセボとの比較、従来薬との比較がありました。何と、すべて同じ著者のようです。順にみていきましょう。 

 

メタ分析、プラセボとの比較(Zhou, 2013年)*1

P▶ パーキンソン病患者に
E▶ ロチゴチン経皮吸収型貼付剤を投与すると
C▶ プラセボに比べて
O▶ UPDRSスコア *2 の改善度は大きいか、有害事象は少ないか
T▶ 治療、ランダム化比較試験のメタ分析

《結果》★★★ *3
6つのランダム化比較試験(n=1789)の結果を統合。
両群の差は加重平均の差(weighted mean difference: WMD)で評価。

4研究(n=1105)では、
 ADLスコア WMD –1.69, 95%信頼区間 –2.18 to –1.19
 運動機能スコア WMD –3.86, 95%信頼区間 –4.86 to –2.86

早期のパーキンソン病患者を対象とした3研究(n=845)では、
 ADL+運動機能スコア WMD –4.52, 95%信頼区間 –5.86 to –3.17

有害事象については、
 脱落(相対危険1.82, 95%信頼区間1.29, 2.59)
 貼付部位の反応(相対危険2.92, 95%信頼区間2.29, 3.72)
 嘔吐(相対危険5.18, 95%信頼区間2.25, 11.93)
 ジスキネジア(相対危険2.52, 95%信頼区間 1.47, 4.32)

 

 いずれもロチゴチン経皮吸収型貼付剤のほうが、プラセボより重症度スコアの改善度が大きい、という結果です。特に、早期のパーキンソン病に対して、より大きな効果が期待できるかもしれません。

 しかし、有害事象は多くなっており、注意が必要です。

 

メタ分析、プラセボとの比較(Zhou, 2014年)*4

P▶ パーキンソン病患者に
E▶ 長時間作用型非麦角系ドーパミンアゴニストを投与すると
C▶ プラセボに比べて
O▶ UPDRSスコアの改善度は大きいか、有害事象は少ないか
T▶ 治療、ランダム化比較試験のメタ分析

《結果》★★★ *5
9のランダム化比較試験(n=2857)の結果を統合。
両群の差は加重平均の差(weighted mean difference: WMD)で評価。

ADLスコア WMD –1.77, 95%信頼区間 –2.13 to –1.41
運動機能スコア WMD –4.18, 95%信頼区間 –4.94 to –3.43
ADL+運動機能スコア WMD –5.12, 95%信頼区間 –6.16 to –4.07

有害事象による脱落 相対危険1.76, 95%信頼区間1.31, 2.35

 

 前出のZhou, 2013年のメタ分析でのロチゴチン6研究のほかに、長時間作用型非麦角系ドーパミンアゴニストの研究を加えた9研究で検討しています。

 結果は同じような傾向がみられています。

 

メタ分析、ドーパミンアゴニストとの比較(Zhou, 2014年)*6

P▶ パーキンソン病患者に
E▶ 長時間作用型非麦角系ドーパミンアゴニストを投与すると
C▶ 従来の非麦角系ドーパミンアゴニストに比べて
O▶ UPDRSスコアの改善度は大きいか、有害事象は少ないか
T▶ 治療、ランダム化比較試験のメタ分析

《結果》★★★ *7
8のランダム化比較試験(n=2402)の結果を統合。
ADLスコア WMD 0.09, 95%信頼区間 –0.33 to 0.50
運動機能スコア WMD –0.35, 95%信頼区間 –1.60 to 0.90
ADL+運動機能スコア WMD 0.97, 95%信頼区間 –0.98 to 2.92
「オフ」時間 WMD 0.18, 95%信頼区間 –0.14 to 0.50
いずれも有意差なし。

有害事象による脱落 相対危険1.19, 95%信頼区間 0.91 to 1.56
有意差なし。

 

 こちらはロチゴチンも含まれていますが、他剤も含めた長時間作用型非麦角系ドーパミンアゴニストが検討されています。従来のものと比べて、効果も有害事象もあまり差がない、という結果になっております。

 

パーキンソン病の貼り薬はどうですか?

  • ロチゴチン経皮吸収型貼付剤は、プラセボに比べてパーキンソン病重症度スコアの改善度が大きいが、有害事象による脱落が1.8倍多い。

  • 早期のパーキンソン病に対してやや効果が大きい。

  • 長時間作用型非麦角系ドーパミンアゴニストについては、従来の非麦角系ドーパミンアゴニストに比べて、効果や有害事象にはあまり差がない。

  • 従来薬に比べてあまり優位性はないが、選択肢のひとつになりうるだろう。

*1:Zhou CQ, Li SS, Chen ZM, Li FQ, Lei P, Peng GG. Rotigotine transdermal patch in Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2013 Jul 23;8(7):e69738. doi: 10.1371/journal.pone.0069738. Print 2013. Review. PubMed PMID: 23936090; PubMed Central PMCID: PMC3720658.

*2:Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (UPDRS) スコア:パーキンソン病の重症度スコアで評価項目が42項目あり、スコアが高いほうが重症。このメタ分析ではactivities of daily living [ADL] スコア(0から52点), 運動機能スコア(0から108点)のいずれかまたは両者について評価されている。

*3:研究デザインの質を★☆☆低~★★★高の3段階で評価

*4:Zhou CQ, Zhang JW, Wang M, Peng GG. Meta-analysis of the efficacy and safety of long-acting non-ergot dopamine agonists in Parkinson's disease. J Clin Neurosci. 2014 Jul;21(7):1094-101. doi: 10.1016/j.jocn.2013.10.041. Epub 2014 Apr 29. Review. PubMed PMID: 24786715.

*5:研究デザインの質を★☆☆低~★★★高の3段階で評価

*6:Zhou CQ, Lou JH, Zhang YP, Zhong L, Chen YL, Lu FJ, Peng GG. Long-acting versus standard non-ergot dopamine agonists in Parkinson's disease: a meta-analysis of randomized controlled trials. CNS Neurosci Ther. 2014 Apr;20(4):368-76. doi: 10.1111/cns.12239. Epub 2014 Mar 3. PubMed PMID: 24588909.

*7:研究デザインの質を★☆☆低~★★★高の3段階で評価

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