歯ぐきが腫れていますが、抗菌薬は効きますか? につづきます。
歯周炎に対する効果
それでは、歯周炎に対する抗菌薬の効果はどうでしょうか。
調べてみると、システマティック・レビューやメタ分析がたくさんあるようでしたが、最近のものをご紹介したいと思います。
メタ分析(Zandbergen, 2016年) *1
研究の概要
歯周炎のある成人に、非外科的処置のスケーリングとルートプレーニング(SRP *2 )に加えてアモキシシリン+メトロニダゾールを内服してもらうと、SRPのみに比べて、歯周組織検査 *3 では改善するか、を検討したシステマティック・レビュー+メタ分析。
システマティック・レビューには非ランダム化比較試験を含む。
主な結果
20の研究が採択。エビデンスの質はばらつきがある。
PD *4(20研究、2-12か月)については、両群の平均差は −0.47mm (95%信頼区間 −0.58, −0.37)と抗菌薬群で改善度が大きい。
CAL*5(11研究、3-24か月)についても、両群の平均差は +0.33mm (95%信頼区間 0.23, 0.43)と抗菌薬群で改善度が大きい。
歯科のことは学生時代にも習ったと思うのですが、わからないことだらけです。専門用語の訳や解釈がまちがっているかもしれませんが、その際にはあたたかくご指摘ください。
スケーリングとルートプレーニング、と言われてもあまりピンときませんでした。
調べてみると「ああ、あのことね~」とわかります。(ガリガリと治療されているあの不愉快な感覚まで蘇ってきてしまいます・・・。)
歯周病の検査も何を測っていたのか、やっと理解できました。参考にするとしたらこのあたりのサイトでしょうか。
歯周病 - 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020
歯周組織検査の概要がわかる。
Gingival and periodontal pocket - Wikipedia, the free encyclopedia
PDとCALについては図を参照。
同様の研究(ランダム化比較試験やメタ分析)はよく見つかりますが、嫌気性菌カバーでメトロニダゾールが使われているものはよく見かけます。慢性歯周炎には標準的な抗菌薬となっているのでしょう。日本ではあまり見かけないような・・・。
歯周ポケットが -0.5mm
さて、やはりこの研究も計測値がアウトカムとなっていますから、いわゆる「代用のアウトカム研究」ということになります。
PDで0.5mmというのは、効果としては微妙のようにも思えますが、まあ大きな効果なのでしょう。
それじゃあ、いったい「真のアウトカム」が何になるのか、考えておきたい点です。痛みなのか、歯牙喪失なのか、QOLなのか。
それとも、歯周炎は心血管疾患のリスクになるというので、心血管疾患なのでしょうか。
歯科領域には、まだ興味深い論文が埋もれているような気がします。もう少し調べてみます。
【さらにつづく】
*1:Zandbergen D, Slot DE, Niederman R, Van der Weijden FA. The concomitant administration of systemic amoxicillin and metronidazole compared to scaling and root planing alone in treating periodontitis: =a systematic review=. BMC Oral Health. 2016 Feb 29;16(1):27. doi: 10.1186/s12903-015-0123-6. PubMed PMID: 26928597; PubMed Central PMCID: PMC4770674.
*2:scaling and root planing
*3:1次アウトカム:Probing Pocket Depth (PD), Clinical Attachment Level (CAL), 2次アウトカム:Bleeding on Pocket Probing(BOP) and Plaque Indices(PI)
*4:Probing Pocket Depth
*5:Clinical Attachment Level