地域医療日誌

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小児の周期性発熱:PFAPA症候群

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公開日 2014-01-26, 最終更新日 2016-08-21

 覚え書きです。記事を更新しました。

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不明熱と周期性発熱

 周期性発熱の鑑別について考える機会がありました。この際、小児の不明熱と周期性発熱について、少し整理しておきたいと思います。UpToDateにはよくまとまっており、参照してみます。

UpToDate:必要とする臨床上の疑問に対する回答を、いつでも、どこでも

Approach to the child with fever of unknown origin

Periodic fever syndromes and other autoinflammatory diseases: An overview

 

不明熱の定義 

 FUO(fever of unknown origin、不明熱)の定義の確認から。成人のFUOの定義では、以下のようになっています。

3週間以上つづく38.4℃を超える発熱があり、病院で1週間以上の検索をしても原因を特定できない成人

 

 しかし、この定義ではほとんど小児に適応することができない、研究によって定義の不一致が生じている、などの理由から、小児では以下の定義を採用しています。

  • FUO - 38.3ºCを超える発熱が8日以上つづき、慎重な病歴聴取・身体診察と検査による外来・入院での初期評価において診断が確定しない小児
  • FWS (fever without a source) - 慎重な病歴聴取と身体診察によって原因が特定できない発熱がみられてから1週間以内の小児

 

周期性発熱症候群

 代表的な周期性発熱症候群には、以下の症候群があります。

  • FMF: familial Mediterranean fever
  • TRAPS: tumor necrosis factor alpha receptor 1 associated syndrome
  • HIDS: hyperimmunoglobulin D syndrome
  • PFAPA: periodic fever with aphthous stomatitis, pharyngitis, and cervical adenitis

 

 あまりなじみのない病名もありますが、FMF、TRAPS、HIDSについては遺伝子座が特定されています(遺伝性周期性発熱症候群)。治療方針もある程度定まってきているようです。

 5歳以下で発症するPFAPA症候群は、繰り返すかぜ症状で日常遭遇する可能性があり、気になる症候群です。調べておきます。

 

PFAPA症候群とは

 日本の文献もいくつかありましたので、引用しながら整理しておきます。PDF閲覧可能となっていました。

Murata T, Okamoto N, Shimizu T, Tamai H. [Diagnosis and management of periodic fever with aphthous pharyngitis and adenitis (PFAPA)]. Nihon Rinsho Meneki Gakkai Kaishi. 2007 Apr;30(2):101-7. Review. Japanese. PubMed PMID: 17473512.

  • PFAPA症候群とは,周期性発熱,アフタ性口内炎,頸部リンパ節炎,咽頭炎を主症状とし5歳以下の乳幼児期に発症する非遺伝性自己炎症性疾患である.
  • 病因,病態は現在不明であるが,サイトカイン調節機能異常は重要な病態の一つと考えられる.
  • 発熱発作の周期は規則的で通常3~6日間続くが,間歇期は全く症状を欠き活動性も正常である.
  • その他,扁桃炎,倦怠感,頭痛,関節痛,腹痛,嘔吐,下痢,咳,血尿,発疹など多彩な症状を呈するが,いずれも後遺症は残さない.
  • 発熱時の非特異的炎症反応の他は特異的な検査所見はなく,診断にあたっては他の発熱性疾患の鑑別を含めた臨床診断が重要である.
  • 特異的な治療法はなく,有熱期間の短縮効果としてステロイド薬,寛解導入が期待できるものとしてシメチジンや扁桃摘出術などが考慮されることもある.
  • 他のautoinflammatory syndromeに比して予後は良好で,多くの症例では発症後経時的に発作間隔は広がり4~8年程度で治癒,成長および精神運動発達も正常である.

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 1987年にMarshallらによって報告された症候群です。

Marshall GS, Edwards KM, Butler J, Lawton AR. Syndrome of periodic fever, pharyngitis, and aphthous stomatitis. J Pediatr. 1987 Jan;110(1):43-6. PubMed PMID: 3794885.

 

 国内では2006年までに20例の報告がある、との記載がありますが、最近は報告がふえてきているようです。見逃しがあるのかもしれません。注意していきたいと思います。

参考になる情報源

 こちらも参考になります。

自己炎症性疾患の診断と治療 - 日本小児感染症学会

http://www.jspid.jp/journal/full/02201/022010043.pdf 

 

 近年では「自己炎症性疾患」という新たな概念にまとめられるようになっているようです。

自己炎症性疾患サイト [Autoinflammatory Disease Web Site]

 自己炎症という概念は、1999年Kastner, O'Shea, McDermottらにより、自然免疫系の遺伝性異常症を念頭に考え出されました。体質的に炎症が起こりやすい疾患で、自己免疫疾患、アレルギー疾患、免疫不全症などの従来の免疫疾患の範疇に納めることができない疾患群に対し、自己炎症性疾患(自己炎症疾患、自己炎症症候群ともいう)という疾患概念が提唱されました。

 

 定義や疾患概念も進化していきます。時々確認しておく必要がありますね。

 ほかにも参考になる情報源が出てきています。

難病情報センターのページ

難病情報センター | 免疫系疾患分野 周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群(PFAPA)(平成24年度)

 

 患者会のウェブサイトにも情報が詳しくのっています。

自己炎症疾患友の会 PFAPA症候群

Aboput PFAPA

 

治療について

 有効な治療法がまだ未確立であること、自然治癒が期待できること、などの理由から、治療方針は個別に相談しながら、経験的に(手探りで)行われることになります。

 ただし、プレドニゾロンなどのグルココルチコイドの投与が一時的な解熱には有効であるとされ、治療的診断目的としてもしばしば使われるようです。

 治療の選択肢としては下記のものが挙げられています。

  • グルココルチコイド
  • シメチジン
  • コルヒチン
  • 扁桃摘出術

 

 ざっと最近論文を検索してみましたが、今のところ有効な治療法は発表されてないようです。

 

 扁桃摘出術は効果があるとされていますが、どの程度でしょうか。最近、メタ分析が発表されていますので、確認しておきましょう。

メタ分析(Burton, 2014年) *1

研究の概要

  PFAPA症候群と診断された小児が扁桃摘出術を受けると、手術以外の治療に比べて、①症状が完全に寛解する割合が大きいか、または②発熱や随伴症状の重症度が軽くなるか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 該当する研究は2研究のみ。年齢は1.5~14歳。追跡期間は6~18か月。主な結果は以下の通り。

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手術では2人に1人治癒

 症状完全寛解する人は手術群で4.38倍多い傾向にあり、これは治療必要数では1.89(2人治療すると1人治癒する)となります。

 また、発熱や随伴症状の頻度も、手術群で劇的に改善がみられるようです。

 とはいっても、手術にはリスクもあること、自然治癒が期待できる疾患であることから、手術を受けるかどうかは慎重な判断が必要でしょう。

 

 周期性発熱については、今後も注視していきたいと思います。

 

*1:Burton MJ, Pollard AJ, Ramsden JD, Chong LY, Venekamp RP. Tonsillectomy for periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis and cervical adenitis syndrome (PFAPA). Cochrane Database Syst Rev. 2014 Sep 11;(9):CD008669. doi: 10.1002/14651858.CD008669.pub2. Review. PubMed PMID: 25209127.

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