地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

ポリファーマシーはなくすべきか?

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あれから新しい知見は?

 不適切な投薬は不適切だ? - 地域医療日誌 の追跡記事です。

 この記事を書いた時点で、不適切な薬をへらしても、入院が少なくなるなど具体的な予後改善につながるという研究はほとんどないことがわかりました。

 あれから1年、なにか新しい知見は発表されているでしょうか?

 調べてみたところ、2つのメタ分析がありました。

メタ分析(Johansson, 2016年) *1

研究の概要

 薬剤を4剤以上服用する65歳以上の高齢者に対して不適切な処方を減らす介入を行うと、介入なしに比べて総死亡は少なくなるかを検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 総死亡(18研究、6,003人の結果を統合)についてはオッズ比 1.02(95%信頼区間 0.84, 1.23)とほぼ同等。入院などその他の臨床アウトカムについてもほとんど有意差がみられなかった。

 

 このメタ分析では総死亡を検討していますが、介入してもほぼ同じという結果です。

メタ分析(Christensen, 2016年) *2

研究の概要

 入院患者に対して薬剤レビュー(medication review)を行うと、総死亡や再入院が少なくなるか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 総死亡(9研究、3218人の結果を統合)は、相対危険 1.02(95%信頼区間 0.87, 1.19)とほぼ同等。再入院(7研究、2843人の結果を統合)についても、相対危険0.95(95%信頼区間 0.87, 1.04)とほぼ同等。

 退院後の救急部への連絡(4研究、1,442人の結果を統合)についてのみ、相対危険 0.73(95%信頼区間 0.52, 1.03)と少ない傾向がみられた。

 

 こちらは入院患者に対する介入です。こちらも総死亡で検討されていますが、介入してもほぼ同じという結果です。

 

ポリファーマシーへの介入はうまくいっていない

 これまでの研究を総括すると、ポリファーマシーへの介入では効果がみられていません。少なくとも、ポリファーマシーに対する介入を行ったところで、入院が少なくなったり、総死亡が少なくなったりという効果はなさそうです。

 経済的効果はあるかもしれませんが。

 まあ、不必要な薬はなるべく使わないこと、開始してもやめる方法まで考えておくことが重要でしょう。

 ポリファーマシーの介入の方法については、もう少し工夫する必要があるでしょう。

 

*1:Johansson T, Abuzahra ME, Keller S, Mann E, Faller B, Sommerauer C, Höck J, Löffler C, Köchling A, Schuler J, Flamm M, Sönnichsen A. Impact of strategies to reduce polypharmacy on clinically relevant endpoints - a systematic review and meta-analysis. Br J Clin Pharmacol. 2016 Apr 5. doi: 10.1111/bcp.12959. [Epub ahead of print] Review. PubMed PMID: 27059768.

*2:Christensen M, Lundh A. Medication review in hospitalised patients to reduce morbidity and mortality. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Feb 20;2:CD008986. doi: 10.1002/14651858.CD008986.pub3. Review. PubMed PMID: 26895968.

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