地域医療日誌

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地域医療日誌

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血糖値を下げたほうが褥瘡は治りやすいですか?

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 「褥瘡が治りにくいのは、血糖値が高かったからでしょうか?」

 

 褥瘡を治療中の在宅患者さん。血糖値が下がりすぎていたため、前医から処方されていた経口血糖降下薬を一時中止していました。褥瘡がなかなかよくならない、という理由で糖尿病治療薬を再開したところ、その後に快方に向かったところで、ご家族からこのように言われました。

 まあ、血糖値が高いと感染も起きやすくなるでしょうし、創傷治癒が遅れると言われていますので、ごもっともかと思いますが、どうなんでしょうか。

 一緒に訪問診療に行った研修医に、ちょっと調べてもらうことにしました。

 疑問を定式化すると、このようになります。

 疑問の定式化:P▶ 褥瘡のある糖尿病患者が、E▶ 厳格な血糖コントロールを受けると、C▶ 緩徐な血糖コントロールに比べて、O▶ 褥瘡治癒までの期間は短縮するか、といったところでしょうか。

 

ランダム化比較試験はない?

 研修医が早速調べて、ひとつの論文を持ってきました。まず二次資料を当たったようですが、該当する記載がなかったようで、原著論文まで調べたとのこと。

 褥瘡治療は見当たらなかったため、糖尿病性足潰瘍に対する治療の総説論文でした。論文はこちら。

総説(Yazdanpanah, 2015年)*1

 該当部分を抜粋引用してみました。

Blood sugar control

  • In patients with DFU, glucose control is the most important metabolic factor. In fact, it is reported inadequate control of blood sugar is the primary cause of DFU[6,49,50].
  • Pomposelli et al[51] has indicated that a single blood glucose level > 220 mg/dL on the first postoperative day was a sensitive (87.5%) predictor of postoperative infection. Furthermore, the authors found that patients with blood glucose values > 220 mg/dL had infection rates that were 2.7 times higher than for patients with lower blood glucose values (31.3% vs 11.5%, respectively)[51].
  • In addition, it’s indicated that a 1% mean reduction in HbA1C was associated with a 25% reduction in micro vascular complications, including neuropathy[47].
  • However, to date, no RCT has been performed to determine whether improved glucose control has benefits after a foot ulcer has developed.

 

 術後初日の血糖値が220mg/dLを超えていると術後感染のリスクが高いとか、2.7倍になるとか、HbA1cが1%下がれば25%細小血管合併症が少ないとか、やや当て外れの内容でした。

 ただ、糖尿病性足潰瘍に対して血糖コントロールが有益かどうかについては、ランダム化比較試験が行われていない、と書かれています。

 

どこまでわかっているのか? 

 糖尿病性足潰瘍についてさえこのような状態ですから、褥瘡についてはなおさら検証されていないのではないか?と憶測されます。

 そこで、PubMedのClinical queriesを使って、"pressure ulcer glucose"などの用語でいくつか検索してみました。やはり、該当するものが見当たりません。

 最も近いものはこちらでしょうか。

メタ分析(Liu, 2012年)*2

P▶ 手術を受ける患者で
E▶ 糖尿病があると
C▶ 耐糖能障害のない人に比べて
O▶ 手術関連褥瘡の危険因子となるか
T▶ 予後、観察研究のメタ分析

《結果》★☆☆ *3
 観察研究のみ、6研究(2,453人)が該当。5研究が前向きコホート研究、1研究が症例対照研究。
術後褥瘡の発生
 E群:101人/563人(17.9%)
 C群:189人/1890人(10.0%)
 オッズ比 2.15(95%信頼区間 1.62, 2.84)

 

 糖尿病があると術後の褥瘡発生が2倍以上になる、という結果でした。手術は心疾患などが多かったようです。

 これはこれで、危険因子として予防策を立てることができるでしょう。しかし、こちらの臨床上の疑問の答えにはならないようです。

 

 ということで、今回は時間切れ。適切な論文が見つかりませんでした。あるのでしょうか?機会があれば、また探してみたいです。

 

*1:Yazdanpanah L, Nasiri M, Adarvishi S. Literature review on the management of diabetic foot ulcer. World J Diabetes. 2015 Feb 15;6(1):37-53. doi: 10.4239/wjd.v6.i1.37. Review. PubMed PMID: 25685277; PubMed Central PMCID: PMC4317316.

*2:Liu P, He W, Chen HL. Diabetes mellitus as a risk factor for surgery-related pressure ulcers: a meta-analysis. J Wound Ostomy Continence Nurs. 2012 Sep-Oct;39(5):495-9. doi: 10.1097/WON.0b013e318265222a. Review. PubMed PMID: 22864191.

*3:研究デザインの質を★☆☆低~★★★高の3段階で評価

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