地域医療日誌

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心臓病をとるかがんをとるか、という究極の選択

 
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 正月を跨ぐように、コレステロールの記事はさらにつづきます。

 なぜここまで拘ってかき立てるのか、今回のシリーズを読んでいただいている方はすでにお気づきかと思いますが、もう少しお付き合いください。

 

もうひとつの二次情報源から

 高齢者の脂質異常、もう少し調べてみましょう。

 頼りになる二次情報源、DynaMedから。最新情報が掲載され、論文ごとに箇条書きで書かれているため、短時間で必要な情報を探せます。

 本文の一部を抜粋引用します。

レビュー(DynaMed, 2017年) *1

in elderly

- statins have inconsistent evidence for effect on overall and cardiovascular mortality in patients aged 70-82 years
- statins may be associated with increased cancer risk in older patients (level 2 [mid-level] evidence)

 

高齢者の治療効果はまだはっきりしていない

 高齢者の治療については、ほとんどこの部分だけでした。

  • 70-82歳の患者にスタチンを投与して総死亡・心血管死亡が少なくなるかについてのエビデンスは定まっていない。
  • 高齢者にスタチンは癌発症を増やすかもしれない。

 

 さらに、DynaMedでこのレビューの関連部分を確認します。

レビュー(DynaMed, 2017年) *2

- statins have inconsistent evidence for effect on overall and cardiovascular mortality in patients aged 70-82 years

- based on 1 randomized trial and subgroup analyses of 2 randomized trials

- in patients aged 70-82 years with history of or risk factors for cardiovascular disease, pravastatin may reduce coronary mortality but may increase cancer mortality so no difference in overall mortality (level 2 [mid-level] evidence)

 

 ここに引用されていた論文を確認しておきましょう。高齢者(といっても、70-82歳ですが)に対する脂質低下療法の効果を検討した、数少ない研究です。

ランダム化比較試験(Shepherd, 2002年) *3

研究の概要

 心血管疾患の既往またはリスク(喫煙、高血圧、糖尿病など)のある高齢者がプラバスタチン 40 mg/日を服用すると、プラセボに比べて冠動脈疾患死亡+非致死性心筋梗塞+致死性・非致死性脳卒中の合計発症数は少なくなるかを検討した、治療についてのランダム化比較試験。

 

主な結果

 70~82 歳の高齢者5804人(女性 52%)が対象。

 心血管疾患の合計発症数はプラバスタチン群 14.1%、プラセボ群 16.2%で、相対危険 0.85(95%信頼区間 0.74, 0.97)とプラバスタチン群で少ない。

 なお、同時に検討した新たながんの発症ではプラバスタチン群 8.4%、プラセボ群 6.8%と、相対危険 1.25(95%信頼区間 1.04, 1.51)とプラバスタチン群で多い。

 

 こちらの論文はCMECジャーナルクラブでも紹介されています。

CMEC 高齢者でもコレステロール低下薬は飲んだほうがよいのでしょうか?

 

心血管疾患は2.1%少なく、がんば1.6%多い

 このランダム化比較試験では、心血管疾患の合計発症数は2.1%少なくなるが、新たながんの発症が1.6%多くなっていた、という結果です。

 この研究で主に検証する1次アウトカムが心血管疾患の発症に置かれていたため、このような要約になります。

 

総死亡は差がなかった

 それでは、死亡についてはどうなっているでしょうか。論文に書かれていますので、確認しておきましょう。DynaMedから引用します。

comparing pravastatin vs. placebo

- no significant differences in overall mortality (10.3% vs. 10.5%)

- 3.25% vs. 4.19% death from coronary heart disease (p = 0.043, NNT 107)

- 3.98% vs. 3.12% death from cancer (p = 0.082, NNH 116)

- 14.1% vs. 16.2% combined outcome of coronary heart disease death, myocardial infarction, or stroke (p = 0.014, NNT 48)

 

 総死亡ではプラバスタチン群 10.3%、プラセボ群 10.5%とほぼ同等でした。

 冠動脈疾患死亡では 107人治療して1人少なくなるという効果がみられていますが、がん死亡では116人治療して1人多くなるという害がみられています。

 これではたしかに効果と害はトレードオフ、心臓病予防をとるかがん予防をとるか、という結果になっています。

 

 一見効果がありそうに見えた高齢者の脂質異常の治療、考え直す必要があるかもしれません。

 

*1:DynaMed [Internet]. Ipswich (MA): EBSCO Information Services. 1995 - . Record No. 114250, Hypercholesterolemia; [updated 2017 Oct 16, cited place cited date here]; [about 43 screens]. Available from http://search.ebscohost.com/login.aspx?direct=true&db=dnh&AN=114250&site=dynamed-live&scope=site. Registration and login required.

*2:DynaMed [Internet]. Ipswich (MA): EBSCO Information Services. 1995 - . Record No. 115052, Statins for primary and secondary prevention of cardiovascular disease; [updated 2017 Oct 02, cited place cited date here]; [about 49 screens]. Available from http://search.ebscohost.com/login.aspx?direct=true&db=dnh&AN=115052&site=dynamed-live&scope=site. Registration and login required.

*3:Shepherd J, Blauw GJ, Murphy MB, Bollen EL, Buckley BM, Cobbe SM, Ford I, Gaw A, Hyland M, Jukema JW, Kamper AM, Macfarlane PW, Meinders AE, Norrie J, Packard CJ, Perry IJ, Stott DJ, Sweeney BJ, Twomey C, Westendorp RG; PROSPER study group. PROspective Study of Pravastatin in the Elderly at Risk. Pravastatin in elderly individuals at risk of vascular disease (PROSPER): a randomised controlled trial. Lancet. 2002 Nov 23;360(9346):1623-30. PubMed PMID: 12457784.

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