地域医療日誌

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RSウイルスは高齢者にも注意

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高齢者施設でのアウトブレイク

  RSウイルスは乳児の急性細気管支炎で話題になることが多いですが、高齢者がかかっても重症化することがあります。とくに、高齢者施設の入居者・職員のアウトブレイクについては、これまで多くの報告があります。

 

 代表的な総説から、高齢者施設の部分を抜粋引用しながらご紹介します。

レビュー(2000年)

Falsey AR, Walsh EE. Respiratory syncytial virus infection in adults. Clin Microbiol Rev. 2000 Jul;13(3):371-84. Review. PubMed PMID: 10885982; PubMed Central PMCID: PMC88938.

 

 In summary, RSV appears to be a predictable cause of wintertime respiratory illnesses in LTCF. Although rates vary from year to year and with individual institutions surveyed, a reasonable estimate is that RSV will infect 5 to 10% of residents per year, with rates of pneumonia and death of 10 to 20% and 2 to 5%, respectively.

  • 高齢者施設居住者の5-10%がRSウイルスに感染
  • 肺炎発症は10-20%
  • 死亡は2-5%

 

 高齢者施設だけではなく、地域に居住する高齢者についても同様です。インフルエンザばかりが話題になりますが、RSウイルスによる死亡率はインフルエンザと同程度というコホート研究もあります。

コホート研究(2005年)

Falsey AR, Hennessey PA, Formica MA, Cox C, Walsh EE. Respiratory syncytial virus infection in elderly and high-risk adults. N Engl J Med. 2005 Apr 28;352(17):1749-59. PubMed PMID: 15858184.

 

Among healthy elderly patients, RSV infection generated fewer office visits than influenza; however, the use of health care services by high-risk adults was similar in the two groups. In the hospitalized cohort, RSV infection and influenza A resulted in similar lengths of stay, rates of use of intensive care (15 percent and 12 percent, respectively), and mortality (8 percent and 7 percent, respectively).

後向きコホート研究(2003年)

Ellis SE, Coffey CS, Mitchel EF Jr, Dittus RS, Griffin MR. Influenza- and respiratory syncytial virus-associated morbidity and mortality in the nursing home population. J Am Geriatr Soc. 2003 Jun;51(6):761-7. PubMed PMID: 12757561.

 

RSV accounted for an annual average of 15 hospitalizations, 76 courses of antibiotics, and 17 deaths per 1,000 persons.

 

国内の高齢者施設では?

 国内では、高齢者施設でのアウトブレイクがまだ記憶に新しいところです。

RSウイルスと肺炎球菌が検出された老人福祉施設での集団発生事例-千葉県

 2013(平成25)年2月25日に県内老人福祉施設において、職員1名が呼吸器症状を示し、2月28日~4月4日までの間に利用者および職員で、発熱、咳嗽、咽頭痛といった呼吸器症状を訴えるものが、67名(利用者50名、職員17名)にのぼった。発症した利用者の平均年齢は、80.2歳(59~97歳)、職員の平均年齢は、47.2歳(21~66歳)であった。医療機関を受診し、肺炎と診断され入院したのは15名(すべて利用者)で、うち3名が肺炎により死亡した。

 

 67人の発症者のうち死亡は3人と死亡率4.5%。高齢者施設でのアウトブレイクはおそろしいです。

 

 むろん、高齢者のRSウイルス抗原検査は一般的には行われていません(保険適応外)ので、このように明るみに出ることのほうが稀でしょう。しかし、実態はまったくわかっていません。全国の高齢者施設でいったいどのくらい発生しているのか、試算するだけでも恐ろしいです。

 

まずはRSを疑え

 症状だけではわからないことがあります。まずは、インフルエンザだけではなく、RSウイルスを考えること。地域の流行情報を把握すること。(小児の情報しかありませんが、参考にはなるでしょう。)

 特に流行期間には、標準予防策の徹底発症者は隔離を考えること。

 インフルエンザ抗原検査が陰性だからといって安心しない。アウトブレイクを予防する基本は、みな同じです。

 

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