地域医療日誌

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花粉症に減感作療法(皮下注)は?

 

質問

 花粉症に注射の治療はどうですか?

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SLITの効果

 例年のことですが、花粉症の季節になると、今年はきついとか、楽だとか、花粉症がまるであいさつ代わりのように、話題にのぼります。

 

 さて、さっそく冒頭の質問から。

 スギの舌下減感作療法(SLIT)が保険適用となって数年経っています。その効果はどう評価されているのでしょうか。 

 2009年にブログ記事でSLITのメタ分析(2003年)を紹介したことがありました。

参照:SLITの効果 - 地域医療日誌 by COMET

 その後はあまり追跡できていませんでした。

 

 舌下だけではなく、皮下注射の減感作療法(SCIT)も保険適用となっています。それぞれ効果はどうなっているでしょうか。ざっと論文を漁ってみます。

 

花粉症に対する減感作療法の効果

 2012年に花粉に対する減感作療法のメタ分析がありました。確認しておきましょう。

メタ分析(Di Bona D, 2012年) *1

 まずはこの論文の背景について、導入部から引用します。

Several clinical trials have reported the efficacy of both SCIT and SLIT compared with placebo for seasonal allergic rhinitis to grass pollens. In a recently published meta-analysis, we showed that SLIT is an effective treatment for seasonal allergic rhinitis to grass pollens, especially in adults, but its clinical benefit was modest. SLIT was also shown to be safe and well tolerated. The latter advantages explain the increasing use of SLIT seen in Europe in recent years: improved safety and easy administration compared with SCIT. However, the relative efficacy of SCIT and SLIT has not yet been determined. 

 

 減感作療法はSCIT、SLITともに、プラセボに比べて花粉症に効果があると報告されています。SLITは花粉症に効果があるものの差は小さいとされていますが、より安全とされています。

 しかし、SCITとSLITを比較した効果についてはまだはっきりしていないようです。

 そこで、比較した研究をレビューし、その結果を統合しています。 

研究の概要

 花粉症の人に減感作療法(SLITまたはSCIT)を行うと、プラセボに比べて自覚症状が少なくなるかを検討した、二重盲検ランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 36のランダム化比較試験を採択(減感作療法群 3014人、プラセボ群 2768人)。SLIT 22研究(うち舌下液10研究、舌下錠12研究)、SCIT 14研究。SLITとSCITを直接比較した研究はなかった。

 結果は標準化平均差 *2 で統合。

 症状スコアについては、SLIT舌下液 SMD -0.25(95%信頼区間 -0.45, -0.05)、舌下錠 SMD -0.40(95%信頼区間 -0.54, -0.27)、SCIT SMD -0.92(95%信頼区間 -1.26, -0.58)といずれも減感作療法群で症状が少なかった。

 

皮下注のほうが効果が大きい可能性

 症状スコアについては、いずれの減感作療法でも症状が少ないという結果でした。

 プラセボ群との差はいずれもあまり大きなものではありません。SCIT群でSMD -0.92(偏差値で9.2)と3群の中では差が大きくなっていましたが、直接比較ではありませんので、単純に結果を比較することはできません。

 

 このメタ分析の結果からは、皮下注のほうが効果が大きい可能性がある、というところまででしょう。

 SLITは思ったよりも効果が小さいように思えます。

 

*1:Di Bona D, Plaia A, Leto-Barone MS, La Piana S, Di Lorenzo G. Efficacy of subcutaneous and sublingual immunotherapy with grass allergens for seasonal allergic rhinitis: a meta-analysis-based comparison. J Allergy Clin Immunol. 2012 Nov;130(5):1097-1107.e2. doi: 10.1016/j.jaci.2012.08.012. Epub 2012 Sep 27. PubMed PMID: 23021885.

*2:標準化平均差(standardized mean difference: SMD):平均の差を標準偏差で除したもの

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