地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

突発性難聴にはいい薬がないのですか?

 

突然難聴になる病気

 

 40-60歳に突然難聴で発症する突発性難聴(sudden sensorineural hearing loss, SSNHL)。人口10万人あたり27.5人に発症する病気ですが、原因は特定されていません。

 聴力は自然回復することもあります(65%)が、今のところ聴力を回復させる有効な治療が見つかっていません。

 病気についてはこちらをご参照ください。

難病情報センター | 突発性難聴

 

有効な治療は?

 

 難病情報センター *1 にはこのように記載があります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

(略)突発性難聴に対しては様々な治療法が検討されていますが、どのような治療法が最も有効であるかは未だ明らかではありません。厚生労働省研究班で、様々な薬剤の突発性難聴に対する有効性を調査いたしましたが、どの薬剤が有効かは結論がでませんでした。従って、現時点では発症時の状況や臨床所見、既往歴などを総合的に判断して治療法を決定しています。

 

 日本語としてわかりにくい表現となっていますが、要するに「今のところ有効な治療はない」ということです。実際にはステロイド投与が経験的に行われることが多いでしょう。

 

 本当に有効な治療がないものか、代表的な情報源 *2ダイアップ(Dy-Up-Pu)を使って確認してみることにします。

 参考までに、ダイアップについてはこちらの記事をご参照ください。

 

DynaMed *3

  • advise patients about nature of condition, benefits and risks of medical treatment, and limitations of evidence regarding efficacy (AAO-HNSF Strong recommendation, Grade B)

 

 治療の項の概説にはガイドライン *4 が引用され、治療の有効性の根拠には限界があることが書かれています。

 Medications:の冒頭では、2010年のメタ分析 *5 が引用されており、このような記載となっています。

medical therapy may not provide significant benefits for idiopathic sudden hearing loss

 

 明確な効果が期待できる薬物療法はないことがわかります。治療としてはステロイド投与(全身投与、鼓室内投与)、ステロイドに亜鉛やマグネシウムを追加、抗ウイルス薬、高圧酸素療法などその他の治療について書かれています。

 

UpToDate *6

TREATMENT — Strong evidence for the efficacy of any treatment option for patients with sudden sensorineural hearing loss (SSNHL) is not available. Glucocorticoids are considered first-line therapy for SSNHL and may be administered systemically (generally orally) or locally via intratympanic installation.

 

 やはり同じような記載でした。ステロイドが第一選択薬と考えられていることが書かれています。

 漢方薬のシステマティック・レビュー *7 が紹介されていました。

 

 大体ここまででほぼ決着がついたところですが、一応PubMedも検索しておきましょう。

 

PubMed *8

 PubMedはもうみなさんお馴染みの、Clinical Queriesから検索します。

 "sudden sensorineural hearing loss"でシステマティック・レビューが65件、臨床研究(Therapy/Narrow)が63件検索されました。

 システマティック・レビューは、ステロイド鼓室内投与、鍼治療などが2015年に発表されていますが、ざっと見たところ、残念ながら結論を大きく変えるようなものはないようです。

 

 システマティック・レビューがいくつかあるようですので、いずれ確認しておきたいと思います。

 

つづく 

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