今回は本の紹介です。
もしかするとこのブログの読者のみなさんは、すでに入手されたり、読破された方もおられるかと思います。重版となったようですが、遅ればせながらご紹介いたします。

薬のデギュスタシオン 製薬メーカーに頼らずに薬を勉強するために
- 作者: 岩田健太郎
- 出版社/メーカー: 金芳堂
- 発売日: 2015/11/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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51項目にわたって、薬同士を比較するという視点で解説されています。
科学的根拠に基づくものもあれば、経験的なものもあります。製薬企業の情報に流されないように、というのが基本コンセプトです。
たとえば、「アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の比較」のポイントを一部引用します。
- 製薬メーカーはACEよりARBを売りたい。
- 高血圧、心不全に対してACEとARBに明確な差はない。
- 薬価を考慮すればACEの使用を優先させるのが合理的である。
- ディオバンに関わる論文不正、捏造事件はARBを売りたい製薬メーカーの取り組みの一角に過ぎない。
ぜひとも、製薬メーカーに頼らずに薬を勉強しておきたいです。
編者の岩田健太郎さんの「あとがき-製薬メーカーとの付き合い方」では、製薬企業からの接待という医療の問題構造の一端について指摘しています。
ここも必読です。一部引用します。
結局のところ、「製薬業界を全否定するのは間違っている」とのたまう連中のほとんどは、単に製薬業界からの接待を正当化する方便として、そのようなセリフを使って言い訳しているにすぎません。そうやって、製薬業界が主催する薬の説明会(と称するお弁当配布会)や、新薬発売1周年記念講演(と称するパーティー)や、社内勉強会の講師(と称する接待)にのこのこ出かけるエクスキュースにしているのです。
もちろん、説明会の後には不自然なほどその薬の処方が増える、というわけです。
医者は薬を施設に採用したり、処方したり、あるいは講演で宣伝したりする絶対的な権限を持っています。製薬業界はこの権限を最大限に利用し、自社利益を追求しようとしています。医療・医学において診療界と製薬業界は対等な立場にあるはずですが、金銭的利益という観点からは両者にはラテラリティーが存在します。そのラテラリティーを利用して、製薬業界は医者を誘惑し、医者はそれに見事にひっかかるのです。
久しぶりにわくわくする本です。少しずつ読み進めたいと思います。

薬のデギュスタシオン 製薬メーカーに頼らずに薬を勉強するために
- 作者: 岩田健太郎
- 出版社/メーカー: 金芳堂
- 発売日: 2015/11/11
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