地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

診療所も変わった

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって、社会全体が大きく変革しようとしています。ひとつの時代が通り過ぎたようです。

 医療の姿も大きく変貌しました。ここでは、診療所における診療の変化について、書いておきたいと思います。

 

電話初診の解禁

 2020年4月、電話による初診患者の診療が初めて認められました*1。これまでは直接診察せずに診療する行為は禁止されていましたから、緊急的な措置とはいえ画期的な変化です。

 迅速な判断、ありがとうございました。

 このことによって患者の利便性が向上しただけではなく、COVID-19(疑いを含む)患者が医療機関を受診することを、ある程度回避することができました。

 反面、電話問診のみでは適切に判断できない、という声もあります。診断の誤りやマネージメントの失敗などが起こりえます。

 

一般診療における制約

 COVID-19が疑われる患者が受診した場合、防護具を着用した医師が一定の制約下で診察を行うことになります。そのため、もし実際に診察したとしても、不十分な情報で判断せざるを得ない、ということになります。

 そのうえ、実際の診察場面では、無症状の患者を含め、どこまでCOVID-19を疑うのか、どこまで対策を講じるのか、という問題が常につきまといます。

 COVID-19はどこから現れるのか、わからないのです。

 いずれにせよ、救急医療・集中治療や病院医療だけではなく、一般診療においても大きな制約や負担が生じていることに違いありません。

 

利用者の意識改革

 COVID-19の拡大によって、利用者側にも大きな意識改革が起こっていると感じます。

 特に緊急度の低い健康問題については、なるべく医療機関に足を踏み入れるのを避けたい、できれば受診せずに済ませたい、といった受診抑制の意向がみられていることが、データからも裏づけられたようです。*2

 医療機関に受診できなくなったために、病状が悪化する、予後に影響が出るという事態は避けたいのはもちろんのことです。

 しかし、多くの軽症患者にとっては、医療にかからなくてもあまり大きな問題はなかった、というケースが多かったのではないかと推察されます。

 

医療依存から離脱する好機になる

 「医療からもう少し距離を置くべき」と主張してきたぼくにとっては、期せずして世の中全体がそのような機運に変わってきたことを、好意的にとらえられています。特にかぜなどの自然治癒が期待できる軽症の急性疾患については、医療依存から離脱できる好機となるはずです。

 多くの軽症患者を診療してきた診療所にとっては、役割の見直しが迫られることでしょう。 これが時代の大きな転換点になるかもしれません。

 受診抑制によってどのような影響が出ているのか、現時点ではデータがありません。今後よく検証されるべき課題であり、注目したいと思います。

*1:厚生労働省医政局医事課 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課. 新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて.(事務連絡 令和2年4月 10 日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000620995.pdf

*2:一例として
一般社団法人日本病院会. 新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第1四半期)-結果報告-. 
http://www.hospital.or.jp/pdf/06_20200806_01.pdf
今回の調査により明らかになったことは、全病院の外来患者・入院患者共に4月は大幅に減少したが、5月は更に悪化しており、6月には入院・外来患者数は、僅かに回復の兆しは見えるものの、医業損益は大幅な赤字が継続していた。

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