地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

医療法一部改正―広告規制の見直し

f:id:cometlog:20170303020812j:plain

 

医療法の一部改正

 2017年6月14日、「医療法等の一部を改正する法律」が厚生労働省医政局長から公布されました。そのなかに「医療に関する広告規制の見直しに関する事項」が含まれていますので、取り上げておきたいと思います。

 

 広告規制については、以前取り上げたことがあります。少し関係がありますから、リンクをつけておきます。関連記事はこちら。

医薬品等の広告規制に違反する? - 地域医療日誌

どこからが広告で、どこからが誇大広告なのか? - 地域医療日誌

 

 もうすでに遠い記憶ですが、NHKのある番組で放送された医療情報に端を発した問題について、書いた記事でした。

 この記事では、医薬品医療機器等法について取り上げていました。

 

ホームページの規制が追加された

 ちょっと混乱しがちですが、今回の広告規制の見直しは医薬品医療機器等法ではなく医療法の一部改正であり、さきほどの問題とは別のものです。

 通知の内容について、本文を引用しておきます *1

(3) 医療に関する広告規制の見直しに関する事項

ア 何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならないものとすること。(第6条の5第1項関係)

イ アの場合には、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を阻害することがないよう、広告の内容及び方法が、次に掲げる基準その他厚生労働省令で定める基準に適合するものでなければならないものとすること。(第6条の5第2項 関係)

 ① 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと。

 ② 誇大な広告をしないこと。

 ③ 公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと。

ウ アの場合において、医師又は歯科医師である旨、診療科名等の第6条の5第3 項各号に掲げる事項以外の広告がされても医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として厚生労働省令で定める場合を除いては、同項各号に掲げる事項以外の広告をしてはならないものとすること。(第6条の5第3項関係)

エ 助産師の業務又は助産所に関しても、アからウまでと同様の規定を設けること。 (第6条の7関係)

 

 どこがどう改正されたのでしょうか?

 一読しただけでは、意味がよくわからないかもしれません。

 従来の広告規制と新たに追加された規制について、資料に要点がまとめられていました。一部抜粋して引用しておきます。

【従来の規制】

  • 限定的に認められた事項(医師名、診療科名、提供される医療の内容等)以外は、広告禁止。
  • 虚偽広告に対して罰則が課される。(直接罰)
  • 誇大広告等に対しては、中止・是正の命令等ができ、当該命令違反に対する罰則が課される。(間接罰)
  • ただし、医療機関のウェブサイトについては原則、広告として取り扱っていない。

【新たな規制】

  • 医療法を改正し、医療機関のウェブサイト等についても、虚偽・誇大等の不適切な表示を禁止し、中止・是正命令及び罰則を課すことができるよう措置する。ただし、患者が知りたい情報(自由診療等)が得られなくなるとの懸念等を踏まえ、広告等可能事項の限定を解除できる場合 *2 を設ける。

 

 つまり、従来は規制対象外だった医療機関のウェブサイトに対しても新たに規制を加え、それも罰則まで適用される、という改正となっています。

 

 比較広告、誇大広告、客観的事実であることを証明できない内容の広告、公序良俗に反する内容の広告を禁止、とあります。

 これは、美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数が増加したことが背景となっているようです。

  

 もちろん、明らかな虚偽・誇大広告は大きな問題ですから規制は当然です。しかし、誇大かどうかの判断は主観的なものであり、線引きが曖昧になりがちでしょう *3

 比較広告については、「他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告」のようなTV番組も散見されます。

 

 法律だけ改正して、事実上広告が野放し状態になっているのであれば、全く効果がありません。

 規制を拡大するのであれば、客観的基準を明確に示し、公平に規制していただきたいものです。

 

*1:医療法における病院等の広告規制について |厚生労働省

*2:患者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合は、省令で限定列挙規制の例外とすることができる。詳細については、医療関係者、消費者代表等を含む検討会においてご議論いただく予定(一定の条件を満たすウェブサイト等を想定)。

*3:どこからが広告で、どこからが誇大広告なのか? - 地域医療日誌

 Copyright © 2003, 2007-2021 地域医療ジャーナル