地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

GERDの人は生活でどんなことに注意すればよいですか?

薬以外でGERDを治せるか?

 

 胃食道逆流症(GERD)が疑われる症状がある方に、質問されました。

生活ではどんなことに注意すればよいでしょうか?

 

 薬を使わずに症状をおさえるには、どんな方法があるでしょうか。すぐに思いつくのは減量ですが、さほど太っている人ではありませんでした。あとは、早食いや炭酸飲料など・・・ちょっと思いつきませんし、本当に効果があるかどうかわかりませんでしたので、調べてみることにしました。

 

検索はまずDynaMed

 

 ここですぐGoogleに飛びつかないことです。検索すると、製薬企業の宣伝サイトに行く羽目になります。(時間のムダ)

 

 まずは、信頼できる二次情報源、DynaMed *1 へ。有料サービスですが、時間がないときには重宝します。

 

 "Gastroesophageal reflux disease" の "Causes and risk factors" をざっと流し読みするだけでも、

chocolate, fatty meals,

protein meal, 

carbonated drinks,

snoring and daytime sleepiness (Epworth sleepiness scale score), insomnia, hypertension, asthma, and usage of benzodiazepines

eating quickly

 

など、気になるものが次々と。(実際には効果があるかどうかわかっていないものを含む。)

 

 チョコレート?

 本当にGERDの原因になるのでしょうか?

 

禁チョコでGERDは改善するか?

 

 残念ながら、DynaMedには引用文献はついていませんでした。そこで、PubMedで検索してみることにしました。

 

 PubMedはClinical Queries*2 から。"chocolate Gastroesophageal reflux disease" と検索用語を入力してsearch。

 何と、システマティックレビュー1件に絞られてしまいました。(こんなに上手くいくことは、めったにありません。)

f:id:cometlog:20140725222345p:plain

 

 貴重なシステマティックレビューを読んでみることにします。

システマティックレビュー(Kaltenbach, 2006年)*3

  • P▶ GERDと診断された患者に
  • E▶ 生活スタイルを修正すると
  • C▶ 修正なしと比べて
  • O▶ GERDの症状、食道内pH、下部食道括約筋部(LES)圧などは改善するか
  • T▶ 治療、システマティックレビュー

《結果》※※※~※

 検討された研究は16研究しかなく、食事の対策について効果を検討した研究はなかった。禁煙や禁酒でさえも症状改善がみられなかった。

 減量はpHや症状改善がみられた。減量とベッドの頭部挙上の組み合わせでも効果がみられた。

 

 2006年の時点では、食事の改善や禁煙・禁酒では効果がみられていない、ということがわかりました。

 

 注目の禁チョコレートはどうでしょうか。本文から引用します。

Chocolate is frequently implicated as a provoker of GERD. There are limited data that chocolate may affect esophageal pH and LES profiles. One early uncontrolled study (63) found that ingestion of 120 mL of chocolate syrup by 9 controls caused LESP to significantly decrease compared with baseline measurements (P.01). In 7 patients with typical GERD symptoms, Murphy and Castell (64) found greater acid exposure time after chocolate ingestion compared with ingestion of a test drink of equivalent osmolality and caloric value (P = .04). No studies have addressed the effect of chocolate abstinence on GERD symptoms.

 

 残念ながら、禁チョコで症状改善がみられるかを検討した研究はない、とのことでした。

 

減量とHOB挙上で

 

 減量には一定の効果が認められるようです。ベッドの頭部(Head of bed; HOB)挙上については、ランダム化比較試験が紹介されています。

Stanciu and Bennett (80) compared the effect of different body positions (sitting, lying, and elevated HOB) in 63 patients with GERD symptoms using pH monitoring and showed that compared with patients who slept flat, patients who slept with an elevated HOB (using 28 cm blocks) had significantly fewer reflux episodes, shorter reflux episodes, faster acid clearing, and fewer reflux symptoms.

 

 28cmのブロックを使用した頭部挙上という体勢は、寝心地がよいかどうかわかりませんが、症状改善がみられるとするランダム化比較試験があるようです。

 

GERDの人は生活でどんなことに注意すればよいですか?

生活スタイル修正によってGERDの症状が改善するかを検討した研究は少ない。

食事全般の対策や禁煙・禁酒、禁チョコについては、効果が確認されていない。

減量とベッドの頭部挙上については、一定の効果が期待できるかもしれない。

 

*1:臨床系EBM情報検索ツール DynaMed 日本語ページ

*2:PubMed Clinical Queries

*3:Kaltenbach T, Crockett S, Gerson LB. Are lifestyle measures effective in patients with gastroesophageal reflux disease? An evidence-based approach. Arch Intern Med. 2006 May 8;166(9):965-71. Review. PubMed PMID: 16682569.

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