地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

広告とは?― 改正医療法による医療広告ガイドラインから

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 情報提供というよりは、単にぼくの情報整理と備忘録です。以前の記事 医療法一部改正―広告規制の見直し - 地域医療日誌 のつづきになります。

 

改正医療法が施行予定

 2017年6月に公布された改正医療法が2018年6月に施行されます。このなかで、医療広告規制の方針が見直されています。

 ウェブサイトに大きな影響がある変更となりそうですので、よく確認しておきたいと思います。

 

医療広告ガイドライン (仮称)が公開

 第8回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会 にて「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(医療広告ガイドライン)(仮称)」が検討されています。 

 詳細はこちらの中の「資料」をご参照ください。(この記事を掲載時点では、まだ議事録は公開されていません。)

www.mhlw.go.jp

 

広告規制の趣旨

 まずは改正された広告規制の趣旨について、書かれています。要点は以下のとおり。

  • 医療法等の一部を改正する法律(平成 29 年法律第 57 号)により医療機関のウェ ブサイト等についても、他の広告媒体と同様に規制の対象とし、虚偽又は誇大等の表示を禁止し、是正命令や罰則等の対象とすることとした。
  • 規制対象を「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」に拡大
  • 患者等に正確な情報が提供されその選択を支援する観点から、医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合については、幅広い事項の広告を認めることとした。

 

 医療機関のウェブサイトが新たに広告規制に含まれて罰則等の対象となったこと、広告の定義を拡大して規制対象を広げたこと、条件を満たした情報については規制緩和する、といった概要になるでしょうか。

 規制される広告の概要は以下のとおりです。

  • 内容が虚偽にわたる広告(罰則付き)
  • 比較優良広告
  • 誇大広告
  • 公序良俗に反する内容の広告
  • 患者その他の者の主観又は伝聞に基づく体験談の広告
  • 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告

 

広告の2要件

 以前、広告の3要件について記事 *1 にしたことがあります。

 いわゆる、誘引性、特定性、認知性です。

 この広告の定義が拡大されています。ガイドラインから抜粋引用します。

 次の①及び②のいずれの要件も満たす場合に、広告に該当するも のと判断されたい。

① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)

② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

 

 誘引性、特定性 のみとなっています。

 認知性がなくなったことから、医療機関のウェブサイト、パンフレット、メールマガジンなども対象となるようです。

 特定の医療機関に受診を促すような情報は、すべて広告とみなされることになります。十分注意しましょう。

 

何人も規制される

 医療に関する広告規制の対象者については、このように記載されています。

 法第6条の5第1項において「何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引する為の手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない」とあるように、医師若しくは歯科医師又は病院等の医療機関だけではなく、マスコミ、広告代理店、いわゆるアフィリエイター、患者又は一般人等、何人も広告規制の対象とされるものである。

 また、日本国内向けの広告であれば、外国人や海外の事業者等による広告(海外から発送され るダイレクトメールやEメール等)も規制の対象である。

 

学術論文や新聞記事は対象外

 通常、医療に関する広告とは見なされないものの具体例が挙げられています。

(1) 学術論文、学術発表等

 学会や専門誌等で発表される学術論文、ポスター、講演等は、社会通念上、広告と見なされることはない。これらは、本指針第2の1に掲げた①及び②の要件のうち、①の「誘引性」を有さないため、本指針上も原則として、広告に該当しないものである。 ただし、学術論文等を装いつつ、不特定多数にダイレクトメールで送る等により、実際には特定の医療機関(複数の場合を含む。)に対する患者の受診等を増やすことを目的としていると認められる場合には、①の「誘引性」を有すると判断し、①及び②の要件を満たす場合には、広告として扱うことが適当である。

(2) 新聞や雑誌等での記事

 新聞や雑誌等での記事は、本指針第2の1に掲げた①及び②の要件のうち、①の「誘引性」を 通常は有さないため、本指針上も原則として、広告に該当しないものであるが、費用を負担して記事の掲載を依頼することにより、患者等を誘引するいわゆる記事風広告は、広告規制の対象となるものである。

 

 学術論文・発表が対象外となるのは当然でしょう。さらには、費用を負担して掲載しない限り、新聞・雑誌の記事も対象外とされているのですね。

 

限定解除の要件

 広告可能事項の限定解除の要件が示されています。該当部分を抜粋引用いたします。

1 基本的な考え方

法第6条の5第3項の規定により、法又は広告告示により広告が可能とされた事項以外は、広告してはならないこととされているが、同項の規定により、患者が自ら求めて入手する情報については、 適切な情報提供が円滑に行われる必要があるとの考え方から、規則第1条の9の2に規定する要件を満たした場合、そうした広告可能事項の限定を解除し、他の事項を広告することができる(以下「広 告可能事項の限定解除」という。)。なお、こうした広告可能事項以外の事項についても、法第6条 の5第2項及び規則第1条の9に定める広告の内容及び方法の基準に適合するとともに、その内容が虚偽にわたってはならない。

2 広告可能事項の限定解除の具体的な要件

 広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の①~④のいずれも満たした場合とする。 ただし、③及び④については自由診療について情報を提供する場合に限る。

医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること

② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること

③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること

④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

①は、ウェブサイトのように、患者等が自ら求めた情報を表示するものであって、これまで認知性 (一般人が認知できる状態にあること)がないために医療広告の規制の対象とされていなかったウェブサイトの他、メルマガ、患者の求めに応じて送付するパンフレット等が該当しうるものであること。なお、インターネット上のバナー広告、あるいは検索サイト上で、例えば「癌治療」を検索文字として検索した際に、スポンサーとして表示されるものや検索サイトの運営会社に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にしたものなどは、①を満たさないものであること。

②は、表示される情報の内容について、問い合わせ先が記載されていること等により、容易に照会 が可能であり、それにより患者と医療機関等との情報の非対称性が軽減されるよう担保されている場合を指す。 なお、問い合わせ先とは、電話番号、E メールアドレス等をいう。

 

 医療に関する適切な選択に資する情報源については、広告可能事項の限定が解除されます。その際には、問い合わせ先が記載されている必要があります。

 なお、広告可能事項とは医療法 *2 に示されています。

 

 ウェブサイトやブログで情報提供する際には、虚偽や誇大な記述を避けるのは当然のこと。さらに、誘引性・特定性に十分配慮しながら、医療に関する適切な選択に資するような情報提供をしていくべきでしょう。

 ひきつづき、注視していきたいと思います。

 

*1:どこからが広告で、どこからが誇大広告なのか? - 地域医療日誌

*2:医療法等の一部を改正する法律(平成二十九年法律第五十七号)広告規制の見直し関係抜粋
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2018/267/doc/20180214_shiryou1_2.pdf

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