地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

適度な飲酒は体にいい?

アルコールと死亡の関係

 

「適量飲酒は体にいい」という話はよく耳にしますが、それは本当でしょうか?

 適量とはどのくらいの量でしょうか? 

 

 なお、このブログでは「体にいい=総死亡が少ない」という定義が前提 *1 となります。たとえば、肝機能やコレステロール値、糖尿病の発症などの指標がよくなっていたとしても、死亡が多くなるようなら元も子もないからです。

 

 最近、BMJ Open誌 *2 にひとつの論文が掲載されましたので、ご紹介します。

コホート研究(Ferrari, 2014年)*3 

  • P▶ がん、糖尿病、心臓病、脳卒中の既往がない男女について
  • E▶ アルコール摂取量が多いと
  • C▶ アルコール摂取量が少ないのに比べて
  • O▶ 総死亡は多いか
  • T▶ 予後、コホート研究

《結果》※※

10カ国、380,395人が対象。年齢中央値は女性52歳、男性53歳。

平均12.6年の追跡。

アルコール換算で0.1~4.9g/日の摂取を1とすると、

女性では30g/日以上の摂取 ハザード比 1.27(95%信頼区間 1.13-1.43)

男性では60g/日以上の摂取 ハザード比 1.53(95%信頼区間 1.39-1.68)

 

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総死亡のハザード比から作図。横軸がアルコール摂取量で以下の通り。

1:飲酒なし、2:0.1~4.9g/日、3:5~14.9g/日、4:15~29.9g/日

5:女性 30g/日以上、男性 30~59.9g/日

6:男性 60g/日以上

 

 アルコール摂取量の評価は自記式の調査票によるもので、自己申告となっています。

 また、この論文では他に、アルコール関連がん死亡、心血管死亡なども検討していますが、ここでは割愛します。原著論文をご参照ください。

 

女性5g、男性15g

 

 結果はきれいなJカーブとなっています。

 最も総死亡が少ないのは、女性では5g/日未満、男性では15g/日未満となっており、飲酒なしと比べても少なくなっています。

 

 適量飲酒はだいたいこのあたり、といったところでしょうか。やはり、飲まないより、少し飲んだほうがいい、というのは確からしいです。

 

 しかし、ここで喜ぶのはまだ早いかもしれません。

 

 アルコール摂取量の計算は以下の計算式を使います。比重の0.8をかけるのを忘れずに。

アルコール摂取量(g)=飲んだ分量 ✕ アルコール度数/100 ✕ 0.8

 

 男性の15g/日未満というのは、アルコール度数5%のビールで350mLまでです。女性はその3分の1。

 適量をこえてしまえば、一気に右肩上がりです。男性では60g/日以上になれば、総死亡1.5倍となってしまいます。

 

 なかなか適量飲酒は少なくて厳しいものかもしれません。習慣飲酒には、深酒にならぬよう十分注意を。

 

適度な飲酒は体にいい?

アルコール摂取量と総死亡の関係はJカーブ。

飲酒なしより少量飲酒のほうが総死亡が少ない。

女性5g/日未満、男性15g/日未満で総死亡が最も少ない。

男性60g/日以上の多量飲酒では、総死亡は少量飲酒の1.5倍。

 

*1:これを真のアウトカムとよんでいます。

*2:BMJ Open - BMJ Journals

*3:Ferrari P, Licaj I, Muller DC, Kragh Andersen P, Johansson M, Boeing H, Weiderpass E, Dossus L, Dartois L, Fagherazzi G, Bradbury KE, Khaw KT, Wareham N, Duell EJ, Barricarte A, Molina-Montes E, Sanchez CN, Arriola L, Wallström P, Tjønneland A, Olsen A, Trichopoulou A, Benetou V, Trichopoulos D, Tumino R, Agnoli C, Sacerdote C, Palli D, Li K, Kaaks R, Peeters P, Beulens JW, Nunes L, Gunter M, Norat T, Overvad K, Brennan P, Riboli E, Romieu I. Lifetime alcohol use and overall and cause-specific mortality in the European Prospective Investigation into Cancer and nutrition (EPIC) study. BMJ Open. 2014 Jul 3;4(7):e005245. doi: 10.1136/bmjopen-2014-005245. PubMed PMID: 24993766; PubMed Central PMCID: PMC4091394.

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