地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

花粉症に効く食べ物はないですか?(1)

 

 花粉症シーズン真っ只中ですが、みなさん今年の症状はいかがでしょうか?

「花粉症に効く食べ物とか、ないですか?毎年大変で・・・。」 

 

 外来でいただいた質問について、少し調べてみました。食品でということでしたので(といっても臨床研究では抽出物や錠剤が使用されていますが)、検証されているものはこのあたりでしょうか。

  • カシス
  • 西洋フキ
  • ヨーグルト
  • トマト

 

 他にもまだあるかもしれません。(論文があったらおしえてください。)

 どの程度の効果があるのでしょうか?実際の論文を順に確認してみましょう。

 

カシスは無効

 

 日本人の研究です。クロスグリ(black currant)から抽出した多糖類、通称カシス多糖類(cassis polysaccharide, CAPS)の効果を検討したランダム化比較試験です。

ランダム化比較試験(Dejima K, 2007年)*1

  • P▶ 花粉症症状がある日本人に
  • E▶ クロスグリジュースから抽出したCAPS 180mg錠を1日2回投与すると
  • C▶ プラセボ錠投与に比べて
  • O▶ 下鼻甲介の腫脹、QOLは改善するか
  • T▶ 治療、ランダム化比較試験

《結果》※※※

 28人をランダム割付(各群14人)

うち8人がプロトコール違反などで除外となり、20人で検討

下鼻甲介の腫脹(0-3点)前後のスコア差:CAPS 0.44、プラセボ 1.11 

QOLスコアにも有意差なし

 

 小規模研究ですが、脱落が多く、さらには効果もなかったという残念な結果になっています。

 

 この研究で用いられたQOL調査票は日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票(JRQLQ)です。調査票はこちら。*2

 

西洋フキは有効??

 

 西洋フキ(butterbur、学名Petasites hybridus)に効果があるとするランダム化比較試験があります。

ランダム化比較試験(Schapowal A, 2004年)*3  

  • P▶ 間欠性のアレルギー性鼻炎がある成人に
  • E▶ Butterbur Ze339錠1日3回(高用量)または1日2回(低用量)を投与すると
  • C▶ プラセボに比べて
  • O▶ 自覚症状(鼻汁、鼻閉、目や鼻のかゆみ、くしゃみの4症状)は改善するか
  • T▶ 治療、ランダム化比較試験

《結果》※※※

 168人(高用量60人、低用量65人、プラセボ61人)全員解析に組み入れ

プラセボに比べて、Butterbur Ze339群で自覚症状が有意に改善。

f:id:cometlog:20140329020404p:plain

 

  量反応関係も認められ、特に副作用もみられないため、この論文では西洋フキは効果あり、という結論になっています。

 

 ところが、 2012年に厚生労働省からバターバー(西洋フキ)を含む食品の摂取に関する注意喚起*4 *5 *6が出ています。

 今般、英国医薬品庁(MHRA)は、英国内で販売されているハーブ医薬品として未承認のバターバーを含む製品について、肝毒性と関連する疑いがあることを踏まえ、事業者に対して自主回収するよう依頼するとともに、消費者に対して使用を中止するよう注意喚起を行いました。

 バターバーには、重篤な肝障害を起こす疑いのあるピロリジジンアルカロイドが含有されていますが、MHRAによると、ピロリジジンアルカロイドがほとんど除去されている製品での肝毒性(40例)も報告されているとのことから、その詳細については、現在、情報収集中です。 

 

<バターバー(西洋フキ)>  

【英名】Butterbur【学名】Petasites hybridus【分類】キク科フキ属   

ヨーロッパ、北及び西アジアが原産で、我が国に自生しているフキ(Petasites japonicus)とは、同属別種。 

 

 ということで、今では西洋フキも使用できなくなっています。

 

つづく

花粉症に効く食べ物はないですか?(2)

*1:Dejima K, Ohshima A, Yanai T, Yamamoto R, Takata R, Yoshikawa T. Effects of polysaccharide derived from black currant on relieving clinical symptoms of Japanese cedar pollinosis: a randomized double-blind, placebo-controlled trial. Biosci Biotechnol Biochem. 2007 Dec;71(12):3019-25. Epub 2007 Dec 7. PubMed PMID: 18071252.

*2:日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査表

*3:Schapowal A; Petasites Study Group. Butterbur Ze339 for the treatment of intermittent allergic rhinitis: dose-dependent efficacy in a prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled study. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2004 Dec;130(12):1381-6. PubMed PMID: 15611396.

*4:バターバー(西洋フキ)を含む食品の摂取に関する注意喚起についての対応 |報道発表資料|厚生労働省

*5:「健康食品」の安全性・有効性情報

*6:Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency - GOV.UK

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