少し間をあけてしまいましたが、脂質異常症のつづきです。
前の記事は、ここあたりから読んでいただくとよいかもしれません。
最近の事後解析から
もうひとつ論文を紹介しておきます。高齢者の脂質異常症の主な論文は今のところほかにはなさそうです。
ランダム化比較試験(Han, 2017年) *1
研究の概要
高血圧症患者がプラバスタチン(メバロチン)40mgを服用すると、通常ケアに比べて総死亡が少ないかを検討したランダム化比較試験(ALLHAT-LLT)のうち、65歳以上で心血管疾患の既往がない対象者に限定した事後解析。
主な結果
ALLHAT-LLT参加者(10,355人)のなかで、65歳以上(5,809人)かつ心血管疾患の既往がない 2,867人が対象。プラバスタチン群 1,467人、通常ケア群 1,400人。
6年の追跡期間での総死亡はプラバスタチン群 19.4%、通常ケア群 16.2%、ハザード比 1.18(95%信頼区間 0.97, 1.42)とプラバスタチン群で多い傾向がみられた。
65-74歳では 1.08(95%信頼区間 0.85, 1.37)、75歳以上では 1.34(95%信頼区間 0.98, 1.84)と、75歳以上で総死亡のハザード比が高い傾向がみられた。
やはり治療群で総死亡が多かった
やはり、治療したほうが悪い結果となっています。
これはランダム化比較試験の事後解析となっており、本来の研究仮説を検証する目的で行われた研究結果ではありません。
しかしながら、心血管疾患のない75歳以上の高血圧患者について、少なくとも一次予防効果は確認できませんでした。
これまでの研究結果とは矛盾しない、支持する結果となっております。
やはり、リスクの低い高齢者に対しては、コレステロールを下げる必要はなさそうです。
*1:Han BH, Sutin D, Williamson JD, Davis BR, Piller LB, Pervin H, Pressel SL, Blaum CS; ALLHAT Collaborative Research Group. Effect of Statin Treatment vs Usual Care on Primary Cardiovascular Prevention Among Older Adults: The ALLHAT-LLT Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2017 Jul 1;177(7):955-965. doi: 10.1001/jamainternmed.2017.1442. PubMed PMID: 28531241; PubMed Central PMCID: PMC5543335.