質問
ALSと診断されましたが、ラジカットは効果ありますか?
かつて脳梗塞で使われた薬
エダラボン(商品名 ラジカット)はフリーラジカルスカベンジャーに分類される脳保護薬ですが、脳梗塞の急性期治療にかつてはよく使われていた薬です。効能又は効果は、「脳梗塞急性期に伴う神経症候,日常生活動作障害,機能障害の改善」となっていました。 後発品も販売され、売上は下り坂だったことでしょう。
そんな中、2015年6月に効能又は効果が新たに追加されました。「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制」です。
その効果はいかに? 調べてみました。
論文は1本のみ
PubMed Clinical Queriesで検索したところ、なんと、論文はひとつのみ。添付文書にも引用されていました。こちらをどうぞ。
ランダム化比較試験(Abe, 2014年) *1
研究の概要
ALSと診断された20-75歳の患者が、エダラボン 60mgを60分以上かけて点滴静注 *2 を受けると、プラセボに比べて、24週間の治療後のALS機能スケール *3 スコアは高いか、を検討したランダム化比較試験。
主な結果
206人の対象者のうち、102人がエダラボン群、104人がプラセボ群に割付。24週の治療後のALSFRS-Rスコア変化量は、エダラボン群 -5.70、プラセボ群 -6.35、平均差は 0.65とエダラボン群でややスコアが高い傾向がみられたが、有意差はなかった。
0.65点差
24週間治療して、60点満点の機能スコアで0.65点の差がみられた、という結果でした。この差は有意ととれるのかどうか。4段階スコアで1段階分の差が出てないということですから、ほとんど同じ、と言えるのではないでしょうか。
やはりALSは簡単ではありません。さらなる研究に期待したいと思います。
*1:Abe K, Itoyama Y, Sobue G, Tsuji S, Aoki M, Doyu M, Hamada C, Kondo K, Yoneoka T, Akimoto M, Yoshino H; Edaravone ALS Study Group. Confirmatory double-blind, parallel-group, placebo-controlled study of efficacy and safety of edaravone (MCI-186) in amyotrophic lateral sclerosis patients. Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener. 2014 Dec;15(7-8):610-7. doi: 10.3109/21678421.2014.959024. Epub 2014 Oct 6. PubMed PMID: 25286015; PubMed Central PMCID: PMC4266079.
*2:第1クールは14日間連日投与し14日間休薬。第2-6クールは14日間のうち10日間投与し14日間休薬。
*3:ALS functional rating scale (ALSFRS-R)。12項目について0から4の5段階で評価。スコアが低いほうが重症。