地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

ベルベリンの意外な効果

 

 当ブログ人気記事の追跡調査を行いました。

 

 

 止痢剤「フェロベリン」の下痢に対する効果を検討した記事でした。この「フェロベリン」に含まれる主成分のベルベリン *1 についての、意外なメタ分析がありましたので、取り上げたいと思います。

メタ分析(Lan, 2015年) *2

P▶ 2型糖尿病患者、脂質異常症患者、高血圧症患者に
E▶ ベルベリン単独投与または薬物療法、生活習慣改善などに加えてベルベリンを投与すると
C▶ ベルベリン投与なしまたは薬物療法、生活習慣改善のみに比べて
O▶ HbA1c、総コレステロール、血圧などの値が低下するか
T▶ 治療、メタ分析

《結果》※※
27研究(英語4研究、中国語23研究)、対象患者数2569人が該当。投与期間は1~3か月のものが多い。

ベルベリン単独またはベルベリン+生活習慣改善 vs ベルベリンなしまたは生活習慣改善のみ
両群の差
 HbA1c(5研究) -1.91%(95%信頼区間 -2.45~-1.36) 
 総コレステロール(6研究) -0.66mmol/L(95%信頼区間 -1.02~0.31)
 収縮期血圧(4研究) -5.97mmHg(95%信頼区間 -9.19~-2.74)
 拡張期血圧(4研究) -2.69mmHg(95%信頼区間 -5.06~-0.31)

他の薬物療法と比較したものでもベルベリン群で改善がみられた。

 

ベルベリンで糖尿病が改善する? 

 この研究は代用のアウトカム *3 の研究であり、注意が必要です。検査測定値が改善することが示されていますが、長期的にこれがどのように影響するかについては、この結果から判断することはできません。

 しかしながら、糖尿病、脂質異常症、高血圧症については、検査測定値の改善はみられるようです。

 ここで使用されているベルベリンは1日0.6g~2.7gとなっています。「フェロベリン」1錠には日局ベルベリン塩化物水和物 37.5mgが配合されています。これは1日6錠で2.25gとなります。

 といっても、「フェロベリン」は下痢症にしか保険適用がなく使用できません。

 今後は真のアウトカムの検証を期待したいところです。

 

*1:Berberis aristata(セイヨウメギ)などの根や樹皮からとれる天然由来の有機化合物。

*2:Lan J, Zhao Y, Dong F, Yan Z, Zheng W, Fan J, Sun G. Meta-analysis of the effect and safety of berberine in the treatment of type 2 diabetes mellitus, hyperlipemia and hypertension. J Ethnopharmacol. 2015 Feb 23;161:69-81. doi: 10.1016/j.jep.2014.09.049. Epub 2014 Dec 10. PubMed PMID: 25498346.

*3:真のアウトカムで評価しているか - エビデンスの森

 Copyright © 2003, 2007-2021 地域医療ジャーナル